さらば、遠き日

 

 

冒険の書:P49

 妖精界から再び人間界に戻った僕たちは、妖精の城を探すことに。幸い、これに関しては心当たりがあった。天空の塔へ行ったとき、近くに霧に包まれた不思議な湖があったのを覚えていたのだ。

 それで、さっそくそこへ向かう。小舟に乗って……以前来たときは、進めども進めども霧の中で、堂々巡りさせられているような気がしたが、今回は妖精のホルンがある。小舟で少し行った先にあるハスの所で試しにホルンを吹いてみたら……なんと、劇的な変化があった。突然霧が晴れ渡り、目の前に美しい城が現れたのだ。それはまさしく妖精の城と呼ぶにふさわしい……しかも、その城が澄んだ湖に鏡のように映って、まるで水の中にも城があるように見える。さすが妖精の城…綺麗だ……。

 しかし、それはそれとして、妖精のホルンはちょっと意外だった。もっときれいな音(春風のフルートみたいな)が出るかと思ったのだが、口をつけて流れたメロディーは、なんだか怪しげなもの。これは僕が楽器を扱えないこととは何の関係もない……と、思う。

 まあ、それはとにかく、僕たちは妖精の城へ。外から見たのと同じぐらい、中も綺麗で幻想的。床はなんだか雲のようにふわふわしているし、ステンドグラス(?)も美しい。その様に見とれながら、妖精の女王を探す。城は単純な造りで、女王様の居場所はすぐにわかった。

 女王は既に事情を大体知っていたようだが……返ってきた答えは、僕たちを絶望の底につき落とすものだった。なんと、今の妖精にはもう、天空城を浮上させられるだけのものを作る力はないというのだ。

 しばらく言葉も出なかったが、よく見てみると、なぜか女王の方は、僕たちほど絶望している様子はなかった。そしてどういうわけかゴールドオーブそっくりの光る球(これには大した力はないらしいが)を作ってくれ、人間なら時の流れを変える力をあるかもしれない……と不思議な言葉を残した。……どういう意味なのだろう?

 妖精の女王はそれ以上何も語ってくれなかったのでわからなかった。しかし……しかし、まだ諦めるには早そうだ。まだ何かあるに違いない。まだ何か………。

 とりあえず、立ち止まって考えていても仕方がないので、城の中を隅々まで見てまわることにした。嬉しいことに、宝物庫では、妖精が大変気前よく宝物を譲ってくれた。残念ながら、いかづちの杖は使える者がいなかったが、プリンセスローブは大いに役に立つ。早速娘のレティに装備させ、守りを大幅強化!!単純な守備力でもすごいし、さらに、炎や吹雪も軽減してくれるのがありがたい。これ以上のものはないだろう。

 そして、ちょっと気分が上向きになったところで二階へ。二階には、部屋が二つあり、それぞれに絵が一枚飾られているだけ。特別な絵なのだろうか。東の部屋には、伝説の勇者の絵…不思議とキラそっくり。キラは、今日初めてここに来たはずなのに。さすが妖精の城、不思議なことには事欠かない。そして、西の部屋には……これ……この絵は……どこかで見た……?

 妖精が言う。これは、心を映し出す絵だと。絵の前に立って心を開きなさいと……。だがもう、その時僕は既に、絵に近付いていた。無性にこの絵に惹かれて。とにかく、少しでも近付きたかった。

 歩く。近付いていく。少しずつ。少しずつ。

 立ち止まる。それでも近付いていく。だんだん、だんだん……。

 絵に吸い込まれるような感じ。何か…すごいスピードで流されていくような。

 僕は思わず目を閉じた。

 そして、目を開くと……。

 

 眩しい光。楽しげな話し声。

 ……どこかで見た風景。

 妖精の城ではない。どういうわけか、いつの間にか、僕は柔らかな陽射しに包まれて村の中にいた。

 知らない村ではない。この村…この村は……でも、まさか……。

 僕の知っているこの村は、既に廃墟のようになってしまっているはずだ……!!

 でも、この光景は、確かに……サンタローズだ……。

 僕は、村中を歩き回った。隅々まで。どれもこれもが、あの頃のまま……。よそ者扱いされるのが少し悲しかったけれど、二度と目にすることはかなわないだろうと思ったこの温かさの中にいることだけで、信じられない幸福だった。……夢の中にいるみたいだ。たぶん夢なんだろう。でも……。

 しばらくふらふらと村の中をさまよっていたが、パパスという単語を耳にするにあたって、急に我に返った。

 父さんに、会えるかもしれない……!!

 僕は、急いでかつての家に向かった。

 家はそこにあった。どこも壊れてはいない。間違いなく、僕の家……。

 中に入るとサンチョがいた。今よりちょっと若い……かな。やっぱりあの頃に比べると、サンチョもだいぶ老けたんだ。

 サンチョはしきりに何かを探している様子だったが、やがて僕に気付き、何食わぬ顔で「だんなさまなら上にいますよ」と言った。

 そうか、サンチョは僕だと知らないんだ……。

 ずきりと胸のどこかが痛んだ。何か妙な気分だが、今はとにかく父さんに会いたい。

 本当にいるのだろうか、この上に……。

 僕は恐る恐る階段をのぼった。そしたら……そこに、いた。

 父さんだ。

 間違いない。

 父さんが、ここにいる。

 ここにいて、座って、本を読んでいる。

 父さん……!!

 いや、落ち着け、父さんは僕のことを知らないはず。でも、でも……!!

 案の定、父さんは僕を息子だと信じてくれなかった。……仕方のないことなのかもしれない。時を越えてきたなどと、誰が信じることができようか。

 でも……信じてほしかった。

 父さんは、調べ者に忙しそうで、あまり僕に取り合ってはくれなかった。そうだ、でも……僕を息子と信じてくれなくても、これだけは言っておかねば!僕は父さんに、ラインハットへ行ってはならないと話した。これで父さんが考えを変えてくれたら、もしかしたら……。

 しかし、これにも父さんは全く取り合ってくれなかった。「予言など信じぬことにしているのだ」って……父さんそんな……僕を押し売りみたいな目で見なくても……。

 でも、そうなんだ……今の僕は、ただのよそ者。本来ここにいるべき人間ではない……。近くにいるように見えても、そこには遠い……遠い時間の隔たりがある。

 それを思い知らされた。ひどく、悲しかった。

 家を後にし歩いていると、教会の前で、僕は僕に会った。

 そう……あの頃の、6歳の僕。隣にいるプックルは、子猫みたいだ。

 僕はまだ、光の教団も何も知らない……楽しそうにプックルと遊んでいる。

 思わず声をかけると、元気のいい返事が返ってきた。なんだかキラに似ている。ああ、そうか……あの頃の僕は、キラよりまだ二つも年下なんだ。

 小さい僕の手の中に、キラリと光るゴールドオーブが見えた。

 そして今、僕の手の中には光るオーブが。

 それに気付いた時、僕は僕に、ゴールドオーブを見せてくれないかと頼んでいた。

 ……僕は、思い出した。その時僕が、何と言ったのかを。

 ゴールドオーブを見せてもらった僕は、その一瞬でゴールドオーブと光るオーブをすりかえた。

 僕は僕に、光るオーブを手渡した。

 そして僕は……ゴールドオーブを手に入れた。

 ……これでいい。このためだったんだ、僕がここへきたのは……でも。ああ、でも……!!

 本当に変えたいのは、オーブじゃない。変えることができるならば、この子の未来を……この後すぐ先に控えている未来を、変えたかった。他の何をおいても。

 しかし、それは……できないことなんだ。きっと……。

 ……帰ろう。僕は、ここにいてはいけない。

 僕は、温かな空気を振り切って、村の外に出た。

 辺りの景色が歪み、流れて……気がつくと、僕は再び絵の前に立っていた。

 そして、手の中には、ゴールドオーブがある。

 

 

冒険の書:P50

 その経緯はどうあれゴールドオーブを手にすることのできた僕たちは、取り急ぎ天空城に向かった。プサンにゴールドオーブを渡すと、彼は待ちかねたようにそれを台座に設置した。すると……!

 天空城は浮遊しはじめ、湖の上空へ。たまっていた水が下へ落ちていく音が聞こえた。だが、思ったほど高く上がらなかったな……。もっともっと、地上が見えないぐらい高く上がるだろうと思ったのに。飛んだら天空の塔スレスレ…といった高さではないだろうか。セントベレス山より低い感じなのだが……。

 それでもとにかく一応の浮遊には成功したので、プサンは喜んでくれ、天空城は自由に使ってもいいと言ってくれた。自由に使えって……空中移動要塞として!?ありがたい申し出ではあるが、驚きだな……天空城がそんなふうに使えるだなんて。ここに来るまでは、何かすごく神聖なものだと思っていたのだが、たちまち便利な乗り物に……。

 しかし、せっかく天空城を乗り物として使えるようになったものの、これからどこへ行ったものか……光の教団の神殿に殴り込みをかけにいきたいのだが、この天空城でもセントベレス山にはとどかない。どうしたものか……。

 困ったときはまず情報収集、というわけで、天空城の中を再び見て回る。天空人があちこちにいて、世界樹のしずくや世界樹の苗木をくれた。しかし、本当に生きていたのか。驚いたな……。しかも、どこも濡れている様子がない。図書館の山のような本も、水浸しになっていたはずなのにどこも傷んでいなかったから、そういう魔法でもかけてあったのだろうか。

 そして、城の中を見回っているうち、暖炉の奥におじいさんが住んでいるのを見つけた。年をとった天空人というのも珍しい。彼は、マスタードラゴンが、テルパドール西の大陸にあるボブルの塔にその能力を封印したと教えてくれ、フックつきロープをくれた。

 ロープは、とりあえずここでは使い道がなさそうだったが、この情報は大いに助かる。早速そこへ向かった。ああ……そうか、船で行こうにも、まわりを全部岩山に囲まれて入れなかったところだ。中は、森や山に覆われていたものの、幸い天空城が着地できそうな砂地のスベースがあったので、そこに着地。ひとまず、あたりにどんなモンスターがいるか、見回ってみることにする。

 さぞ強力なモンスターが出てくるだろうと思いきや…なんと、出てくるのは子供の頃に戦ったような弱いモンスターばかり。なんだか拍子抜けしたが、……こんなところでは、外敵は来なくて平和なんだろうなあ、きっと。塔の中でもこんな調子ならありがたいのだが、さすがにそうはいかないだろうな。ここをぐるぐる見回っている時に大ねずみのマウスが仲間になってくれたのが嬉しかった。

 で、とりあえず天空城も浮上させ、次の目的地も決まったことだし……レベルももう47。すぐにでも塔に向かっても支障はないと思ったけど、サンタローズに行ったことで、どうもまだもやもやが消えないでいる。そこで、景気づけの意味も込めて、すごろく場でまた遊んでいくことにした。頼んだぞ、キングス!!

 今回キングスは、見事期待に応えた。まず、すごろくダンジョンで炎のブーメランを入手してくれた。そして、次の時には、HPと身の守りが上がった上、ツボから小さなメダル、タンスからすごろく券をも入手!そして、初めて宝物庫へも行った。迷路式ので、250Gとエルフののみぐすりを入手。ここで、キングスだと動きづらくてちょっと不利、という事実が発覚してしまったが……宝物庫から戻ってからはすんなり進み、そのままなんなくクリア。奇跡の剣と幸せの帽子を入手した。でかしたぞ、キングス!!

 しかし、駄目なときは全然駄目なのに、良いときは驚くほどすんなりと行くものだなあ、すごろくって。

 とりあえず、僕は炎のブーメランと奇跡の剣を状況に応じて使い分けることにし、ドラゴンキラーはピピンに渡す。これで、戦闘はかなり楽になった。僕は、炎のブーメラン装備でも、キラに匹敵する攻撃力が得られるようになったのだ。まず、僕の全体攻撃とレティのイオナズンで大半の敵を一掃。わずかに残ったのを、後の二人がとどめを刺す、というパターンで大抵は楽勝。ボブルの塔に行く前に、強力な武器を手に入れることができてよかった。これも、神の加護……?

 

 

2004.9.4

 

 

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