妖精界

 

 

冒険の書:P47

 天空城の入口に旅の扉があり、幸いそれがトロッコ洞窟の入口につながっていたので、僕たちはあの難儀なダンジョンを歩いて戻らずにすんだ。

 しかし、妖精の村につながる森、か……。湖と違って探しにくいなあ。魔法のじゅうたんも使えないし。

 そう思っていると、レティが、シスターならそういうことに詳しいんじゃないかと言った。おお、さすがわが娘!実のところ、シスターと妖精にどんな関係があるのかはよくわからなかったが、ラーの鏡の例もある。シスターって、結構物知りだったりするんだよなあ。

 そんなわけで、僕たちは、早速海辺の修道院に行ってみた。すると、見事大当たり!!シスターの一人が、その森はサラボナの東にあると教えてくれた。

 本当に、この修道院にはお世話になりっぱなしだなあ……。あれからもう何年もたって、シスター達が僕のことをすっかり忘れてしまったのは少し淋しいけれど、それでもここは、温かい場所だ。

 僕たちは修道院に一泊し、すぐにそれらしき場所へと向かった。例の地図の空白部分を参考にすれば、意外に簡単だった。

 一見普通の森だが……これのどこかに、特殊な森につながる入口があるのだろう。どちらにせよ、森で魔法の絨毯は使えないから、歩くしかない。しかし、それがいい方向に作用することもある。イズライールが、妖精の剣を落としたのだ。ラッキー!とりあえず、レティに装備させる。幸せの帽子を入手した今、メタル系以外の相手への攻撃は殆どイオナズンかマヒャドの連発だから、本当は必要ないのだが、それでも強さを見たときに数値が高いと嬉しいからなあ。

 やがて、奥の方に進んでいくと、樹々がぼんやりと光っている一画を見つけた。その場所へ入り込むと、明らかに他とは空気が違うのを感じた。空気がたいそう澄み切っており、周りの木々も、なんというか……まるで意思を持っているかのように、始終ざわめいている。そして、蛍のような淡い光の玉が、ふわりふわりとそこら中を漂っており、なんとも幻想的な光景だ。ここが妖精の世界に通じているといるのもうなずける。

 森の入口に小屋があり、そこに住んでいる人が、色々と教えてくれた。ここは迷いの森で、普通の人間にはこの森を抜けることはできないのだとか、子供の頃は妖精の姿が見えたのに大人になってからは見えなくなったとか……。

 しかし、ここが妖精の村に通じる森、というのはどうやら確かなようだ。それがわかっただけでも助かった。この上、泊めてもらえればもっとありがたかったのだが……さすがに、そこまでうまくはいかないか。

 しかし、迷いの森か……行けども行けども堂々巡りの無限回廊になてるんじゃないだろうな……?などという心配もしたものの、それは杞憂で、普通に進んでいくとこができた。もっとも、ルーラやリレミトは使えないし、似たような景色が続いてどんどん奥深くに入り込んでいくのが実感できるので、なんだか不安にさせられるところではあるのだが。このままここから出られないんじゃなかろうか、とか……。

 しかしここも、トロッコ洞窟の複雑さに比べれば、大したことはない。意外にあっさりと、何かありそうな神殿らしき建物を見つけた。しかし、それは池の向こうで渡る方法はない。他に何かないかと、さらにあちこちをさまよう。

 こんな幻想的なところでも、やはり魔物は出るらしく、次々と襲ってくるのが少々鬱陶しい。だが、場所にふさわしく踊る宝石が次々出現するのは歓迎だし、アンクルホーンのアンクルが仲間になってくれたのも嬉しい。……が、オーガヘッドはなんとかならないものか。HPは低いので、レティのイオナズンで即死させることができるのだが、素早さが高く、それより先に、作戦を「バッチリがんばれ」に変更してしまうのだ。そうすると、何を思ったのか、レティはイオナズンではなく、最弱のイオを使ってしまう。なまじ一掃が可能なだけに、こういう時の腹立たしさは倍増である。ああ、いけないいけない……父親なんだから、もっと大きく構えないと……!はあ…しくしくしく……賢さは高いのになあ。

 そうやっていろんなことを考えながら歩くうち、行く手にたき火が見えた。しかし、側には誰もいない……そう思ったのだが、キラとレティは、そこに人がいるという。そして、早くそこに行ってみようとせかすのだ。

 ―子供の時は妖精の姿を見ることができても、大人になると見えなくなるという。

 まさか……!?

 おそるおそる近づいていくと……確かに、何かとぶつかる感触。聞こえる声。相変わらず、姿は見えないままだが……それでも、そこに何かがいるのがはっきりとわかる。

 キラは、その何かにむかって話しかけた。妖精の国に行く方法を聞いているのだ。その何かー姿の見えない妖精は、その頼みを快く承諾し、そこまで案内してくれるという。僕には相変わらずその姿は全く見えないのだが……迷いのない足取りで駆ける子供達をたよりに、その後を追う。

 やがてほどなく、先程の神殿の前に出た。やはり、あそこに何かあるのか。しかし、目の前の池をどうやって渡るのだろう……そう考えていると、ハスが次々と浮かび上がり、あっという間に神殿へと続く道ができた。うわぁ……!!

 なんだかワクワクしてきた。初めて妖精の国に行った時みたいに……あの頃とは全然違うのに、それでもこういう光景を目の当たりにすると、ドキドキしてくる。

 神殿の中には、旅の扉があった。おそらくこれが……!!

 我先にと飛び込む。

 目を開けると、そこはもう別世界だった。

 

 

冒険の書:P48

 なんだか急に明るくなって、思わず目を眇める。

 陽射しがやけに温かい。

 何か、花のいい香りが漂ってくる。これは…桜?昔、ベラにもらった桜の枝を手にしたときの香りと同じ……。

 どこもかしこも温かくて、幸せな気分に胸がつまる。

 これが、妖精界の春……!!ベラが自慢するはずだ。本当に、なんて綺麗なんだろう!

 海だけは相変わらず白いままだったけれど、それも寒いという感じはしなくて、幻想的という感じがする。

 桜の香りの強い方に歩いていくと、やがて大きな大きな桜の木が見えた。

 ……妖精の村だ。

 妖精の村は、見違えるように美しくなっていた。サンチョの言うように、おとぎ話の絵本の中に入り込んでしまったような……そんな、まさしく「絵に描いたような」美しさ。いままで色々なところにいったけれど、これほど綺麗で安らげる場所を、僕は知らない。冬の妖精の村もそれなりに綺麗だとは思ったけれど、春の妖精界はまた格別だ。

 これまでに、ちょっと色々と重苦しいことが続いていたが、ここにいると、そうしたことの全てが和らいでいくのを感じる。世界全体が僕を温かく包み込んでくれ、癒やされるのだ……。

 重大な用件で来たはずなのだが、ともすればそれを忘れそうになり、足取りも軽くなる。いけないいけない…。まず、ポワンさまに会わないと。ベラは元気にしているだろうか。

 くつろぐのは後にして、まず桜の木のてっぺんに向かう。

 そこには、ベラとポワンさまが、以前会ったときと少しも変わらぬ姿で微笑んでいた。

 ポワンさまもベラも、僕のことを覚えてくれていて、再会をとても喜んでくれた。まだちゃんと覚えていてくれたんだ……それに妖精と違って人間の僕は、あのころとは全く姿も変わってしまっているのに、すぐに僕だと気付いてくれるなんて……。僕には、それがとても嬉しかった。

 ポワンさまに事情を話すと、妖精の女王が力になってくれるだろうと言って、妖精のホルンをくれた。……え?ポワンさまが女王さまじゃないのか……?

 妖精界の仕組みがどうなっているのかはよくわからないが、とにかくそういうことなら仕方がない。僕たちは、その女王の居る妖精の城に行くとになった。妖精の城は普通の人間には見えないが、山々に囲まれた深き森―その湖の真ん中でこのホルンを吹くと、見つけることができるらしい。

 ああ……それにしても、天空城の沈んだ湖とか迷いの森とか妖精の城とか……この広い世界の中、探しにくいものばっかり探すはめになるなあ、まったく……。やはり天空城浮上は、そう簡単にはいかないらしい。

 それにしても、こんな綺麗な所にいると、人間界に帰りたくなくなるな。面倒なことが待ち受けてると思うと、なおさら。もちろんそんなわけにはいかないが……もうしばらくゆっくりするぐらいならいいだろう。この妖精の村以外の場所がどうなったかも見てみたいし。

 そこで、僕たちは、大幅に品揃えが強力になった防具屋で、一番装備の貧弱だったピピンに炎の鎧、レティとキングスに水の羽衣を買って、まずあのドワーフの洞窟に行ってみることにした。それにしても、あの防具屋……いきなり品揃えがあれだけ強力になってるなんて、前は相手が子供だから、売る品を選んでいたのだろうか?まあ、どうせ買えなかっただろうからいいけど……。

 妖精界の魔物は以前と全く変わっておらず、微笑ましい気持ちになった。魔法使い、サボテンボール、コロ一族……ガップリンも出てきて、再会一度目の戦闘で仲間になってくれた。ステータスを見ると、HPがいきなり100あったので驚いてしまった。言うまでもなく、本来ガップリンのHPはそれの半分以下。なぜか仲間になったとたんに弱くなってしまう、というモンスターは結構いるが、こんなふうに強くなるというのは珍しい。それでも、今のパーティーに加えるにはまるで物足りないので、残念ながら預かり所に行ってもらうことになったのだが。

 懐かしさを味わっていると、あっという間に洞窟についた。前は結構遠かったような気がしたのだが……こんなに近かっただろうか。

 ドワーフの洞窟では、残念ながら、あのドワーフのおじさんは亡くなっていた。しかし、ザイルとスライムは健在で、ザイルは相変わらずの性格だったが、仲間モンスターとして一員に加えてほしいと言ってきたので、そういうのも面白そうだと思い仲間にした。……が、いざ仲間にしてみるとザイルは弱く、とてもパーティーには加えられない。申し訳ないが、モンスターじいさんのところにいてもらうことにする。地下だし、まわりはモンスターばっかりだけど……まあ、今も洞窟でスライムと暮らしてるからそんなに変わらないのかもしれない。

 他にこの洞窟に特に変わったことはなさそうなので、そこを出て今度は氷の館に行ってみることにした。何やら面白いものに変わったと聞いたのだ。

 そして、行ってみると、なんとそこはすごろく場になっていた。あの頃の面影かまったくない……。僕はびっくりして、しばらく立ちつくしていた。

 でも、スケートができなくなったのは残念だが、すごろくは好きだし、これはむしろ嬉しいことだ。

 そういうわけで、早速やってみることに。レベルが低いため強敵と当たる心配がなく、その上歩く姿が見ていて楽しいキングスに祝福の杖を持たせてチャレンジ!!しかし、戦闘面での心配はないのだが、どうもサイコロの出目が悪い。呪われたように特定の旅の扉に止まり続け、戻されてしまう。そうやって堂々巡りを続けるうちに、あっという間にサイコロの回数は尽きてしまった……やろうと思ってもできないぞ、こんなこと。さすが妖精界、不思議なことが起こるものだ……。

 

 

 

2004.8.15

 

 

次へ

戻る

プレイ日記風小説に戻る

 

 

inserted by FC2 system