魔界へ

 

 

 

冒険の書:P55

 

 ビアンカと再会した僕たちは、一旦城に戻った。部屋で家族だけになると、子供達はたまらずビアンカに抱きつき泣きじゃくり始めた。お母さん、と叫びながら……。

 ビアンカに再会した時のことをよく考えた。

 そして、会えたらきっと嬉しくて、笑って小躍りして……そんなふうになるんだろうと、なんとなく思っていた。

 でも、実際にこぼれたのは、笑みよりもむしろ、涙。

 子供達も……僕も。

 それは、会えて嬉しかったから。

 そして……会えなくて淋しかったから。

 それが全て、涙となって流れ出す。

 泣きじゃくる子供達を見ていると、これまでどれだけ淋しい思いをさせてしまったのか……親として、忸怩たる思いだ。

 でも…でも、もう二度と、そんな思いをさせはしない……!

 ビアンカに抱きつく子供達を見て、そんな決意を新たにしていると、そこに扉を叩く音がして、一人の兵士が入ってきた。なんでも、オジロンが呼んでいるからすぐにきてほしい、と。

 ……やれやれ。久々の再会だっていうのに、なんて気の利かない……やっとそろった家族、この喜びを堪能したいのに。それに、泣きじゃくる子供達の側にいてもやりたい。でも、一応僕はこの国の王。オジロンには随分世話になってもいることだし、行かないわけにはいかない……。幸い、ビアンカが子供達のことは任せてほしいと言ってくれたので、僕はオジロンの所へ。まあ、いいか。これからは家族四人、ずっと一緒にいられるんだし。

 玉座の間では、オジロンがなんだか落ち着かない様子でそわそわと歩き回っていた。そして、僕の姿を認めると、不安げに駆け寄ってきた。せっかく家族四人そろったというのに、あまり嬉しそうではない。喜びよりも不安が先に立っているという感じだ。オジロンは、挨拶もそこそこに、慌ただしく切り出した。まさか、魔界へ行くつもりではないでしょうな、と。もちろんそのつもりだったのでそう答えると、驚いたことに、今度は血相を変えて噛みついてきた。王である僕がそんなところへ行くのはもってのほかだというのだ。

 ……あの、お人好しのオジロンが、あんな顔をするなんて。おじさんが声を荒げるところなんて、初めて見た……。

 オジロンの言うこともわかる。確かに僕はこの国の王……でも、オジロンには悪いけど、彼の要求を呑むわけにはいかない。母さんに会いたい、というのもあるが……何よりこれは、父さんと約束したことなのだ。それを破るわけにはいかない。

 

 僕たちは、その翌日、準備を整え、こっそりと城を出た。

 

 どうすれば魔界に行けるのかは、まだわからない。あちこちの町をまわって情報収集するしかない。せっかくだから、ルーラではなく、マスタードラゴンの背に乗って、世界を回ることにした。ビアンカを乗せてあげたかったし、その方が僕も楽しいし。

 そうして各地を巡っていたら……なんと、見たことのない洞窟を発見した。ラインハットの西、アルカパの北あたり。ずっと昔、ビアンカとお化け退治に行くときは、その北に連なる山脈に沿って歩いたりもした。そして、この山の向こうには何があるんだろうとあれこれ考えを巡らせた。

 ……そんなこと、すっかり忘れていた。

 岩山に囲まれ、人を寄せ付けない区域。

 僕がまだ行っていない場所が、まだあったのだ。

 そこは、鬱蒼と生い茂る森。そして、そこに忘れられた洞窟がぽっかりと口を開けていた。…一体そこに何があるのか。好奇心も手伝って、僕たちはそこへ入ってみることにした。

 この時、僕はレベル51。

 だから大丈夫だろうと思い入ったのだが……なんと、レベルの心配すら不要!どういうわけか、まるでモンスターの気配がしないのだ。あちこち調べた結果、模様のある床が石で封印されていて、それでモンスターが出ないようになっているらしいことがわかった。

 1階は、最初から封印されていたからよかったが、地下に下りてからは、自分で床石の上に石をのせなければならないので少々面倒である。幸い、ここのモンスター達はそんなに強くないので、そちらの心配はいらない。エビルマスターのエビルマが、一回の戦闘でいきなり仲間になってくれたのも嬉しい。まあ、でも油断はせずに十分注意しつつ最下層を歩き回り、全ての魔物を封印。別に難しいことではなかったが、とにかく面倒臭かった。

 ……するとどうだろう。それまで何もなかった台座の上に、突然立派なマントが出現。

 ―王者のマント。

 まさしくその名がぴったり当てはまる、神々しいまでの威厳に満ちたマント。……けど、なぜだろう。僕にはなぜか、そのマントが、ひどく自分に近しいもののように思えた。思わず吸い寄せられ、身につけてみると、見た目に反してそれはひどく軽く、ふわりと全身を覆った。それと同時に、体中が熱くなり、勇気が湧いてくるような気がした。まるで、かつてこのマントを着ていた王の魂が乗り移ったかのような……このマントのためだけでも、この洞窟に来てよかったと思う。

 その後も世界各地をまわって色々調べた所によると、海の神殿の、3つの像に3つのリングを捧げれば魔界への扉が開く…との情報を入手した。

 ……なるほど。大体の見当はついた。

 早速出発してもいいのだが……景気づけの意味も含め、魔界突入前に、カジノへ行くことにした。

 175654枚だったのが、まず、ポーカーで約1000枚入手。ポーカーは比較的少ないリスクで稼げるのが魅力だ。度胸がいるが……。ここで稼いだのに気をよくし、今度はスロット。すぐに鐘が四つ揃い、8000枚入手!その後もちょこちょこと当たり…また鐘が四つ揃って損失分をほぼ持ち直したところにスイカが四つ揃って、一万枚入手!一気に191740枚になった。

 

 

冒険の書:P56

 

 3つの像にリングを捧げ、ついに魔界へ突入!

 暗い空間の裂け目に飛び込むと、抜け出た先は一見普通のほこら。

 しかし、よく見ると空はなんだか不気味な色をしているし、なんだか荒涼とした雰囲気が漂っている。

 ここが……魔界か……。

 背筋に悪寒が走る。

 ここに…母さんが…ミルドラースが……。

 ……行かなくては。

 意を決して足を踏み出した時、どこからか声が聞こえてきた。

 この声は……!!

 大神殿で聞いた声。

 母さんの声だ……!!

 母さんは、僕たちがここに来たことを認め、励ましてくれ、そして贈り物をくれた。

 空から降ってきた青い石……賢者の石。

 これはきっと、大魔王との戦いで、役に立つ……!

 ありがとう、母さん……きっとこれで、大魔王を倒して見せるよ…!!

 僕は、秘かにそう賢者の石に誓った。

 マーサの声を聞いたことで、僕はもちろんだが、他のみんなも元気が出てきたようだった。正直、魔界の空気に飲まれそうになっていた所もあったので……本当に、感謝しなければ。

 そうして、僕たちはほこらから一歩踏み出す。

 ……空が動いているのが不気味さを醸し出す。しかし、見ようによっては美しいともとれるから不思議だ。

 これが、魔界なのか……。

 そこにあるのは、圧倒的な猛々しさ。

 混沌……。

 気をしっかり持っていないと、この空気に取り込まれてしまいそうになる。

 一歩一歩足元を確かめて、歩く。

 途中から迷路のようになり、ややわかりにくかったが、やがてほどなく町に着いた、こんなところに町があったとは驚きだ。この町―ジャハンナにつくまでに、皆面白いようにレベルが上がっていった。Gもたまるのが早い。やはり、敵が強いだけのことはある。

 しばらくこのあたりで修行し、装備を整える事にする。

 基本パーティーは僕、ピエール、ピピン、レティ(娘)。

 ピエールは、グレイトドラゴンの焔などに強いので、守備面でも非常に心強い。一方のピピンは、ドラゴンキラーで2倍ダメージを与えたり、デーモンスピアで急所を直撃したりと攻撃面ではいいのだが、炎に対する有効防具を装備していないため、ドラゴン相手だとダメージが大きいという難点がある。これが人間の限界か……。

 同じ人間でも、僕のように装備で補えればいいのだが。

 僕たち家族には、伝説級の防具がある。また、ここは、炎や吹雪を操るモンスターが多いとあって、海の神殿に3つのリングを回収しに行ってから修行に入った。それもあって、僕は、グレイトドラゴンの炎を受けても、ピエールと同程度しかダメージを受けない。また、以前ボブルの塔で会ったゴールデンゴーレムには、バギクロスで苦しめられたものだが、今では無効か低ダメージ。これも全ては王者のマントのおかげ、防具のありがたさをしみじみ感じる今日このごろである。

 戦闘では、僕は状況に応じてドラゴンの杖と炎のブーメランを頻繁に持ち替えねばならないので結構忙しい。パーティーの方も、結構入れ替えの頻度は高い。キラーマシンにはイオナズンがきかないので、彼らが主体の時は、レティをキラ(息子)と交代させるし、バザックスにはザキ系がよく効くので、その出現時にはビアンカと交代……と、こちらもまた結構忙しい。

 修行で会いたいのは、仲間モンスターを別にすれば、やはりなんといってもゴールデンゴーレムとはぐれメタル!

 しかし、会いたい対象ほどなかなか会えないもの。

 これまででも、結構長く修行したというのに、魔界に来て、はぐれメタルにはまだ一度しかお目にかかっていない。

 出会ったのは、ジャハンナのある島、エビルマウンテンにつながる橋の前の森あたり……なのだが……ひょっとして、エビルマウンテンのまわりでもっと修行しないと会えないのだろうか、やっぱり……。しかし、どうも気が進まない。

 それはもちろん、あの地域には、仲間にしたいグレイトドラゴンやお金になるゴールデンゴーレムが出ないから、というのもあるが……最大の原因は、ガメゴンロードが怖いからである。

 ガメゴンロードは、HP自体はそれほど高くない。だから、イオナズンと僕の炎のブーメランで大体一掃できる……はずなのだが……二回に一回ぐらいはマホカンタがかかっているようで、そうすると、当然レティはイオナズンを使ってくれない。…一体でも、そうなのである。かといって、直接攻撃で倒そうとすると時間がかかり、稲妻の一斉砲火をあびてしまう。耐性のあるピエールは問題ないのだが、そうでない人間にはこれが大問題。あっという間にHPがすり減って、全滅の危機に……。ピエールがいなかったら危ないところだった。まあ、これに関しては、キラが最初に天空の剣で凍てつく波動をやれば問題ないのだが…それでも、ガメゴンロードに先制された時のことを考えるとどうにも……。

 まあ、はぐれメタルはもっとレベルが上がるか、モンスター中心のパーティーに編成しなおしてから狙ってもいいのだが……ゴールデンゴーレムの出現率の低さはどうだろう。30分戦って一体出るかどうか、というところで、他のモンスターに比べると、どうにも低い。ジャハンナの物価があまりにも高いので、Gはいくらあっても足りない状況だというのに……。

 ジャハンナは、たいそう綺麗な町なのだが、魔界という過酷な環境故か、物価は常識はずれ。宿代は400Gと法外だし、武器防具もいいものが揃ってはいるのだが、それだけに高い。ゴールドカードがあってよかった……と、この時ほど思ったことはない。やはり、水鏡の盾33000G→26400G、エルフのお守り3000G→2400Gというのはすごく大きい。

 まあ、それでも高いことには変わりないのだが……ゴールドカードのおかげもあって、全員にエルフのお守りを買い与え、一通りの装備を揃えることができた。Gをためていたらレベルはあっという間に上がり、僕はレベル58にまでなった。

 意外に早く準備が整った。そう感じるのは、すごろく場で息抜きができたせいかもしれないが。

 もとは牢獄だったというすごろく場で、見た目は不気味だが、中身は普通と変わらない。レベルが低いほうがやり安いので、この時だけキングスを呼びだして一緒に遊んだ。一見広いように見えるが、その実狭く、目に見えるめぼしい宝は大体取り尽くし、さらに、「?」で宝物庫に行って宝探しをすることもできた。さいころをふったら、出たのはなんと61秒!おかげで、そこ(迷路タイプ)の宝を全部取ることができた。

 次にはちょっと気分を変えてコドランで挑戦してみたが、これはちょっと失敗。どうもレベルが高かったようで、敵も強くなっており、いきなりマヒ攻撃を受けて全滅!まあ、それで悔しくてヤケになって繰り返していたところ、見事ゴールできたので、結果的にはよかったともいえるのだが……。

 何はともあれ、こうして、やるべきことは全てやった。

 思い残すことは何もない。

 いよいよ、エビルマウンテンに突入である。

 

 

 

2004.11.6

 

 

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