深沢美潮作品

〜感想・評価〜

 

ここでは、作品についての評価と感想を述べています。

大好きな作品であり、適切な評価を下せる自信は今ひとつなのですが、

楽しんで頂ければ幸いです。

しかし、なにぶん個人的なものですので、
もし気分を害することになったらすみません。

 

注)・評価は5段階評価です。

 

 

フォーチュン・クエスト

 

 

 

冒険の記録 キャラクター

 

評価(原作)

ストーリー

ダンジョン、塔、海、宝の地図、
ドラゴン、魔女の呪い、ドッペルゲンネル、王女との入れ替わりなど、定番のクエスト一通りを独自の味付けで。

オリジナリティ

冒険を始めたばかりの頃のRPGの雰囲気と、特殊技能のない主人公。そして、様々な料理。

一貫性

設定やキャラクターに様々な矛盾が見られ、ストーリー進行においても不自然な点が多々ある。

話の構成

3+

一冊の中ではよくまとまっているが、全体を通して見ると、巻をまたいだ時にやや不自然になる。

文章

読みやすいが、新シリーズの後半になると、臨場感が薄れ、流れも悪くなる。同じくその頃から、世界観に合わない言葉遣いが散見されるようになった。

感動

特に最初の頃は、些細なことの一つ一つに感動。初心者パーティーならでは。たまにそこへ深みもプラスされる。

キャラクター

大所帯のパーティーで、皆際立つ個性を持っている。キャラクター同士の会話もとても楽しい。

ユーモア

不幸なクレイ

ギャグ

仲間同士の会話そのものが漫才のよう。

合計

30+

総合評価

 それなりの力を持った主人公達が華麗に大活躍!…というのではなく、RPGを始めたばかりの頃のような、お金に苦労し雑魚モンスターにも大騒ぎするあの頃の雰囲気を前面に据えた、ユニークかつオリジナリティ溢れる作品。あまりかっこよくはないけれど、親しみの持てるドタバタ劇に冒険の楽しさが溢れている。RPGにおける楽しみ、買い物やレベルアップなどがそのままこの作品の楽しみであり、そうした些細なことのひとつひとつにハラハラドキドキ、一喜一憂する主人公たちの感情をこちらもそのまま味わうことができる。

 ただ、シリーズが長く続くと、その魅力も薄れてくる。新シリーズに入ってから雰囲気が変わり、その傾向が現れてきたように思う。話が続く以上、それは仕方のないことなのかもしれない。この作品最大の魅力は主人公が初心者パーティーであることに由来し、しかるに人はいつまでも初心者のままではいられないのだから。買い物にもレベルアップにも冒険にすら、パステル達は以前ほど心を動かされなくなってしまった。そしてそれは、この作品最大の魅力が失われるということにほかならない。
 倒すべき敵の姿も見え、移動も全く苦もなく空を飛んでできるようになってしまった。これはもうRPG序盤ではなく、終盤のもの。それも、何でもできるようになり、最終決戦を前にして、一度がくりとテンションが落ち込む頃である(いよいよ決戦となればまた上がるのだが)。それも、序盤や中盤の楽しさを十分に堪能できないまま、雰囲気だけが終盤のものになってしまった。冒険に胸躍らせて自ら進んで挑戦したクエストは、驚くほど少ない。せっかく冒険者グループやシナリオ屋といったものが世界観に組み込まれているのだから、そうしたクエストももう少し見たかったと思う。

感想

好きなキャラクター

仲間全員、クレイ・ジュダ、スグリ、
クレイの祖父&トラップの祖父、ドーラ、
アルテア、イムサイ、ウギルギ様

好きな場面

たき火を囲んでの料理&食事、
装備や魔法の買い物、冒険者カード更新、
パステルの剣もしくは歌による戦闘、
仲間全員が活躍できる戦闘、
ドッペルゲンネルとの戦い、
JBとの作中ゲーム

好きなクエスト

  • 「世にも幸せな冒険者たち」
  • 「忘れられた村の忘れられたスープ」
  • 「ようこそ!呪われた城へ」

好きな街

シルバーリーブ、コーベニア、ロミリア、エベリン

好きなダンジョン

・ヒールニント山(後)

・ホーキンス山(JBのダンジョン)

・幸運の四葉島(宝の島)

・キットン族のダンジョン

・王家の塔

・聖騎士の塔

 私が中学生だった頃、何かの雑誌にこの作品を紹介した葉書が載っていた。「ドラクエが好きな人にはおすすめ」とあったので、本屋に行った際なんとなくこの本を探してみた。それが、「フォーチュンクエスト」との出会いだった。

 DQ1をやっていた頃、ある程度レベルが上がると(8ぐらいまで)、なぜかまた最初からやりたくなって、何度も何度もまた最初から始めていた。何度やっても、最初の頃というのは独特の面白さがあった。この作品を読んでいると、ずっとその気分に浸ることができて、ワクワクしたものだ。

 ただ、新シリーズになってから、少し雰囲気が変わった。巻が進むごとにその違和感はどんどん大きくなり、あまりわくわくしなくなっていった。最初はこちらの感性が変わったのかもしれないと思っていたのだが、旧シリーズは今読んでも面白くて夢中になるので、そういうわけではないのだろう。そういえば、印象に残っているゲストキャラクターも、皆旧シリーズに出てきたキャラばかりだ。新シリーズになってから、味のあるキャラクターが出てこなくなったような気がする。

 旧シリーズには、とにかく勢いがあった。世界全体が生き生きしていて、冒険の楽しさに溢れていた。物語もキャラの会話も、あとからあとから自然にページの間から湧き出てくる――そんな感じだった。
 それが新シリーズになると勢いがなくなり、テーマに合わせて無理矢理ストーリーやキャラクターが作られているような強引さを感じる。それが世界観と合わずに不自然さを生むことも。全体的に、いかにも作り物という感じがして深みや奥行きが感じられなくなった。
 記憶にもあまり残らなくて、旧シリーズの話やキャラははっきり覚えているのに、新シリーズは後半になるほど曖昧に、朧げになってくる。

 またあの濃厚な冒険を味わえる日は来るのだろうか…。

 

 

 

デュアン・サーク

 フォーチュンクエストより少し前の話なので、世界観のリンクが楽しめる。だが、作品そのものとしてはフォーチュンクエストの方が面白いように思う。

 あちらと同じくひよっこ冒険者としてのデュアンが描かれるが、殺伐とした雰囲気とほのぼとした雰囲気のバランスが楽しめたフォーチュンクエストに比べ、前者の割合が濃く、それでいて闇の深淵さはあまり感じられない。キャラクター達もわりと普通なので、フォーチュンクエストに比べるとどうしても影が薄くなる。

 そして、かように殺伐としてシリアスな雰囲気でありながら、敵はフォーチュンクエストと同等にどこかとぼけたというか、あまり悪者らしくないというか、さほど怖ろしくも強そうでもないというか…そういう感じで、そのギャップが悪い方向に作用している。

 また、いずれ勇者となるデュアンだが、ここで描かれる冒険がフォーチュンクエストの冒険とあまり変わらないように見えるため、伝説になるほどの活躍ではないという印象を受けてしまうのも問題かもしれない。この先の冒険との積み重ねで勇者としての名声が定着していくのだろうけれど…。

 

 

2012.9.11

 

 

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