ラインハットの陰謀

 

 

 

冒険の書:17

 

 さあ、いよいよラインハットへ出発だ!

 ……と思って関所まで来たはいいが……たしかここって、太后の許可がないと通れないことになってるんじゃなかったっけ?

 一体ヘンリーはどうするつもりなんだろう、と思って見ていると……なんと、ヘンリーは、横柄に通行禁止を言い渡す兵士に、いきなりケリを入れたのである。さすが親分。三つ子の魂百まで。思わず拍手してしまった。

 カエルに泣かされた兵士トムが、最強親分ヘンリーに敵うはずもない。ヘンリーが誰だかわかると、感激して素直に道を開けてくれた。親分ヘンリーの人望が篤かったのか、それとも今のラインハットはカエルよりもひどいのか。ううむ。

 ま、何はともあれ、感動的な再会の様子が展開され、見てるとなんとなく嬉しかった。ちょっぴり羨ましくもあったけど。僕にはもう、僕の帰りをこんなに歓迎してくれる人は……あ、サンチョなら……でもどこにいるかわからないし……今頃どうしてるかなあ。無事でいるといいんだけど。

 何はともあれ、ヘンリーのおかげで関所は無事通行できた。やはり、腐っても王子……いや、腐ってないけど。そうして、僕にとってもある意味なつかしいラインハットに着いたのだが……ラインハットは、僕の目から見ても、なんだか前よりずいぶんさびれていた。もともとそんなに大きな城下町ではなかったけれど、それでも前はこざっぱりとした印象で、道行く人々の顔は皆明るかった。ところが今では、どこを見ても明るい表情の人など見当たらず、街角には前はいなかった物乞いまでいる。一体なんだって、ここまでひどくなってしまったのか。

 とにかく、城へ行ってちょっと探ってみよう。念のため、現時点ではヘンリーが誰なのかは秘密である。ただの旅人ということにして、現時点ではあくまでもちょっと様子を見るだけ、ということになっている。

 そうして中に入った僕たちは、兵士達の詰め所で、太后が世界征服を企んでいる、などというキナ臭い話を耳にした。実際に次々と兵士達を集めてもいるらしい。そして、城に堂々と居座る不気味な魔物。誰も何も言わない。……あ、いや、僕もいろいろと魔物連れてるから、あんまりとやかくは言えないんだが……僕の仲間達はこんなガイコツじゃなくてフカフカブラウンやぷよぷよスライムなんかの可愛いのが多いし、外見がちょっと不気味な奴だって、人間が血を流すのをにやにや笑って楽しむような悪趣味は持ち合わせていない。こんな奴が堂々と居座ってるなんて、この城は相当変だ。

 痛くなってきた頭を抱えつつ、もっと色々調べてみようと奥へ行こうとしたのだが、あっさり兵士に止められてしまった。太后の許可なしには通れないらしい。しかし、太后太后って……王の立場は?昔会ったデールはなんだか気弱そうな感じだったから、王になった今でも母親には逆らえなかったりするのかなあ。

 とにかく、調べられないことには話にならない。ここで考え込んでいても仕方がないので、とりあえず息苦しい城内から出てゆっくり考えようとした時、ヘンリーが隠し通路の存在を思い出してくれた。なんともあやふやな記憶ではあったが、それを手がかりに探したら、意外とあっさり見つかった。早速潜入……しようと、したのだが。ここには魔物が出るらしい。今のままでも行けないことはないけど、どうせならもうちょっと城のまわりをうろついてからにしたいものだ。ここらの敵と戦って、敵のレベルを見ておかなくては……というのは建前で。本音は、そう…スライムナイトを仲間にしたい!!そして、腕試しにダンジョンに連れてきたい!!というものだ。ヘンリーの視線がやや痛かったが、そこは気にしない。

 ……その甲斐あって、無事スライムナイトのピエールを仲間にすることができた。思ったより時間がかかってしまったが、まあ、ちゃんと仲間にできたのだからよしとしよう。知的そうなのに、剣の稽古ばかりしていてろくに話してくれないのが不満だが……。

 ピエールは、回復呪文も使えて末永く共に戦えそうなので、装備もしっかり整える。鉄シリーズの防具一揃えと、鋼の剣。これだけで、いきなりパーティー1の攻撃力・守備力を持ってしまったのには驚きである。ただHPがまだ低かったので、しばらくは馬車で修行。

 ……で、ある程度強くなってきたところで、いよいよラインハットの秘密の抜け道に潜入!

 魔物が次々と襲ってきたが、ピエールの戦いぶりを観察できるので、鬱陶しいとはあまり感じない。まずは、作戦「バッチリがんばれ」で、自由に戦わせてみたのだが……おいおいピエール、ひょっとして君……バカ?

 予想に反し、そう言わずにいられないぐらい、その戦いぶりはひどいものだった。素早さ・攻撃力ともに申し分ないのに、やたら回復呪文を唱えるのだ。それこそ、本人が2〜3ポイントしか傷ついていなくても、である。過保護な父さんだって、戦闘中にはここまでしなかったぞ。ピエール、わかっているのか?今作戦は、「いのちだいじに」じゃない、「バッチリがんばれ」だぞ?何故こんな行動をとるんだ!!!今後、もう、ピエールに自由に呪文を使わせるのはやめよう……。しくしくしく……。

 しかし、こうして嘆いていたら…慰めてくれるつもりなのか、腐った死体のスミスが起きあがって仲間になってくれた。あんまり可愛くないけど……とりあえず、仲間になってくれるのは嬉しいので、同じくあまり可愛くないおばけキノコのマッシュと交代で馬車に案内した。

 さて、新しい仲間も加わったことだし、気を取り直して出発!

 進んでいくと、奥は地下牢のようになっていて、中でも離れた一画にある牢に、ここには不似合いな立派な服を着た人物が入っていた。気になって近づいてみると、その人物は弾けるように駆け寄ってきて、自分は太后だと思った。太后……って、あのせかいせいふくを企んでいるとかいうあの太后?そんな人物がこんな所にいるわけない、とは思うものの、よく見れば、どことなく昔見た太后の面影が……。ヘンリーも否定しなかったし。太后(?)は、十年前ヘンリーをさらわせたのは自分だと認めたものの、それもデールを王にさせてやりたい哀れな親心からで、今では十分反省しているから牢から出して欲しいと涙ながらに訴えた。

 どうなっているのか、非常に気になるところだが……牢の鍵も持っていないので、気の毒だが、ここはとりあえず無視して先へ進むしかない。

 しかし、これは……ますます、早く調べてみなければ……。

 通路は基本的にそれほど複雑な造りではなかったので、抜けるのは簡単だった。抜けた先は、あの中庭。……なるほど、ここに繋がってたのか。しかし、なんか見慣れない犬がいるなー。どれどれ……って、ドラゴンキッズじゃないか!びっくりした……。危ないなー、もう。一匹だったし、簡単に倒せたからいいものの……場合によっては死人が出るぞ、これ。こんなのまで平然と放し飼いされてるなんて、この城、魔物に乗っ取られてるんじゃ……。太后のことといい、冗談ではないような……。

 まあ、何はともあれ、潜入には成功した。さっそく聞き込み開始だ。今のラインハットでは、実権を握っているのは王のデールではなく太后だとか、以前と違って今の太后はデールを可愛がるどころが邪魔にさえ思っている様子だとか……。地下牢でのことといい、やっぱり今の太后はニセモノで、本物とすり替わっているんだろうか。

 う〜ん、どうしたものか……。これは、思い切って直接デール王に話をしてみた方がいいかもしれない。

 そうして、僕たちは王のもとへ。デールは、なにやらずいぶんと落ち込んでいる様子だったが、ヘンリーに話しかけられ、それが誰だか気付くと目を輝かせ、飛び上がって喜んだ。ずいぶん慕われてたんだなあ、ヘンリー。

 太后のことについて話すと、デールも思い当たるふしがあるらしく、手がかりが倉庫にあるらしいと教えてくれ、城内の扉を自由に開けられる鍵をくれた。よし、これで一歩前進!早速倉庫に向かう。

 それにしても、デール、昔と印象変わってないなあ……。ヘンリーなんか、別人のように変わったっていうのに。ま、親分なのは相変わらずだけど。十年たったら人間変わってもおかしくないのに、互いがわかれば十年なんてなかったかのように、あっという間に親分子分の関係に。デールはずっとヘンリーを慕ってたみたいだし、ヘンリーもデールだけはずいぶん可愛がってたみたいだ。僕には兄弟がいないからピンとこないけど……僕とプックルみたいなもんかなあ。

 ……しかし、確かにデール王では太后の横暴を止めるのは無理だろうな。昔と変わらず気弱な感じで……悪い王様じゃないとは思うんだけど、前のラインハット王やエリック王なんかに比べると、あんまり王様らしくないと感じてしまう。ま、僕がこれまで会った王様に比べるとデールはかなり若いからそう感じてしまうのかもしれないけど。

 とにかく、デールが動けない以上、僕たちが動くしかない。

 ……で、倉庫に行くと、古い日記を見つけた。それによると、ここの旅の扉を渡った先の南の地にある塔に、真実の姿を映す鏡というのがまつられているらしい。

 なるほど、これを使えば……もし今の太后がニセモノならその正体を暴くことができる、というわけか。これで、次の方針が定まった。

 けどまあしかし、こうして方針が定まったからには、そう急ぐことはない。もう少しこの周辺をウロウロしよう。あの遺跡にもちょっと行ってみたいし。

 ……というわけで、ヘンリーには悪いが、ちょっと遺跡に寄り道。廃墟になっていて、今は何もなかったけど……。なんだか拍子抜け。ほっとしたようながっかりしたような、複雑な気分だ。こうなったら(?)、あたりのモンスターを仲間にしてまわろう!

 ……ということで、運も手伝って、すぐにダンスニードルのダニー、ドラゴンキッズのコドランが仲間になった。これでスミスとアプールは預かり所行きに。現在のパーティーは、外は「僕、ヘンリー、ブラウン、スラりん」、馬車は「ピエール、ドラきち、ダニー、コドラン」となっている。コドランは、なかなかの有望株で、ラインハット城で見つけたはがねのキバを装備させたら、いきなりパーティー1の攻撃力になった。そのうち火炎攻撃などの全体攻撃も覚えるだろうし、主戦力になれるだろう。今はまだHPが低いので外には出せないが……その時が楽しみだ。イエティがまだ仲間になっていないのと、スライムナイトがまだ一匹しかいない(是非ピエールの友人だというアーサーも加えたいところだ)のが心残りだが、僕のレベルももう19だし、それはまたの機会にして、そろそろ南の地とやらに行こうかな。そうしないと、ヘンリーの視線が痛いし……。

 しばらくの間は、ヘンリーも久々に城に帰った感慨に浸っていたみたいだったけど、さすがにそろそろ僕の寄り道に対する視線が厳しくなってきたんだよなあ。

 ようし、明日は旅の扉を渡って、このラインハットの陰謀を暴く鍵を手に入れてみせるぞ!!

 

 

2004.4.27

 

 

 

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