光の玉の謎

 

 かつて伝説の勇者ロトは、神より授かりし光の玉をもって闇の魔王を倒し、邪悪な魔物を大地に封印した。その時より、永き平和がアレフガルドに訪れたという。

 実際にロトは竜の女王から光の玉を授かり、ゾーマを倒す際、闇の衣をはがすのに光の玉を使用しているから、この伝説もあながち間違ってはいない。魔物を大地に封印するような場面はなかったものの、単に省略されただけという見方もできる。

 しかし、それならばなぜ、竜王は光の玉を奪うことができたのだろうか?

 「竜王一族の謎」で述べたように、竜王は、あの竜の女王の卵が孵ったものだという可能性が高い。

 ならば、竜王が光の玉の影響を受けなくても不思議はない。

 問題は、光の玉を奪われたからといって、なぜアレフガルドが「魔物達の封印は解かれ、世は再び邪悪と混迷へと向かった」という事態に陥ったのかということである。

 光の玉は、もともと下の世界にはなかったアイテム。そして、下の世界では、ゾーマが来るまでは、平和だったはず。であれば、単に光の玉を奪われたというだけならば、このような暗黒時代になるはずがないのだ。それがなぜ、このような事態になってしまったのだろう?そもそも、光の玉に、魔物を封印する力があるのだろうか?単に封印を解いたにしては、出現モンスターが、ロトの時代と少々異なっているように見えるのだが……。これについて、少し考えてみたい。

 まず、一つ目の説は、「光の玉は対ゾーマ専用アイテムで、魔物を封じる力などはない」というもの。実際、ゾーマ以外の魔物に使用しても効果はない。魔物がいなくなったのは、ゾーマが倒れたからで、光の玉の力ではないのだが、アレフガルドの人々が勝手にそう思いこんで神聖視しているだけーという説である。竜王が光の玉を奪ったのは、それが母(?)の形見だったからで、力を欲してのことではない。モンスターが出るようになったのは、竜王自身の力によるもの……というわけである。

 もしモンスターが単に封印されていたのなら、ロトの時代に出現したモンスターはすべて出現しているはずだが、そういうわけでもなし。また、百年後のDQ2で、ハーゴンが光の玉を奪ったという記述もないのにモンスターが跋扈している……といった疑問点も、この説なら解消できる。

 次に、二つ目の仮説。「光の玉で魔物を封印するには、玉を特定の条件下に置く必要がある」というもの。例えば、「勇者の心を持つ者が持つ」もしくは「特定の魔法陣の上に置く」などしないと、魔物を封印できない、といったことである。

 この場合、DQ2では光の玉は盗まれて行方不明になったなどしてハーゴンが現れたとき効果を発揮できなかったのだろう、ということになる。竜王が光の玉を奪ってモンスターが跋扈するようになった、ということの説明もできる。ロトの時代とややモンスターが異なるのが気になるところだが、竜王が現れてから現在までの間に、モンスターの間で著しい変化が起こったのかもしれない。ただ、これだとゾーマが現れるまで平和だったことの説明がつかないが……基本的に、アレフガルド土着であろうモンスターは、おとなしそうなのが多いので、操る黒幕がいなければ、人を襲ったりはしないのかもしれない。光の玉の力で、一度凶暴になったモンスター達を元に戻し、さらには凶悪な魔物の出現を抑えている……というのはどうだろうか。

 三つ目の仮説は、「光の玉には確かに力があるが、それは人間だけに有利に働くものではない」というもの。今回は勇者が使ったから、闇の衣をはがしたり、モンスターを封印したりといったことができたが、竜王の手に渡ったため、逆にアレフガルドを魔物が跋扈する世界に変えるのに使われてしまった……とか。竜王の手にわたるまでの間は、ラダトーム王家に保管されており、実際に使われることはなく、また使い方を知る者もいなかった、というところだろう。DQ2に登場しないのは、それまでに何者かに破壊されたか、永い時間の中、さすがに力を失った……というあたりではないだろうか。これは、他の仮説にも言えることだが。

 そして、四つ目。「魔物を封印する力はあるのだが、それは強いものではない」というもの。例えばアンデッドなどを封印したり、凶暴になったモンスターを元に戻すことぐらいならなんとかできるが、竜王やハーゴンのような強大な敵には影響を与えることができない、ということである。ただ、光の玉が効果を発揮していては、竜王も思うままにモンスターを呼び出したり操ったりできないので、光の玉を奪った……というところだろう。ハーゴンに対しては、これまで挙げた「玉の力が弱まった」「破壊された」「盗まれて効果を発揮できない」などの理由があてはまるだろう。

 最後に、五つ目の仮説―「光の玉を使用できる回数は、限られている」。これもまた、これまで色々挙げた疑問点にも難なくこたえられる。

 まず、ロトがゾーマを倒すのに使用した。その後も魔物を封印したり、アレフガルドを闇の封印から解いたりするのにも使ったかもしれない。なにしろ、アレフガルドの外に行こうと船を出しても、世界は綺麗に四角く切り取られているのだ。突然外の世界が出来たとも考えにくいから、DQ7のように、アレフガルドはゾーマの手によって封印されていた可能性が高い。単にゾーマを倒しただけで世界が全て元に戻ったという可能性ももちろんあるが、元に戻すのに光の玉を使ったという説も捨てることはできない。何回が使用回数限度だったのかは知らないが、恐らく、そう多くはないだろう。

 ひょっとすると、既にDQ1の時代では殆ど力は失われていたのかもしれない。この後は、一つ目の仮説と大体同じである。

 私としては、一つ目か四つ目、もしくは5つ目の仮説を推したいところだ。特に決め手があったわけではないが、これらの理由の方が、残りの二つよりなんとなくすっきりしているからである。

 ところで、竜王が倒れてからハーゴンが現れるまではほんの百年足らず。ゾーマが倒れてから竜王が現れるまでも、たぶん、長くて二、三百年といったところだろう(注:町にそれほど変化がないこと、竜王の年齢などから推測)。下手をすれば、もっと短くて、百年たっていないかもしれない。……平和とは、意外と長続きしないものである。

 

 

2003.10.12

 

 

 

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