ジャングル大帝

〜感想・評価〜

  

ここでは、作品についての評価と感想を述べています。

大好きな作品であり、適切な評価を下せる自信は今ひとつなのですが、
楽しんで頂ければ幸いです。

  

注)・評価は5段階評価です。

 

  

ジャングル大帝(新)

 

評価(原作)

ストーリー

5+

三世代にわたるスケールの大きな話で、どの局面からも目の話せない面白さ。

オリジナリティ

人間と対等に接するために人の言葉を話すようになった動物達。それにとどまらず、生物の住む理想郷へと話を広げる……。

一貫性

動物、自然、そして人間達について、一貫して描かれている。

話の構成

いくつかにわかれて展開していくが、混乱することもなく、やがて一つに。

画面構成

5+

大変ユーモラス。

軽妙洒脱。

感動

燃えるような激しさはないけれど、染み入るように深く心に伝わってくる。

キャラクター

4+

様々な人物が出てきて、その誰もが忘れられない。

ギャグ

A

丁度いい具合に挟まれている。キャラの名前などにも……。

合計

40+

総合評価

 深いテーマとユーモラスな雰囲気が丁度いい具合にあわさっていて、とても面白い。

感想

 アニメの方を先に見ていたため、この原作を読んだ時には、その違いに戸惑った。基本設定もかなり違っているし、レオの性格なども少々異なる。でも、それはそれとして、まったく別のものとして面白い。動物の食堂やオーケストラはユニークだし、月光石をめぐる物語にも惹きつけられる。また、アニメのエピソードについて、原作のどの部分がもとになっているのか、という発見もあって、色々な楽しみ方ができる。

  

評価(TVアニメ・新)

ストーリー

5+

奥深く、素晴らしい……!

キャラクター

長い話の中、個々のキャラクターが最後までそのキャラクターであり続けた。昔一度だけ出たキャラが後半再登場したり、というのも嬉しい。

画像

レオの動きが可愛い……!

音楽

主題歌がいい!!

演出

4+

ほのぼのだったりホラーだったり。後半は本当に怖かった。

構成

全体的にはいいのだが、後半のシビアな展開の時に、ほのぼのとした話は……結局あれ以来マイヤーの出番はなかったし……。

演技

誠実でかっこいいレオ、可愛いライヤ、愉快なトニー&ココ……みなぴったり。

遊び心

恐竜の登場や、動物達が人間の基地を破壊するところなど……。

オリジナル

5+

これはすごい……!!

原作の忠実度

C

登場キャラやパンジャの森、ムーン山といった基本設定をもとにしてはいるが、同じではない。カラボスや人間と動物の関係など、他も全て異なっている。

合計

40+

総合評価

 パンジャの森。そこでは決して誰も争ってはならないし、傷つけてはならない。動物達の最後の砦。理想郷。
 これは、そんな森を築いたパンジャの息子レオが、森を守ろうと奮闘する物語。

 パンジャの森は一種の理想郷であって、それを守るには、様々な苦労が伴う。パンジャの森を守るため、森の掟を破るものと戦うことは、掟を破ることにならないか?皆が安全な森に住みたがったら、動物が増えすぎて困ることになりはしないか?動物を傷つけてはならないのなら、レオ達肉食獣は何を食べればいいのか?
 こうした疑問についても、無視することなく一つ一つ向かい合っている。(例えば、レオが何を食べているのかという疑問については、ややぼかしてはいるものの、森の外で獲物を獲っている場面がある)

 その他にも、リーダーのあるべき姿、「みんなの力」の強さなどが語られていて、なんとも奥深い、素晴らしい作品である。

感想

キャラクター解説

レオ
 白いライオンの仔。前足の動きなど、仕草がなんとも愛らしい。可愛いのに、誠実さと凛々しさが全身から溢れていて、とてもかっこいい。ライオンなのに、ときめいてしまうほど。(笑)

ライヤ
 レオの友達の雌ライオンで、以前はパンジャの妹リョーナに仕えていた。自らを犠牲にしてパンジャの森を守ろうとするレオをいつも心配している。レオの見えないものを見ている、という点で貴重なキャラかもしれない。

トニー&ココ
 ガゼルとオウムの愉快なコンビで、レオの最初の友達。どちらも愛嬌があり、この二人の存在は、緊張で張り詰めた空気を和らげてくれる。

マロディー
 絶滅したと言われているバーバリーライオンの誇り高い長で、パンジャの古い友人。岩山に住み、パンジャの森の中でも他の者達とは一定の距離を置いている。自他に厳しく、王としてのあり方などでレオと異なる意見を持つが、レオを認めてもいる。

アムジ
 マロディーの孫(兄)。優しい性格で、その点、レオと少し似ている。

ケルル
 マロディーの孫(弟)。祖父を慕うが、非常に好戦的な性格で、レオに対し敵対心を抱いている。

心に残った話

1.「悪夢」
 これは本当に怖かった。近くの森で核実験(といっても、「核」という名称は一度も使われていないが)が行われるという話で、生き残った動物達が長い列をなしてパンジャの森へと逃げてくる。黒々とそびえたつキノコ雲と、傷一つないのにばたばたと倒れていく動物達が、ひたすら不気味で恐ろしい。そして、逃げてくる動物達を無差別に撃ち殺す人間達。「近くの住民が放射能に汚染された動物達を食べないように」との意図とはいえ、その様はまさしく虐殺。レオが必死に助けようとした者も、皆死んでしまう。とにかく恐ろしくて強烈な印象を残した。

2.「指導者」「帰郷」
 一度はパンジャの森を出たレオだが、長い旅の果てに戻ってくる。真のリーダーのあるべき姿を心に描いて。これまでレオは、なんとかして自分の力で―自分一人の力で森を守ろうと躍起になっていた。しかしこれからは、「みんなの力で」森を守ろうと決意した。それはパンジャともマロディーとも違う、レオのやり方。絶対王政から民主制へ。それにはまず、森の皆の意識から変えなければならなかった。皆はレオに頼りきり、ブブを怖れて言いたいことも言えずにいたけれど、勇気を出してブブに抗議。そしてついに、レオ達は、パンジャの森の掟を守りつつ、ブブ達を退かせることに成功する。これが「みんなの力」というものなのか……と、なかなか奥深いものを感じた。

4.「誇り」「闘志」「生命」
 パンジャの森を出たレオが、荒野を彷徨う話。子供の頃に見たおぼろげな記憶の中でも、このあたりの話は印象に残っている。平和で豊かなパンジャの森とはうって変わって、干からびた大地。過酷な戦い。孤独。……なぜか脳裏に焼きついて離れない。

6.「脱出」「決意」
 人間相手に戦いを挑んだ動物達が、その圧倒的な力を前にして、次々に倒れてゆく。悲しくて恐ろしくて、口惜しい。
 また、「脱出」では毒ガスの不気味さ、「決意」では地雷の恐怖がよく伝わってきた。

8.「移住」
 パンジャの森に動物が増えすぎたため、古くからの住民と新しい住民の間に衝突が起きる。そのどちらも「同じパンジャの森の仲間」だとして、あくまでも話し合いで解決を図ろうと必死になるレオ。その流す涙は美しかった。

9.「冒険」
 別名、ライヤの冒険。怪我をしたレオのために、危険な水晶の森まで薬草を採りにいく話で、ちょっとしたファンタジーの雰囲気もある。しかし何より印象深かったのは、森の番人、年老いたヌーの話。なぜか心に深くのしかかる。

10.「保護」
 人間に捕まった仲間を助けに行くレオ達。だが中には、自由よりも、このまま人間に飼われて安楽な暮らしを送ることを望む者もいた。それは、動物としての誇りを失った者の姿だという。マロディーは誇りを失った者を許さず、その者を自らの牙にかけた。それを見て、ジャングルに帰ることを拒んだ者もいた。そんな両者の姿が印象深い。

11.「再生」
 近くに人間が住み着いてしまったことで、レオは昼も夜も神経を尖らせていた。そんな彼を心配したライヤは、レオを森の外へと踏み出す。雪の降り積もるムーン山と、花畑の幻。おふくろさんの言葉が深く心に刻まれる。そしてレオは、生きてパンジャの森を守り抜くことを決意するのだった。シビアな状況での、希望に満ちた話。

12.「脅威」
 遠くから悪魔の雲がやって来る。それは酸性雨の雲で、近くの森をたちまちに枯らしてしまった。それはパンジャの森にもやってきたが、カラボスとみんなの祈りが通じて雲を退けることができた。カラボスの不思議な力が印象に残った話。

13.「結集」「勝利」
 人間達がパンジャの森の近くに基地を作り、本格的に開発に乗り出すが、みんなの力を合わせることで、彼らを撃退することに成功する。動物達の勝利。この時の作戦が面白い。まず、人間達の留守に基地に潜入。小鳥達は小石を落として地雷を爆破し、レオ達はジープをひっくり返したりヘリの操縦板を滅茶苦茶にして移動手段を破壊。武器庫にあった銃器は炎の中に投じて処分し、手榴弾の性能に築いた者はそれを基地の本格的な破壊に使用する。そして、戻ってきた人間達が要請した補給部隊を、狭い谷で急襲。その知能の高さ、並の動物ではない。さすが白い魔神と呼ばれるだけのことはある。また、こうして人間達を勝利できたのも、「みんなの力」を使ったからーつまり、今のレオだからこそで、昔のように自分一人の力で解決しようとしていたなら、決してこのような勝利はなかっただろうと思うと感慨深い。

15. 「調和(前編)」「調和(後編)」
 最終回。今度は相手の力が強すぎて、みんなの力をあわせてもとても敵わなかった。次々倒れていく仲間達。そこでレオの下した決断は、とても勇気あるものだった。しかしレオ……まさかあのまま死んじゃった、なんてことは……。

17.「共存」
 開発に来た軍隊を、原住民と協力して追い返す話。気のいい兵隊さんも登場。遺跡での雰囲気と壁画がいい感じ。

18.「潜入」
 人間はレオを殺すため、特別に訓練された動物を森に放つ。この男が、OAV「ブンブン(正式な題名は忘れた)」に出てくる男(子犬のブンブンを闘犬にするため、母親と引き離して川に流す。そしてその後も影から不気味な笑みをたたえてその成長を見守っている)に似ている気がする。得体の知れない黒い影がパンジャの森を駆け抜ける。点在する動物の死体の首筋に刻まれた牙のあと。ちょっとしたホラーの雰囲気である。

 この作品を見ていたのはずいぶんと昔になるが、本当に大好きで、毎回見終わったあとには感動して「レオごっこ」などして遊んでいた。その後記憶はだいぶ薄れ、しばらく前までは、レオが一時パンジャの森を出たことと、カラボスぐらいしか覚えていなかった。だから、原作を読んだ時にはそのあまりの違いに驚いたものだ。しかしこうして今再び見ることができたのは、とても幸運だった。今見ても本当にすごい作品で、面白い。

 

★おまけ★

名言集

「マロディー。僕の前に映るあなたの姿を汚さないでほしい」
     (「忠告」byレオ)

堂々としたレオが、かっこいい。

 

「レオ、誇りを捨てて戦うだけになったら、あの人間よりも
 もっと醜い生き物になってしまうわ」
     (「誇り」byライヤ)

野生に目覚めたレオは、本能の赴くまま、上記のマロディーのように人間に襲いかかろうとする。この後パンジャの森を出たレオは、「戦うだけ」になった者達の姿を見ることになる……。

 

「自分一人の力でみんなを守ることができると、自惚れていた。
 でも僕は、一人で生きることの厳しさを思い知らされました。
 命がけの戦いで生きる意味も教えてもらった。
 そして、僕など束になっても敵わない大自然があることに気づいたんです。
 その時僕は、仲間がとても大切に感じられて、パンジャの森へ帰りたいと思ったのです」
     (「指導者」byレオ)

どこまでもまっすぐなレオの言葉。それを語る清清しい表情。

 

「戦いを挑まれて避けるのは、時には戦うことより勇気が必要」
     (「指導者」byシルバーバック)

だからレオは、冷静にどうすべきかを判断できる。ケルルと違って、いくら挑まれてもむきになったりはしない。

 

「リーダーというものは、みんなが自分の仕事と義務をわかって
くれるように手助けするだけだ。群を守るために」
     (「指導者」byシルバーバック)

なるほど……。そしてレオは、そんなリーダーになった……。

 

「やっと僕は、森を守る力を見つけられた気がする。
 僕のこの全身の力より、もっと強い力で」
     (「帰郷」byレオ)

この「もっと強い力」に感動した……!

 

「僕は王ではない!同じ仲間として,話し合いで解決したいのです」
     (「移住」byレオ)

レオが、王であることをはっきりと否定した瞬間。

 

「誇りを捨てた奴に、生きる資格などない」
     (「保護」byマロディー)

自他に厳しいマロディー。

 

「不思議だ……今考えても不思議なことばかりだ。
 なぜわしがここにいるのか。なぜ薬草を手に入れられる者と、
手に入れられない者がいるのか。
 もしかすると、何か偉大な力がそうさせているのかもしれん」
     (「冒険」byヌー)

長い長い時を生きてきたヌーだから、この言葉はなぜか印象に残った。

 

「……寂しい?
 この雪はね、失われた命、死んでいったたくさんの命が天に昇り、そして、ここへ降りてくるのです。
 ……だから寂しいなどと思ったことはない。
 でも、私はいつも祈っている。いつかこの雪がやむ日のことを」
     (「再生」byオフクロサン)

これからは、雪が違って見えるだろう。

 

「レオ、お前の使命は血を流して争うことではない。
 これから生きていく仲間と、この美しい自然を守り、愛することなんだよ」
     (「再生」byオフクロサン)

ますます厳しくなる戦いの中の言葉だけに……。

 

「僕達が森を守ろうとしているだけじゃないんだ。
 森も僕を、僕たちを守ってくれていたんだ」
     (「挑戦」byレオ)

朝陽にきらめく木が美しい。

 

「パンジャの森だけで、生きてゆけたら。
 ……仲間を殺さずに、生きてゆけたら。
 でもきっと、こうやって生きなきゃならない僕達だからこそ、パンジャの森が必要なんだ。……大切なんだ」
     (「調和(前編)」byレオ)

パンジャの森の外で動物を襲って食べるレオ。その直後に紡ぎ出された言葉。
決して理想に到達できないからこそ、理想を描き求めることが必要か……。
……ふと思ったのだが、これって、日本(憲法九条)のことになるのでは……。

 

 

 

2008.5.12

 

 

 

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