氷帝戦の疑惑

 

 氷帝戦が終わったあと、コミックでは、「実は描く前に予定していた勝敗が変わった

キャラがいる」との作者のコメントがあった。

 この「勝敗が変わったキャラ」というのは一体誰だろう?

 これについて少し考えてみたい。

 そこで思い浮かんだのが、桃城と手塚である。

 まず、話の流れからすると、今回の氷帝戦の主旨は、手塚の勇姿をリョーマの目に

焼き付け、「青学の柱」を継承することであったろう。そのためには、5戦がどうし

ても2勝2敗1無効試合となってリョーマに試合がまわる必要があった。無効試合に

なりそうなのは河村VS樺地ぐらいしかないので、これは変更なしだろう。となると、

当然のごとく、勝敗の変わったキャラは「二人」いたことになる。

 まず、手塚。手塚VS跡部は、よく見てみると、色々と不自然な点があるのだ。そもそも、

なぜ肩を壊してまであんな激闘を繰り広げたのか?「全国へ行くため」と作中では説明さ

れていたが、別にここで負けても、リョーマが勝てばそれでOKではないか。まあ、手塚の

性格からすると、そういうのは嫌だったのかもしれないが…しかし、肩に激痛が走った時点

で勝てる可能性は著しく減少し、リョーマの方が勝てる確率は遙かに高い。仮に、もしここ

で勝てたとしても……肩の状態が酷ければ、当分手塚は出場できなくなる(現に今そうなっ

ている)。ひょっとすると、全国大会が始まっても復帰できずに、手塚を欠いた青学は惨敗…

ということになるかもしれない。それなのに、あそこでまだ試合を続けたというのは、非常

に疑問である。

 また、手塚の試合の途中でリョーマがアップしに行っているが…「リョーマは手塚の

勝利を信じている」という描写の後アップしに行くというのも何だか変である。

 しかし、これらの点は、「もう後がない」という状況のもとで行われたとしたなら、

少しも不自然ではなかった。1勝2敗1無効試合でシングルス1を迎え、「ここで勝た

なければ全国へ行けない」という状況なら、手塚があそこまでして試合に臨むのも、

リョーマがアップしにいくのも、ごく自然である。そして、手塚は激戦を制するが、

怪我が酷く当分は復帰できそうにない…リョーマは手塚の勇姿をしかと目に焼き付け、

強くなりたいとの決意を新たにすると共に、将来柱を継ぐ者として、試合に臨む…

という展開にしたとしても、それはそれでよかったのではないか。むしろ、不自然

な点がない分、こうした方がよかったと言える。ただ、その場合、あの「まぼろし」

が見れなくなるが……。

 一方、予定と違って「勝ってしまった」キャラだが…これは桃城だろう。リョーマは

勝たなければ話が続けられないし、不二は伏線の張り方からして、最初から負けさせる

予定だったとは思えない。一方桃城は、菊丸との即席コンビで…いくら大石のアドバイ

スを受けていたからといっても、それで前回準優勝の氷帝に勝ってしまうというのは、

どうにも不自然である。話の展開上、

「いい試合はしたが、惜しくも敗れた。大石の不在にもかかわらず、これだけの試合

ができた二人は立派」

ということにしても不都合はなかったはずだし、ここで負けておいたほうが、その後の

シングルス3で、河村が自分の腕を犠牲にしてまで相手と引き分けた…という流れが

きれいに見えるはず。これはどうも、作者がお気に入りらしい桃城を、描いているうちに

負けさせるに忍びなくなり、つい勝たせてしまったのではないか…という疑惑が持ち上がる。

 そうなると、勝敗数を合わせるために負けさせるとしたら…後は、不二か手塚しかいない。

で、格好良く負けることができるのはどちらか、と言えば、それはもう手塚である。

手塚VS跡部はもう勝敗など問題ではない、というレベルに到達しているので、負けさせた

としても、話にもキャライメージにもさしたる影響はない。そう考えて、手塚を負けさせ

たのではないか。それで「まぼろし」という名場面を描くこともできたわけだし。

 …まあ、結局推測の域を出ないが。

 でも、桃城が勝ったせいで手塚が負けたとしたら、なんだか嫌だなあ。

 

 

2003.7.1

 

戻る

inserted by FC2 system