チゾットの山越え
冒険の書:
P32
レベルも36になり、いよいよグランバニアに出発することにしたが、その前に、景気づけにカジノによっていくことにした。そしたら、10ドルスロットで777!これに勢いを得て100ドルスロットにもチャレンジしてみたところ、見事鐘と青丸がそろい、5500枚のコインを入手!元手2019枚から、一気に6962枚に!!はっはっは、もう笑いが止まらない。
ようし、この調子で1万枚……っと、いかんいかん、本来の目的を忘れるところだった。この調子で、一気にグランバニアへ出発だ!!
というわけで、まずは山の麓にあるネッドの宿屋で一泊。大木を利用して作られた、変わった宿屋だ。ここでコメントに苦しむペナントをもらい、登山道に入る。
ううむ、ペナント手にしながら上ったら、ほとんど「チゾット観光ツアー!モンスタ使い御一行様」とかのノリだなあ。恥ずかしいから、このペナントは袋にでも入れておこう……。
それにしても、想像以上に険しい山道だなあ、ここ。僕の個人的感覚で90度近くある坂道がゴロゴロ……。そのせいで視界もきかないし、くたびれるし、はぁ〜……目眩がしてきた……。
魔物が弱いのが救いとはいえ、これは結構きついかも……。三半規管にダメージを受けているような気がする。
でも、そうして歩き回っていると、山の中腹に洞穴を見つけた。入ってみると、中には調理器具なども置いてあり、人の住んでいる気配がする。部屋の隅にはガイコツのようなものが転がっていたが……まあ、気にしないことにしよう。
下へいくと、そこには老婆が一人いて、道に迷ったのなら泊まっていかないか、と聞いてきた。なんだか不気味なおばあさんだ。
この、あまりにもできすぎたシチュエーション……否が応でも、子供の頃サンチョに聞いた山姥の話を連想させずにはいられない。
……いやでもまさか、今時そんなものがいるはずが……それに、いたところで今の僕には敵ではない……はず。疲れているのは事実なんだし、泊めてもらうことにしよう。幽霊に泊めてもらった時だって、命をとられるなんてことはなかったんだし………。
ということで、泊めてもらうことにしたのだが………その晩、妙な音で目が覚めた。
妙な音……。そう、包丁を研ぐような。
…………。
おいおいおい………。
笑い飛ばしたい所だが、この音はそうさせてはくれない。
とにかく、様子を見に行ってみよう……って、何だこれ!身体が動かない!!ど……どうなってるんだ一体!?
内心かなり焦っていると、上からひたり、ひたりと何かの近づいてくる足音が聞こえてきた。
お……おいおい、嘘だろーーー!!
か…かなりまずいぞこの状況!
なんとか…なんとかならないのか!?
しかし、内心の焦りをよそに、身体は少しも動いてくれない。
足音はだんだん大きくなり、僕のすぐ横で止まった。
恐怖に思わず息がとまる。
おそるおそる目線を上にやると、そこにはあの老婆が立っており、僕と目が合うとにやりと笑った。
どひぃぃぃーーーっ!怖いーーーーーー!!
………って、あれ?おばあさんが手に持ってるのって、もしかして……。
僕がふと我にかえりかけた時、会った時と同じ老婆の声が。
僕の剣があまりにもボロボロだったので研いでおいてくれたのだという。あと、よく眠れるように呪文をかけておいたのだとか。
ま…まぎらわしい………。
うう、心臓がまだドキドキいってる………。
でも、安心したらどっと疲れた。本当に、もう寝よう………。
そして翌朝。おばあさんは、やはりあの不気味な笑いで僕たちを見送ってくれた。あの笑い方は癖なのだという。
それにしても、まぎらわしい……。おかげで体力は回復したし、強さもちょっぴり上がったが、精神的にはどっと疲れた気がする。
やれやれ、さっさと上に行こう………。
そこから先は、あまり複雑な道ではなく、上の方の洞穴から続く洞窟は、さらに単純だった。ああ、よかった。これでややこしい道がえんえんと続いていたら、さすがにくじけていたかも……。
そうして、なんとかチゾットに到着。こんな所に村があるなんてなあ。こんな所でよく生活できるものだ。他の町へ行こうと思ったら、いちいちあの登山道を通らないといけないんだからなあ。なんでこんなところに村なんて作ったんだろう……。
そんなことをぼんやりと考えながら夕陽に染まった町並みを眺めていると、突然横からお連れの人の顔が悪いみたいだが大丈夫かと声をかけられる。お連れの人……って、ビアンカ!?
見ると、確かにひどく顔色が悪い。声をかけようとすると、ビアンカは一瞬無理に微笑んだように見え……その後、崩れ落ちるようにその場に倒れた。
ビ……ビアンカ!?
僕は頭が真っ白になった。ど…どうしよう……。
僕がただ呆然と立ちつくしているうちに、村の人々が次々に駆け寄ってきて、担架でビアンカを宿屋に運んでいった。みてくれた神父さんの話では、疲れが出たのだろうとのこと。特にどこかが悪い、というわけでもなさそうで、それを聞いて安心した。
次の日には、ビアンカはすっかり元気になった様子で僕よりも早起きしていた。まだちょっと心配だが……まあ、この様子ならたぶん大丈夫だろう。
出発の際、おばあさんがチゾットのコンパスをくれた。これで道に迷っての体力消耗を減らすことができれば、ビアンカを今回のように倒れさせることもないだろう、と言って。
チゾットのコンパスと言えば、商人がほしがっていたもので、手作りのため1年はかかる代物だとか。
そんなすごい物をくれるなんて……ありがたい。
本当に、ビアンカを大事にしないとな………。
橋の下に広がる広大な森林にあらためてそれを誓い、僕たちはグランバニアに向けて出発した。
冒険の書:
P33
洞窟に入ったところで、早速チゾットのコンパスを使ってみる。
「グランバニア山の洞窟 11
F」……待てよ、確かチゾットへの登山道をのぼった時は階段一回しか上らなかったような気がするんだが……ということは、ほぼ10階分の高さがほとんど坂道に!?道理で、傾斜がきつくなるはずだよなあ……。
でも、傾斜がきついのも嫌だけど、こんなふうに何度も階段を下りなきゃいけないっていうのも面倒だな。せめて内部が複雑でなければいいんだけど。
………しかし、そんな僕の願いは、早々に打ち砕かれることになる。
9階で、商人がひどい目にあった、と言っていたから何があったのかと思ったら。
洞窟を抜けた所で、いきなり何階分か落下したのだ。
ああ、なんかいきなりややこしくなった……。
でも、とにかく下へ行けばいいんだから、落ちても問題はない。下へ、下へ……。それにしても、ここ、ミミックが多いな。宝箱の中身も小さなメダルとかばっかりだし。もちろんいいものではあるんだけど、僕としてはもっと、強力な武器防具みたいなすぐに有り難みがわかるものの方がいいんだけどなあ……。
そして、ついに二階。一つしかない下り階段を下りてみたけれど行き止まり。ここは違うらしい。
外につながっている通路があったので、そちらに行ってみることにする。うまくすれば、ここから落下して外へ……と思ったのだが、さすがに世の中そんなに甘くない。そこはただバルコニーになっているだけだった。やれやれ。
しかし、そこには一人の男が立っていた。なんだか変わった人だ。こんな所にいる、というだけでも十分に変わっている、とは思うのだが、なんというか……雰囲気が普通の人間らしくない。どこがどう、とはうまく言えないのだが。
話しかけてみると、その男はこの山に100年ほど住んでいる、と言った。
ひ…百年!?
とてもそんな年には見えないが……でも、ということはやっぱり、この人は人間じゃないんだ。山の精霊とかかな?
そのおじさんは、さっきそこですごろく券を拾ったのだがお前のものか、と聞いてきた。
……すごろく券?
まあ、ものがものだから、落としても気付かないかもしれないけど。これだけ人数がいたら誰か気付きそうなものだしなあ。確認してみないとなんとも言えないけど、とりあえず落とした覚えはないのでそう言うと、今度は小さなメダルが僕の落とし物ではないか、と聞いてきた。……だから知らないって。
すると今度は、水の羽衣が僕の落とし物ではにか、と聞いてきた。
………おいおいおい。
そんな、まだ一度も手にしたこともないのに僕の落とし物のはずがないだろう!というか、そんな物落とす人間がいるのか!?
ここで一瞬、頭をよぎったのは、小さい頃サンチョに聞かされた「あなたが落としたのは金の斧?銀の斧?」のおとぎ話。
……まさかな、ははは………。
まあそれはそれとして、僕のものではないのは確実なのでそう言うと、おじさんは僕を正直者だと言って、褒美にと全部くれた。
全部って……ええ!?
すごろく券と小さなメダルと、水の羽衣!?
ほ…本当にもらっちゃっていいんだろうか……?
でもラッキー!!!
水の羽衣なんて、現時点ではどう頑張っても手に入らない品。そのうち買えるようになったとしても、目の玉が飛び出るほどの金額がつく最高級品。それが、タダで手にはいるなんて……。
ああ、正直に答えてよかったなあ……!!
しかし、おじさんが最近は正直に答える旅人が減って嘆かわしい、と言っていたところからすると、おじさんはここに来る旅人全てに同じ事をしている模様。ひょっとして、これも道楽の一種か?それにしても、一体何枚水の羽衣を持ってるんだろう?正直に答える人ってそんなに少ないのかな……?
しかし、おとぎ話にある通り、やはり正直が一番ということだな、うんうん。おとぎ話と違って湖が山と、なんだかむさ苦しい感じになっていたが、まあ、思わぬ幸運にほくほくである。
しかし、だからといって出口が見つかるわけじゃないんだよな……。とりあえず、上り階段ではあるものの、まだ上っていない階段を上ってみることにしよう。
そうして上っていくと、やたら穴のいっぱいあいたホールに出た。もしかして、この穴のどこかに飛び込めば、それが出口に通じていたり……というのを考えたが、飛び込んで間違っていたらどうしようもないので、とりあえずそのまま先にのぼってみることにした。ずいぶん上へ来たが……そこには外に通じていそうな出口が!
ようし、ここから飛び降りれば、きっと1階まで一直線!
何の理由もなくそう確信した僕は、喜びいさんで飛び降りる。
……あれ?でも、あんまり落下した感じがしないな……ってあれは!!?
あれは…あれは、最初に9階で出会った商人!!
また最初に限りなく近い場所に戻ってきたっていうのか!!?
そ…そんな……。
商人の言っていた「えらい目」というのはこの事だったのか〜〜!!
で…でも、あんまりだ、こんなの………。
急に力が抜けて、思わずその場にへたれこみそうになった。ビアンカがいなかったら、本当にそのままそこでくじけてたかもしれない。うう、どっと疲れたよ……。
でも、いつまでもここで自失しているわけにはいかない。ここであきらめたら、ネッドの宿屋まで逆戻りだ。
そう自分を奮い立たせ、ふらふらと先へ進む。出会う魔物は片っ端からぶちのめす。……目がすわっているのが自分でもわかる。
だからだろうか。これだけ戦っても戦っても、ちっとも魔物達が仲間になってくれないのは……。愛を感じないんだな、きっと。今の僕には、とてもそんな余裕はない……。機械人形のように、ただただ敵を蹴散らし、先へ進むのみ。
そしてようやくもとの2階まで戻り、そこからまた階段を上がって、穴だらけのホールに出て、半ばやけくその気分で真ん中の穴に飛び込む。
と……おお!今度こそ1階だ!一階だな!!
まあ、これでまた違っていたら、我慢できずに暴れていたところだ。とにかく僕たちはようやく一階にたどり着いたのだ。後は何も考えず、ただ先へ進むだけ。
疲労(精神的疲労が主だろう)のあまり半ば思考を麻痺させた状態で歩いていると、出口のところにいた吟遊詩人が、サンチョという人がずいぶん淋しそうな様子でここを通っていったと教えてくれた。
サンチョって……やっぱりあのサンチョなんだろうか。
じゃあ、父さんは……僕はやっぱり……。
とにかく会えばわかること。ますます先を急がなくては。
しかし、たった一人でここを抜けたのか?全然そうは見えないけど、サンチョって、結構すごいかも……。
洞窟を抜けると、眩しい光が差し込んできた。一面の緑が広がる。
ああ、やっと…やっと着いたんだ………。
僕たちは、城に入ると脇目もふらずにすぐさま教会に駆け込み、お祈りをすませて死んだように眠りについた……。
2004.5.31