母の故郷

 

 

冒険の書:P42

 それなりにレベルも上がったことで、僕たちはいよいよ母の故郷に向かうことにした…のだが。オジロンの言っていた「このあたり」というのが結構わかりにくい。そこで、どうせならば、とまず世界の外周をぐるりと回ってみることにした。

 途中、ジージョの家…僕が石像になっていたあの家を見つけたので立ち寄ってみた。そこは、何も変わっていなかった。何も変わらず……ここだけ、時間が止まっていた。おそらくジージョが帰らなければ、ここの時間は永遠に止まったままだろう。

 ……いたたまれない気持ちになって、僕は早々にそこを立ち去った。生きている人間が、あまり長くいる場所ではないように思えたのだ。…なんとかして、ジージョを助け出してあげられればいいのだが……。

 この家に漂う空気のせいか、この孤島にはゴーストが多く出没する。ゴーストのドロンとバケル、おばけキャンドルのおばドルを仲間にできたのは嬉しいが……ジージョの島が死者の集まる島になってしまったのは悲しい。この家に住む人達は、生きているはずなのに………なのに、死んでいるのだ。時間が止まっているのだ……。

 複雑な気持ちを抱え、再び船に乗り込む。海を行くうち、ネーレウスのネレウスとアジャバが仲間になった。

 そして、航海を続けていくと、ある大陸の断崖に、洞窟の入口を発見した。入ってみると、そこは……今まで入ったどの洞窟とも違う、不思議な空間だった。洞窟には違いないのだが、まるで神殿のような、清らかな感じがする。光の届かない場所のはずなのに、何故か水面がキラキラと光っており、それが美しい。こんな綺麗なところでもモンスターが出現するというのが少々鬱陶しいが、それだけに、この奥には何がある(いる?)のだろうかとドキドキさせられる。……が、期待に胸を高まらせて進んだものの、洞窟の奥へ通じていると思われる扉は開かなかった……。そもそも鍵穴が見つからないという変わった扉で、盗賊のカギの技法では歯が立たない。

 ちっ、残念……。何かすごいものが手に入るかと思ったのに!!

 だが、レティの話では、誰かが「もっと後でおいで」と言っている…らしい。そういうことなら、いずれこの奥へ行くことも可能なのだろう。仕方ない、今はあきらめて、母の故郷を目指すことにしよう。

 それにしても、レティはすごい。やはり彼女も半分は勇者なのだ。

 ……で、洞窟を抜けると、遠くに村らしきものが見えた。恐らくあそこだろう。しかし、周辺は全て切り立った崖!!おそらく、この村に来るはあの洞窟を抜けるよりないのではないか。見事に閉鎖された場所にある。こんなところに父さんがどうやって入り込んでしまったのかは不思議だが…オジロンも、よくぞここを見つけてくれたものだと思う。

 周りの崖がどういうわけか全て真っ白なこともあって、モンスターさえ出なければ、本当に、人里離れた桃源郷だと思えたかもしれない。

 実際、村に入ってみると、その思いはいっそう強くなる。村は、高い高い山の上…ではなくて、山そのものが村になっているという、ひどく変わった造り。そこにいる人々も、一風変わった格好と物腰。本当に、不思議な村だ……。

 早速村を見て回ることにしたが、この急な斜面は結構こたえる。特にサンチョなんてぜいぜい言ってるし。この村で生活している人は、大変だろうな……。チゾットも大変な所にあるけれど、村自体は山なわけではないから、おそらくここが、僕の知る限り、人間の生活しにくい場所ナンバー1であろう。

 苦労しながら山頂にたどり着くと、そこには神殿らしき建物が。中には四人の長老がおり、いろいろなことを教えてくれた。

 この世には、天空界、人間界、魔界の3つがあり、その門番の役を、ここエルヘブンの民が担っていたとか。妖精界はどうなのだろう、と少し気になったが、それよりも重要なのは、その門の封印の力が段々弱まってきており、いずれは魔王までもこの人間界にやってきてしまうだろう、ということである。

 母マーサがは、そんなエルヘブンの民の中でも特に強い力を持っていたらしい。門番は、門を閉じると同時に、開くこともできる。おそらく魔物達は、母マーサに魔界の扉を開かせるために、彼女をさらったのだろう。

 母の使っていた部屋というのを見せてもらった。この人里離れた場所に佇む高い高い山―さらにそのてっぺんに建つ神殿の一番上が、その部屋だった。豪華で、今も綺麗に掃除されているけれど、どこか淋しい部屋……。

 ここにかつて母がいたのだと思うと、ひどく不思議な気分がした。

 昔、母がここにいた。この椅子に腰掛け、この窓から同じ景色を眺めていた。母はいつも、この空を見て、何を考えていたのだろうか……。

 キラが、この部屋を見て、とらわれのお姫様みたいだ、との感想を漏らした。そんなマーサをここから連れ出したのは、父パパス……。

 パパスもマーサも……現在に至るまで、僕の知らない色々なことがあったのだと改めて感じた。以前ビアンカが言っていたように、二人とも、最初から僕の両親だったわけではなく、最初はただの、一人の人間。それが、色々なことがあって、僕の父に、母になっていった……二人にその時のことをもっと聞きたかった。

 僕は大きく息を吐き、部屋を後にした。しかし、その部屋の香りは、いつまでも胸に残った。

 

 その後、まだ見ていない村の端々まで見て回った。この村は複雑な地形で見回るのが一苦労だが、それでもあちこち見回っていると、学者風の老人がいて、僕がマーサゆかりの者だと知ると、魔法のじゅうたんと魔法のカギを僕にくれた。これは嬉しい。魔法のじゅうたんに乗ると空を飛べると言うが…飛んだら気持ちいいだろうなあ。特別な魔法がかけてあって乗っている間は魔物も出ないというし、こんな素晴らしいものをぽんとくれるなんて、エルヘブンの人はいい人だ。

 それから、武器防具の装備を整えた。レティには鋼のムチ、キラとサンチョには魔法の鎧、僕には知力の兜。しかし、どれも非常に高価で、あっという間に所持金が底をついてしまった。これだけ買えたのはゴールドカードのおかげであり、それについては感謝しているが、それでもやはり高い……。もっとお金を稼ぐ方法はないものか。とりあえず、エルヘブン周辺をうろついてお金をため、ついでにゴーレムのゴレムスとサンダーを仲間にしたが、それでもまだ苦しい……ううむ。

 それでも、とりあえず必要なものは揃えたので、名残惜しいが、僕はそろそろエルヘブンを後にすることにした。…早く魔法のじゅうたんに乗ってみたかった、というのもあるのだが。

 今度ここに来るときは、家族みんなで来られればいい。……そう思った。

 

 

冒険の書:P43

 さて、エルヘブンを後にした僕たちは、早速魔法のじゅうたんに乗ってみた。ふわっと宙に浮いた時は感動もの!本当に、空を飛んでる……!!すいすいと、風を切って進むのがとても気持ちが良い。ただ、進路を決定するためには立ってバランスをとる必要があり、のんびり座ってばかりもいられないのが残念だ。それに、こうやって立って乗ってるのって、なんだか格好悪いんだよなあ……。

 しかし、これからどこへ行こう?エルヘブンに行って、マーサがさらわれた理由はわかったものの、どうすれば助け出せるのかということについてはさっぱりだった。ううむ……僕としては、とりあえず、セントベレス山の山頂にある、光の教団の神殿に殴り込みをかけたいのだが、あの山は高すぎて、とても登れない。ふう……でもそういえば、エルヘブンにいたおじいさんが、天空に通じる塔がどうとか言ってたなあ。そこへ…天空へ行けば、もっと色々なことがわかるかもしれない。よし、じゃあレベル上げをしながら、その塔を探すことにするか!!

 そうして、僕たちは各地をさまよった。ついでに、今まで開けることのできなかった扉も次々と開けて回った。グランバニアで星降る腕輪が手に入ったので、さっそく身につけた。ただ、どうも僕ばかり装飾品をつけすぎているような気がしたので、それまで身につけていた木彫りの女神像をキラにあげた。

 また、かねてから仲間にしたいと願っていたキングスライムを、ついに仲間にすることができた!!名前はキングス!!仲間になりたいというのを迎え入れたとき、嬉しそうにくるっとまわったのがなんとも可愛かった。しかし、こうして改めて見ると、ものすごく大きい。巨大で半透明で、ゼリーみたいにぷよぷよしている。子供達は、キングスによじ登って遊ぶのを楽しみ、すっかりキングスを気に入ってしまったようだった。そんなわけで、主戦力だったマッドを外し、かわりにキングスを入れることに。今はレベルが低いが、そのうちきっと活躍してくれることだろう。

 そうしてウロウロするうちに、僕たちはついに、それらしき塔を見つけた。セントベレス山の少し南にある、高い高い塔。半ば崩れかけてはいるものの、それは立派なもので、天空に通じる塔だというのも肯ける。

 しかし、これだけの高い塔だ。準備もなしに乗り込むのは禁物。僕たちは、しばらくこの周辺でレベル上げとG稼ぎに励むことにした。この辺りの敵が、どの程度の強さを持っているのか、というのを確認する必要もある。

 そうして戦ううちに、ケンタウラスのケンタスとカイオウ、プチマージのプチマジが仲間になってくれた。僕はレベル43になり、他のみんなも全員レベル33以上。キラはザオリクやベホマラーを覚え、レティはマヒャドを覚えた。ベホマンもベホマズンを覚えてくれたし……そろそろ大丈夫だろうか。念のため、サンタローズで僕にはドラゴンキラー、サンチョには雷神の槍、ピピンにはゾンビキラーを買った。僕はずっと刃のブーメランを使っていたのだが、さすがに少々……敵の数が多いときなどは仕方がないが、少ないときは、もっと強力な武器を持つ必要があると感じていたところだったのだ。そしてそれは、大正解だった!ドラゴン系の敵に二倍のダメージを与えるこれは、リザードマンやドラゴンゾンビを一撃で葬ることができるので、じつに気分が良い。星降る腕輪もつけているから、まさに電光石火、一撃必殺!!自分がすごく強くなったような気になれるのだ。

 そうして準備万端整えた僕たちは、いよいよ天空の塔を上ることに。だいぶ朽ち果てている印象だけれど、それでも十分に美しい。しかし、誰が作ったんだろうなあ…こんな高い塔。とにかく階段階段、また階段で、モンスターとの戦いよりも、こっちの方がきつい。特にサンチョは、完全に息が上がってしまっている。ま、それだけに景色は格別綺麗なのだが。

 入念に準備を整えた甲斐あって、僕たちは順調に上へと進み、ついにてっぺんへと辿り着いた!……のだが、そこには天空人が一人立っているだけ。なんでも、天空の城はどこかの湖に落ちてしまい、ここからは行くことができないらしい。うう、せっかく苦労してここまで来たというのに……!!

 が、全く無駄だったというわけでもないらしく、マグマの杖というのをもらった。洞窟を塞ぐ岩をも溶かすことができる、とのことだが……さしあたって溶かしたい岩もないし……まあ、そのうち何かの役には立つだろう。

 その天空人は、僕たちにマグマの杖を渡すと、すうっと消えてしまった。……あれ?ひょっとして、今の…幽霊?天空人でも幽霊になるのか?いろいろと聞きたいことがあったのに……。

 しかし、こうなったらしかたがない。ここまで来たからには、その湖に沈んだ城というのに行ってみようではないか。あまり深い湖だったら、そんなところまで潜れるのかどうか心配だが…その時はその時。仲間モンスターの誰かにでも、かわりに行ってもらおう。とにかくまず、その湖というのを探そう。サンチョは、この世界に湖はそんなに多くない、と言うが……それでも捜査範囲が世界中、となると少し面倒かもしれない。なにしろこの魔法のじゅうたん、空をとべるのはありがたいのだが、森や山をとびこすことはできないから……。まあそれでも、やってみるしかない、か……。今のところ、他に手がかりはないのだから。

 僕は大きく一つため息をついて、塔を後にした。本当に、僕の旅は前途多難だ……。

 

 

 

2004.8.10

 

 

 

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