失われた10年(2)

 

冒険の書:16

 

 サンタローズでは色々とショックだったが、気を取り直してアルカパに出発だ。……おっと、そうだ、せっかくだから、ついでにビスタ港にも行ってみよう。ヘンリーが、他の大陸に行くならここから船を使って行くしかないと教えてくれた。しかし……なんでも、ラインハット王家が船を使う時しか港が使えないようになってしまっているようで、ほとんど開店休業状態のようだ。関所でもちょっと思ったけど、ラインハットって……なんか、やたら厳しくなってないか?なんか嫌な感じだな……。ああ、ヘンリーがなんか落ち込んでるような。これは大変。さっさとこんな所は離れて、アルカパへ行こう。

 

 ……アルカパは、10年前と変わらず、綺麗な町だった。

 そのことに、まず安心した。

 まず目指すは、もちろんあの宿屋。ビアンカ、元気かなあ。

 ……と楽しみに駆けつけたのだが、そこにビアンカはいなかった。なんでも、7年前に引っ越していったらしい。うう……。あらためて、10年という時の長さを思い知らされる。でも、元気ならまた会えるはず。

 気を取り直して、勇者について詳しい人とやらを探してみることにした。町のあちこちを歩いていると、やっぱりなつかしい。あのプックルをいじめてた悪ガキ達が立派な兵士になってたのには驚いた。

 しかし、不穏な話も聞いた。どうやらラインハットは、命がいくつあっても足りないような、危険な所になっているらしい。サンタローズの件や、関所やビスタ港での取り締まりといい……どうにもキナ臭い。

 気になって、後ろを振り返ると……ああ、やっぱり。ヘンリーは、だまりこんでうつむいてしまっていた。ここはそっとしておこう……。

 外は大体見回ったので、最後に酒場に行ってみた。バニーさんは、昔と同じ人で、そのことに妙に安心した。ヘンリーは、何とも言えない表情をしていたが。勇者のことを聞いてみると、なんと、そのバニーさんのお父さんが詳しいという。話を聞きたいと言ったら、快く奥に通してくれたけど……なんで、こんな所のおじさんが伝説の勇者について詳しいんだろう?イナッツさんのバニー姿もそうだけど、世の中、謎が多いなあ。

 で、子供の時に入れなかった所へ入れた僕たち。嬉しかったんで、おじさんに話を聞く前に地下室にも行ってみたら、なんと、宝箱が。ラッキー!勝手に宝箱の中身を頂戴した後、再び一階に上がっておじさんの話を聞く。おじさんは、見た目に反し、勇者の話、というのを話してくれたわけだけど……宝箱のことについてはおとがめなし。毎回思うんだけど、僕が勝手に人の物壊したり持ってったりしても、なんで誰も何も言わないんだろう?ま、その方が僕にとっては都合がいいんだけど。

 しかし、勇者の話と言っても思ったほどの収穫はなかったな……。結局当の勇者(…は、いないからその子孫になるが)がどこにいるかはさっぱりわからないし。まあ、伝説の武器防具の名前がわかっただけでもよしとするか……。

 収穫は得たのだし、とりあえず、今日は宿屋に泊まってもう寝よう。

 

 そう思って眠りについたのだが……夜中にふと目が覚めた。一瞬、今にも側でビアンカの声が聞こえてくるのではないかと思ったが、もちろんそんなことはなく。隣では、ヘンリーが起きていて、なにやら考え込んでいる様子だった。思い切って声をかけてみると、ヘンリーは、これまで聞いたラインハットの噂が気になっていると語ってくれた。そして、ラインハットのことはもう気にしないつもりだったけれど、そうも言っていられない状況みたいだから一度帰ってみようか、とも……。

 ヘンリーがラインハットの噂を気に懸けていることは気付いていたけれど、そのことをこうして僕に話してくれたのがなんとなく嬉しかった。何か大変なことになっているみたいだけど、ラインハットのことは僕も気になるし、どうなるかわからないけれど、僕もできるだけヘンリーの力になろうと思う。

 ……そして、翌朝。ヘンリーは、すぐにでもラインハットに行きたがっている様子だったが、僕としては、その前に色々とやっておきたいことがある。ここにあと一泊すれば記念品をもらえるらしいし、レヌール城にも行ってみたい。…そんなわけで、ヘンリーにはもう少し我慢してもらって、この辺りをしばしうろつくことに。

 まずは宿屋の記念品が欲しいが、すぐに泊まりなおすのもなんだかもったいないので、アルカパのまわりをうろうろしてモンスターを仲間にしようと試みる。確か来る途中、アルカパのそばにドラキーが出たのを覚えていたのだ。……そして、思ったより苦労したものの、無事ドラキーのドラきちを仲間に。ちょっと足を伸ばした先ではエビルアップルのアプールも仲間になった。馬車が一杯になってしまって、同種のいるスライムのプライムをモンスターじいさんに預けることになってしまったが、やはり仲間が増えるのは嬉しいものだ。

 そして、ここらで再び宿屋に一泊。これで二泊したことになり、念願の記念品入手!なんだろうとワクワクして受け取ったら、それはなんと安眠枕!ぶどうが使われた名産品らしい。ぶどう……ビアンカが言っていた、あのぶどうが……。なんか、感慨深いものがあるなあ……。それにしても、この枕、本当に気持ちいい。安らぐなあ。いや、別にビアンカのことを思い出すからってわけじゃないけど。ヘンリーなんか、頬ずりしてるし。

 いや〜、これはいいものを手に入れた。これでアルカパでの用事は終了。次はレヌール城だ。

 しかし、ここ……大人になった今でも、結構遠いと感じるな。我ながらよくやったとつくづく感心する。ヘンリーにも呆れ半分感心されてしまった。

 昼に中に入るのは初めてだが……こうして見ると、なんとも美しい。入り口のお墓が林立していたところはお花畑になっていて、お墓はきれいになくなってるし、城内の棺桶はベッドに。そして、城のてっぺんからは、遙か向こうまで見渡せて……なんとも素晴らしい景色を拝めるのだ。ラインハットの城から見た景色よりも綺麗だと思う。この城って、ずいぶん辺鄙なところにあるような気がするけど、この景観のためだとしたら、それもうなずけるなあ。

 屋上からの景色を楽しんだ後は、城内を歩いてみた。……やっぱりなつかしい。ヘンリーには思い出の地めぐりにつき合わせてるんじゃないだろうな、なんて言われてしまったけど。その通りだから何も言えないな……。それにしても、以前はひとだま(?)がやっていた宿屋を、今はちゃんと人間の幽霊(?)がやっていて……お化けについて半信半疑なヘンリーが、おじさんの体が透けているのを見て怖がっていたのが傑作だった。親分でも幽霊は怖いんだなあ。

 玉座の間に言ってみると、ちゃんと玉座が二つあって……それはいいのだが、なんと、そこに人間が!!それも、透けてない!!

 僕たちの姿を見ると、二人は慌てて逃げていったが、追いかけて事情を聞いてみると、ただの駆け落ちカップルだった。……なんか、この城も平和になったなあと感じた。昔の城じゃ、ここに隠れようなんて思わないだろうし。

 その後もあちこち見てみたが、なつかしいほかには特にこれといったものもなかったので、引き上げることにした。王様と王妃様にもう一度会えないかなあと、ちょっと期待していたのだけど。やっぱり、もう成仏しちゃってここにはいないのかな。

 さあ、ちょっと遠いけど、オラクルベリーまで戻って一休みしよう。そうして準備を整えたら、次はいよいよラインハットだ!!

 

 

2004.4.25

 

 

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