「屍鬼」登場人物一覧

 

 

  

室井 静信(むろい・せいしん)

年齢

33歳目前

職業

僧侶(副住職)兼作家

経歴

  • 「半牛神」など、これまでに長編を六つと短編集を二つ出している。
  • 大学二年の時、自殺未遂を図る。
  • 旦那寺の跡取り息子で、若御院と呼ばれ慕われており、昨年脳卒中で倒れた父親にかわり寺をとりしきっている。

理想主義者。真面目で優しく、根っからの坊さん。淡々とした物腰は、礼服を着ているとぴたりと当てはまる。穏やかで礼儀正しく、万事に控え目な、きちんとした性格。子供の頃から引っ込み思案で、人見知りが激しかった。

室井 信明(むろい・しんめい)

静信の父。寺の住職で、未だに檀家の住職に対する信仰は深い。
美和子とは年が離れており、晩婚。一年前脳卒中で倒れて以来、寝たきりの生活をしている。四肢に麻痺が残り、うまく呂律が廻らない。

室井 美和子(むろい・みわこ)

静信の母。近隣の寺から見合いで嫁いできた。父母は既に他界し、長兄も早世。旧姓、山村美和子。


田所 光男(たどころ・みつお)

寺で雑務をしている。僧侶ではないから読経はしないが、15歳の時から寺に通って様々な雑用を一手に引き受け、陰から寺を支えてきた。檀家衆を取りまとめているから、檀家の噂にも耳ざとい。自身は宗教法人としての寺にどんな役職を持つわけではないが、寺に対する愛着は深い。
毎日、寺の麓にある家から朝一番にやってきて、細々とした雑用をして一日を過ごす。母共々、既に寺の一員のようなもので、寺に光男の姿を見ない日はない。

田所 克江(たどころ・かつえ)

光男の母。毎日庫裡を手伝いにやって来る。


鶴見(つるみ)

村内から通ってくる役僧。正確には信明の弟子にあたり、光男が出入りを始める前―子供の頃から寺に出入りしている(父親も役僧だった)。酒好き。

角(すみ)

溝辺町に住んでおり、予定が立て込んでいる時にだけ、近隣の寺から来てくれる。
家は同宗派の寺で、角はその次男。檀家数もさほど多くなく、住職である父親も副住職である長男も、教師との兼業で、とりたてて角の手は必要ない。それで非常勤の役僧として通ってきていた。

池辺(いけべ)

都会から外場に来た役僧。正確には信明の弟子にあたり、静信が大学四年の頃、本山の斡旋で入門した。静信より年下だが経験は長い。静信に対し、無条件の行為を抱いている。やや口が軽い模様。

 

 

尾崎医院

  

尾崎 敏夫(おざき・としお)

年齢

32歳

職業

医者(尾崎医院院長)

経歴

  • 外場に唯一の尾崎医院の院長にして、唯一の医者。
  • 三年前、父親が膵臓癌で倒れ、大学病院を辞めて村に戻ってきた。

かなりのヘビー・スモーカーで、医者の不養生の典型。憎まれ口をきいては好んで周囲の誤解を買い、不謹慎な軽口を叩くので、不良医師などと呼ばれるが、皆には慕われている。着るものにもあまり頓着せず、威厳もなにもあったものではないが、時間外の診察も厭わないし、求められれば時間を問わず、自分で鞄を提げて気軽に往診にも行く。
静信とは同級生で、小さい頃から仲がいい。負けん気が強く、小さい頃はガキ大将だった。

尾崎 恭子(おざき・きょうこ)

敏夫の妻。三十歳で子供はいない。山村での生活を嫌って、溝辺町の市街部にアンティーク・ショップを持ち、店の近くのマンションで暮らしている。外場に戻ってくるのは月に二、三度のこと。

尾崎 孝江(おざき・たかえ)

敏夫の母。敏夫に医師としての威厳が欠如していることを苦々しく思っている。実家はどこだかの羽振りの良い病院だったらしく、気位が高い。病院のスタッフは使用人扱いだが、病院には一切関わらないのが孝江の流儀。
医院を見下ろす寺と兼正にあまりいい感情を抱いていない。

尾崎

先代院長。非常に気位の高い人物だった。


武藤(むとう)

中外場三班

職業

医療事務主任

謹厳実直を絵に描いたような男。長男が小学校に入る際、近隣から外場に家を求めて移り住んできた。中外場三班。弔組は同三組。土地の者ではないから屋号を持たず、老人の多くは「事務長」と呼ぶ。
「クレオール」の常連。

武藤 静子(むとう・しずこ)

武藤の妻

武藤 徹(むとう・とおる)

武藤の長男。20歳。寺の檀家。村外の会社に勤めており、トラックを運転できる。
夏野を弟のように思っている。

武藤 葵(むとう・あおい)

武藤の娘。18歳。近隣の高校の商業科に通っている。

武藤 保(むとう・たもつ)

徹の弟。高校二年で、正雄と同級。


国広 律子(くにひろ・りつこ)

年齢

28歳

職業

看護婦

上外場。北山の麓に近い。

看護婦は好きで選んだ仕事で、やりがいも感じており、家系を支えている。以前恋人がいたが、故郷を捨てられず、別れた。
飼い犬の名前は太郎。

国広 緑(くにひろ・みどり)

律子の妹。保母。

国広 康江(くにひろ・やすえ)

律子の母。寡婦。狭い田畑を耕しているが、収穫は一家の食い扶持ぶんだけ。


永田 清美(ながた・きよみ)

看護婦。四十歳過ぎ。6年生の娘がいる。

橋口 やすよ(はしぐち・やすよ)

看護婦。最年長で、五十歳すぎ。敏夫が子供の頃から知っている。

汐見 雪(しおみ・ゆき)

若い看護婦。村外通勤者。

井崎 聡子(いさき・さとこ)

看護婦。村外通勤者。雪と仲がいい。


関口 ミキ(せきぐち・みき)

清掃や雑務を担当する。パート。一人暮らしで、家は中外場。
酒飲みの夫は十年ほど前に肝臓を壊し、以来家でぶらぶらしていたが、二年前、肝硬変で死亡。子供はいるが、みんな村外へ出てしまっている。家財と呼べるほどの家財もなく、蓄えは全部、夫が死ぬまでに飲んでしまっていた。

高野 藤代(たかの・ふじよ)

清掃や雑務を担当する。パート。


十和田

事務員

下山

レントゲン技師。妻と小さな子供がいる。
溝辺町のはずれにできた住宅地に住んでおり、病院までは、車で三十分ほど。

 

 

クレオール(creole)

  

長谷川

四十代半ばのやせた男で、バーテンダーを思わせる風貌。四年前にバイク事故で一人息子を亡くし、気抜けして外場出身の妻の故郷に引っ越してきた。本人は転入組。そして、三年半前に、半分道楽で喫茶店「クレオール」を開き、マスターをしている。

長谷川 ちよみ

長谷川の妻。家は水口で、田代書店の近所。外場出身。


結城(ゆうき)

都会生まれの都会育ち。父は東北出身、母は東海出身。ジャズも嫌いではなく、「クレオール」常連。

田舎に引っ込みたくて、中外場に一年ほど前に引っ越してきた。創作工房を営む。畑を作り、樅材で家具などを作って都会に出荷している。中外場三組。弔組は同三班。屋号を持たないため、老人達からは「工房」と呼ばれる。
梓が改姓を拒んだため、入籍はしていない。夫婦別姓で、相手の事は同居人と呼ぶ。

小出 梓(こいで・あずさ)

結城の妻。入籍はしていない。梓の両親と結城の両親とは仲が悪い。

小出 夏野(こいで・なつの)

16歳。高一。母親である小出梓の籍に入っているが、学校などの兼ね合いから、常には父親の結城姓を名乗っている。父親のつけた名前が気に入らず、名前で呼ばれることに、呆れるくらい根気強く抵抗する。
田舎を嫌い、村を出たがっている。協調性のあるタイプではなかったが、行動力もあり、人望があった。
田中家の姉弟と親しくなる。


加藤 実(かとう・みのる)

三十半ばの、ごくおとなしい、もの静かな男。一之橋の袂で電気店を営み、配達と工事にしょっちゅう出かけている。淡々とした口調で喋る、その言動や風貌からすると、電気店の主人よりも、理系研究者のように見える。「クレオール」常連の一人。

加藤 ゆきえ(かとう・ゆきえ)

祐介の祖母(実の母)。電気店の店番をしているほか、毎朝神社を掃除している。

加藤 祐介(かとう・ゆうすけ)

近所でただ一人の一年生。母は小さい頃に他界し、いつも一人で遊んでいる。標準より小さいけれど、健康な良い子。昔から人見知りする子供だったが、勘が鋭い。
山―兼正の家には鬼がおり、暗くなったら鬼が来ると信じている。


広沢

中外場(六班。弔組は同三組)に住む中学教師。「クレオール」の常連。四つになる娘と妻がいる。
兼正の家が建つのを見ていたので、地下室があるのを知っている。

三上

「クレオール」に出入りしていたが、突然転居。

武藤(→「尾崎医院」へ)

清水武雄(→「学生達」ヘ)

田代正紀(→「田代書店」へ)

 

 

学生達

  

田中 かおり(たなか・かおり)

中学三年生(六月生まれ)。そのわりにすれたところのない、ぽうっとしたおさげの少女で、少し臆病。
下外場に住む。
清水恵とは幼稚園の頃からの友達。

田中 昭(たなか・あきら)

かおりの二つ下の弟。今年、中学に入ったばかりで、生意気盛り。かおりのことも呼び捨てにする。言い出したら聞かない性格。

田中 佐知子(たなか・さちこ)

かおりの母親。家族の気持ちを忖度せず、いつも小言ばかり言っている。
佐知子の実家は村内にあったが、今はもう家族はいない。年老いた母がいたが、都会に行った兄夫婦が手元に呼び寄せていた。

田中 良和(たなか・よしかず)

かおりの父親。役場で、戸籍や住民票の担当をしている。

ラブ

田中家の飼い犬。雑種で、長毛種の血が混じっているらしく、むくむくしている。


清水 恵(しみず・めぐみ)

かおりよりも一つ年上の高一(八月二十六日生まれ)。家は下外場。田中家とは家も近く、母親同士も仲が良い。かおりと幼なじみだが、内心ではかおりを鬱陶しく思っている。
夏野のことが好き。田舎を嫌い、村を出たがっている。
武藤家の兄弟と付き合いが古かった。

清水 武雄(しみず・たけお)

恵の父。「クレオール」の常連。非常に気骨のある人物。冷静で理論家。外場JAの信用事業部に勤める。

清水 寛子(しみず・ひろこ)

恵の母。田中佐知子と仲が良く、「ちぐさ」に出入りしている。

清水 徳郎(しみず・とくろう)

恵の祖父。もともと村会議員をやっていた気骨のある人物。若い頃は血気も盛んだったらしく、逸話には事欠かない。熱血漢で、激昂しやすい。


村迫 正雄(むらさこ・まさお)

村迫米穀店の三男で、夏野を毛嫌いしている。と同級の高二。
兄とは十七も年が離れており、甘やかされて育ったため、少し我儘なところがある。また、兄二人の出来が良いため、比べられて屈折したところも。人を窺うような目つきで見て、人を試すような振る舞いをするし、絡む。嘘つきで残酷で、他人に対する共感や想像力を持たず、平気で他人を利用する。

村迫 宗秀(むらさこ・むねひで)

正雄の父で、外場の世話役。もう還暦の前後。村でただ一軒の米穀店をやっている。妻良子は既に死亡。

村迫 宗貴(むらさこ・むねたか)

宗秀の長男。静信の三級上で、高校までは静信もよく遊びに来て世話になっている。明るく屈託のない為人で、人望もある。

村迫 智寿子(むらさこ・ちずこ)

宗秀の妻。正雄とは折り合いが悪い。

村迫 博巳(むらさこ・ひろみ)

宗貴の息子。九歳。

村迫 智香(むらさこ・ちか)

宗貴の娘。小二。

村迫 英輝(むらさこ・ひでき)

宗秀の次男。静信の一級上で、昔はよく交流があった。

武藤徹&保&葵(→「尾崎医院」へ)

小出夏野(→「クレオール」へ)

 

 

大塚製材

  

大塚 吉五郎(おおつか・きちごろう)

丸安製材と並ぶ製材所、大塚製材所を営む。村に製材所は何軒かあるが、中でもこの二つは群を抜いて大きい。かつては寺の檀家で、檀家総代でもあったが、静信が大学を卒業する前に檀家を抜けた。死んだ妻が新興宗教に入信し、吉五郎も同じく入信したせいである。その頃の確執のせいか、寺の者に当たりが悪い。区長も降ろされて、すっかりへそを曲げてしまっている。

大塚 隆之(おおつか・たかゆき)

康幸の父。吉五郎と違い、特に寺の者に当たりが悪いわけではない。

大塚 浩子(おおつか・ひろこ)

隆之の妻。家が田中家の裏隣にあり、田中姉弟の両親が亡くなった際、かおりの面倒を見た。

大塚 康幸(おおつか・やすゆき)

35歳、独身。気立てはいいが、内気。大塚製材の材木置き場は田中家のすぐ近くにあり、田中姉弟にとって、康幸は近所のお兄さんのようなもの。田中昭が小さい頃、よく遊んであげていた。

 

 

安森工業&丸安製材

  

安森 徳次郎(やすもり・とくじろう)

檀家総代の一人で、山入の世話役と消防団の団長も兼ねる。家(安森工業)は工務店と通称され、製材所の分家にあたり、建築・土木業を営んでいる。村での普請は、たいがい安森工業が請け負う。
70を目前にして、なお血気盛んな人物。安森義一の弟。

安森 節子(やすもり・せつこ)

徳次郎の後添い。まだ信仰に傾倒するほどの年ではないが、檀家の女衆をまとめて、こまめに寺の面倒を見ている。

安森 幹康(やすもり・みきやす)

奈緒の夫。28歳。細面の顔。子供の頃は怖がりで臆病で気弱。敏夫とは幼なじみで、小さい頃は子分のようなものだった。
安森一成
(淳子の義父)とは年の離れた従兄弟。安森和也(淳子の夫)とは同年輩なので、兄弟のようだった。

安森 奈緒(やすもり・なお)

26歳。髪が長い。村外から安森工業に嫁いできた。丸安工業とは、夫同士の仲がいいだけでなく、本家分家の仲だから、何かにつけ往き来があった。安森淳子と親しい。
実の父母は六歳の時に失踪しており、伯父夫婦に育てられた。

安森 進(やすもり・すすむ)

奈緒の長男。3歳。


安森 義一(やすもり・ぎいち)

74歳。長くパーキンソン病を患い、もう六年も寝たきり。弟の徳次郎に譲るまで、檀家総代を務めていた。世話方の代表も務めたことがあり、寺にとっては重鎮の一人。

安森 一成(やすもり・かずなり)

淳子の義父。
安森幹康とは年の離れた従兄弟にあたる。

安森 厚子(やすもり・あつこ)

一成の妻。

安森 和也(やすもり・かずや)

淳子の夫。
安森幹康とは同年輩なので、兄弟のようだった。

安森 淳子(やすもり・じゅんこ)

丸安製材の嫁。昨年、村外から嫁入りした。生まれたのはそこそこに町中で、親戚も遠いし、付き合いもない。家業の手伝いと老人の世話があり、義父母を含め三世代の同居だから気苦労は多いが、家族とはうまくいっている。しっかり者。髪型はショートカット。


武田

安森工務店の番頭

 

 

ちぐさ

  

矢野 加奈美(やの・かなみ)

寺の檀家で、下外場に住む。前田元子の幼なじみ。都会に縁付いていたが、五年前に離婚して村に戻り、ドライブイン「ちぐさ」を開いた。離婚に際し、二人いた子供を夫の家に置いてきている。

矢野 妙(やの・たえ)

加奈美の母で、後藤田ふきの友人。ふきとは同級生だった。加奈美が遅くまで店に出てしまうから、一人の家が寂しくて、よくふきの家を訪ねている。


前田 元子(まえだ・もとこ)

檀家ではないが、この村の出身で、「ちぐさ」にパートに出ている。矢野加奈美とは幼なじみ。気が小さくて、神経質。家は下外場で村の南端、国道のすぐ近くにあるため、「よそ者が子供をひき殺していく」という強迫観念に取り憑かれており、子供のこととなると人が変わる。両親はもういないが、兄が村に残って家を継いでいる。

前田 勇(まえだ・いさみ)

元子の夫。JAに勤めている。

前田 志保梨(まえだ・しおり)

元子の娘。6歳。

前田 茂樹(まえだ・しげき)

元子の息子。小学校低学年。

前田 巌(まえだ・いわお)

元子の舅。六十過ぎ。壮健で、この歳まで病気一つしたことないのが自慢。そのせいか、他人が寝付いても何か不始末でもしでかしたかのように言って責める性癖がある。健康なだけでなく、意気盛んな老人で、機嫌を悪くすると口やかましい。小心で弱い元子を苦々しく思い、何かにつけて責める。

前田 登美子(まえだ・とみこ)

元子の姑。夫と共に山に入っている。小心な元子を苦々しく思っている。


前田 時夫(まえだ・ときお)

前田勇の従兄弟で、勇よりも少し年上。外場地区に住み、溝辺町の消防署に勤めていた。身体は丈夫で真面目な性分。消防士を天職だと思っている。

前田 利香(まえだ・りか)

時夫の妻で、元子と同い歳。村内から嫁いだ。時夫の死後は、子供を連れて水口にある実家に戻っていた。


後藤田 ふき(ごとうだ・ふき)

67歳。矢野妙の友人で、幼なじみ。長く関節炎を患っている。
村迫秀正の妹。

後藤田 秀司(ごとうだ・しゅうじ)

三十九歳、独身。ふきの末子。一人だけ結婚しそびれて、今も家に残っている。家は上外場の北にあり、指物の卸をやっている。
よく夜遅くに「ちぐさ」に来るが、誘い合って飲みに来るような友人もおらず、カウンターが暗くなると、あまり歓迎されていない。内向的だが、意外に激昂しやすい性格。おとなしいが、、酒が入ってカッとくるといけない。特に身内に対しては。ちなみに、滅多に病気をしない。
外場の起き上がり第一号だが、母を手に掛けた罪悪感から、自らを傷つけることをやめられず、廃人同然になった。

 

 

タケムラ

   

竹村 タツ(たけむら・たつ)

村外に嫁いでいたが、夫は戦地で死亡した。それで戦後、身ひとつで村に戻ってきてタケムラ文具店を始めた。戦後ずっと、その番台のような場所に座って、子供と村道を見てきた。特に昼間は近所の者が時折やって来る程度で、道を眺めている以外、特にすることもなかったし、店も立地もあり、村の者の出入りを把握している。
竹村源一の叔母。


伊藤 郁美(いとう・いくみ)

「タケムラ」の常連。集まった老人達より一回りは年下になる。年寄りというほどの年ではないが、奇矯なところがあって、同じ年頃の女達の中に入れずにいる。村外から嫁に入った女で、実家とは疎遠だし、奇妙な言動のせいで村内の親戚筋とはものの見事に縁が切れている。近隣の者も、敬して遠ざける、というふうで、相手をするのは暇を持て余したタケムラの老人達ぐらいのものなのだ。伊藤親子は村の外れ、二人きりで孤立していた。
水口の一番下にぽつんと建っているあばら屋に住み、やせている。有名な吝嗇家で、保険にも入っていない。親子で細々と田圃と畑を作り、あとは他人の善意をあてにして食っている。自己顕示欲が非常に強い。

伊藤 玉恵(いとう・たまえ)

郁美の娘。歳は36ぐらいのはずだが、疲れ果てたような顔は、既に一回りも年上であるかのように老け込んでいる。どこか虚ろな目。でっぷりと太り、無気力を絵に描いたような様子は昔からのもの。


佐藤 笈太郎(さとう・おいたろう)

「タケムラ」の常連。水口で木工屋を持っている。
歳に似合わず、良いカメラを持っている。都会に行った息子のお古をもらったもので、望遠レンズがついている。

広沢 武子(ひろさわ・たけこ)

「タケムラ」の常連。

大塚 弥栄子(おおつか・やえこ)

「タケムラ」の常連。下外場に住む。

大川浪江(→「大川酒店」へ)

 

 

大川酒店

  

大川 富雄(おおかわ・とみお)

公民館近くにある「大川酒店」の大将。ダミ声で、巨漢といっていい体躯。短気で粗暴なところもあるが、決して情のない男ではないし、口煩いかわりに面倒見もいい。
消防団の一員で、外場集落の班長。

大川 かず子(おおかわ・かずこ)

富雄の妻。

大川 浪江(おおかわ・なみえ)

富雄の母。「タケムラ」の常連。口煩く、煙草が嫌い。

大川 篤(おおかわ・ゆたか)

二十歳過ぎ。大川酒店の長男で、毎日店を手伝わされている。昔から気の荒い乱暴者で、村の鼻つまみ者。配達のバイクを運転するのまで荒い。いつも不平不満でいっぱいで、恨みがましい目をしている。乱暴で粋がってみせているが、根は小心者。

大川 豊(おおかわ・ゆたか)

大川酒店の次男。清水恵と同い歳の高一。

大川 瑞恵(おおかわ・みずえ)

富雄の娘。


大川 長太郎(おおかわ・ちょうたろう)

富雄の従兄弟。

大川 茂(おおかわ・しげる)

33歳。長太郎の息子。溝辺町に勤めていた。34を目前にしての急逝。

大川義五郎(→「山入」へ)


松村 安造(まつむら・やすぞう)

大川酒店で配達や集金を行っている。大川富雄よりも年上だが、甲斐性は今一つで、根っからの小心者。大川から見ると、無能で、受け答え一つからしゃっきりとしなくて、常に大川を苛立たせる。もともと覇気というものを持ち合わせておらず、小心で真面目なのだけが取り柄のような男。

松村 康代(まつむら・やすよ)

安造の娘。20の半ば。はきはきした、しっかり者のいい娘。上外場に住む。

 

 

清水園芸

  

清水 雅司(しみず・まさじ)

清水園芸を営む。造園も行うし、苗木の卸も行う。還暦すぎで、胡麻塩頭。家は外場にあるものの、生活の場は溝辺町にあって、さほど縁を持たない。

清水 隆司(しみず・りゅうじ)

41歳。清水園芸の長男。溝辺町の会計事務所に勤めていた。
家は外場の集落を過ぎ、上外場に入るちょうど境目にある。

清水 裕美(しみず・ゆみ)

清水隆司の妻で、祐の母。

清水 祐(しみず・ゆう)

高校生。隆司の息子。

 

 

田代書店

  

田代 正紀(たしろ・まさき)

「田代書店」経営。静信の二級上で、小学校から高校まで同じ学校に通った。「クレオール」の常連。

田代 留美(たしろ・るみ)

正紀の妻。自宅は下外場。

田代 孝(たしろ・たかし)

田代書店の息子。10歳。

 

 

世話役

  

田茂 定一(たも・さだいち)

実質上の村長。区長会会長を務める外場の重鎮。寺にあっては檀家総代会の会長を務め、外場JAの理事も務める。同時に神社の氏子総代を務めて宮司を束ねる。
小学校の校長を勤め上げて定年退職した。兼業農家で、農地は家族の食い扶持ぶんを、ほとんど道楽のようにして妻のキヨと作っているが、本来、田茂は外場でも一、二を争う富農だった。余剰の山や田圃を人に貸し出しているばかりでなく、外場の商店街にもかなりの数の貸店舗や貸家を持っており、溝辺町にもいくつかアパートやビルを持っている。

田茂 キヨ(たも・きよ)

定一の妻。

田茂 定文(たも・さだふみ)

定一の息子。外場の中学校で教師をしている。

田茂 定次(たも・さだじ)

定一の弟で、悠子の父。

田茂 聡美(たも・さとみ)

定次の妻で、悠子の母。

田茂 悠子(たも・ゆうこ)

上外場のスーパー「たも」を営む。村に「田茂」の姓は多く、上外場の田茂も一軒ではないが、「上外場の田茂」を名乗るのは、この一軒だけ。

田茂 広也(たも・ひろや)

定一の下の孫。高校二年生。17歳。門前在住。溌剌とした礼儀正しい少年。陸上部に在籍する、心身共に健康な子供だった。


小池 昌治(こいけ・まさはる)

もう長いこと中外場の弔組世話役を務めている。痩躯ながら頑健な身体つきで、血色もよく、歳よりもかなり若く見える。文字通り、かくしゃくとした老人。

小池 保雄(こいけ・やすお)

昌治の息子。溝辺町のNTTに勤めていた。

小池 董子(こいけ・とうこ)

昌治の孫。中三で、田中かおりの同級生。

小池 郁夫(こいけ・いくお)

董子の弟。


安森 誠一郎(安森・せいいちろう)

中外場の村方世話役。屋号は三安。五座十三番の伝承者の一人。

安森 日向子(やすもり・ひなこ)

三安の嫁。姑の米子と折り合いが悪い。何かあると黙ってない性分。今ふうのぱあっとした子。その外見のわりに、意外に堅いのだが、髪が赤く、身なりも派手なので、誤解されやすい。
田茂由紀子と親しい。

安森 弘二(やすもり・こうじ)

日向子の夫。次男。いつも母の肩を持つ。頼りなげで、痩せている。


松尾 誠二(まつお・せいじ)

下外場の班長で、弔組世話役。やっと初老にさしかかった頃。

松尾 有香子(まつお・ゆかこ)

誠二の妻。


竹村 吾平(たけむら・ごへい)

寺の檀家。門前の次の弔組世話役。


村迫宗秀(→「学生達」へ)

安森徳次郎(→「安森工業」へ)

大川富雄(→「大川酒店」へ)

 

 

主要公共施設

  

高見

駐在所のお巡りさん。子供が二人いる。

高見 秀子(たかみ・ひでこ)

高見の妻。


石田

外場における、役場のたった一人の保険係。専門の知識も何もない完全な事務屋。几帳面な性格。

石田 千枝(いしだ・ちえ)

石田の妻


小川

役場の次長

大沢

郵便局長

長田

郵便局長代行


柚木(ゆずき)

図書館司書。村外から通ってきていた。温厚な老人で、内向的な性格のわりに子供好きなので有名だった。子供の興味に気を配り、よく面倒を見て話し相手にもなるので、「図書館のおじさん」を慕っている子供も多い。起きあがってからは、小さい子供ばかり襲いたがるという性癖があることが判明した。

寿美江

保育園の事務をやっている。


田中良和【役場】(→「学生達」へ)

前田勇【JA】(→「ちぐさ」へ)

清水武雄【JA】(→「学生達」へ)

 

 

山入

  

村迫 秀正(むらさこ・ひでまさ)

山入に住む老人。ふきの実兄。75歳。車を持っている。

村迫 三重子(むらさこ・みえこ)

秀正の妻。68歳。


大川 義五郎(おおかわ・ぎごろう)

77歳。大川富雄の伯父。愚痴や小言ばかり言うので、富雄にも篤にも嫌われている。長く高血圧で、薬を処方されていた。スクーターしか運転できない。

 

 

門前

 

松尾 高志(まつお・たかし)

門前の境松(門前と上外場の境)に住む。

松尾 康志(まつお・やすし)

高志の父。律儀。

松尾 静(まつお・しずか)

高志の娘。11歳。どことなく荒んだ風情のある子。

松尾 潤(まつお・じゅん)

静の弟。起きあがらず。


千代

石段下の雑貨屋。寡黙で表情に乏しい老女。お礼奉行と言って、毎朝、山門前から石段下までを掃除して、朝の勤行に参加してから帰って行く。

竹村 美智夫(たけむら・みちお)

門前在住。

 

 

上外場

  

後藤田 久美(ごとうだ・くみ)

郵便局の近くの後藤田衣料品店を営む。響子の母。

後藤田 響子(ごとうだ・きょうこ)

久美の娘。もう40になる寡婦。


行田 悦子(ぎょうだ・えつこ)

上外場に住む。汚染されるが、輸血でやや長持ち。

行田 文吾(ぎょうだ・ぶんご)

悦子の夫。


支倉 糸子(はせくら・いとこ)

上外場に住む独居老人。朝の勤行にもしばしばやって来る。昔、嫁と大喧嘩して、息子夫婦は家を出、それきり絶縁状態。少し偏屈で、あまり親しい人間もいなかった。

竹村 ムネ(たけむら・むね)

兼正の遠縁にあたる老婆。広兼の木工所は随分前に一人残って閉めた。

田村 弘岳(たむら・ひろたけ)

国広律子の家の隣に住む独居老人。村には残り少ない木工所で働いており、腰部脊椎症でしばしば病院にもやって来る。

広沢 隆文(ひろさわ・たかふみ)

上外場の老人。妻と二人、林業で食っていたが、山に入れなくなり、日中の役場の留守を預かるようになった。木工所を持っているらしい。

篠田

母娘。

 

 

中外場

  

広沢 高俊(ひろさわ・たかとし)

28歳。檀家ではない。母は起きあがらなかった。

広沢 豊子(ひろさわ・とよこ)

中外場在住。広沢高俊の母。


三村 安美(みむら・やすみ)

中外場在住の若い女。一家五人で、老人が未だに山に入っており、山入の下の山を持っている。安美だけが起きあがり、山入から兼正に移り住んだ。

田茂 由紀子(たも・ゆきこ)

中外場に二軒ある田茂のうちの一軒で、三安の向かいにある。嫁が日向子と親しかった。

佐川

 

 

下外場

  

本橋 鶴子(もとはし・つるこ)

下外場に住む独居老人。

太田 道代(おおた・みちよ)

清水寛子の隣に住む。事態が深刻化すると、家に守り札を貼ったり庭に蓬を植えたりしていた。

山崎 和歌(やまざき・わか)

小柄な中年の女性。息子と、清水祐と同級生だった娘がいる。

 

 

外場

  

加藤 義秀(かとう・よしひで)

外場に住む。

加藤 澄江(かとう・すみえ)

義秀の妻


太田 健治(おおた・けんじ)

53歳。高校教師。

太田 剛造(おおた・ごうぞう)

健治の父。


高島 靖夫(たかしま・やすお)

既婚。もともと仕事の続かないタイプ。

佐伯 明(さえき・あきら)

外場に住む村外通勤者。檀家ではない。

滝 重造(たき・じゅうぞう)

外場のごたごたと人家が集まったあたりに家がある。加藤ゆきえと同級生で、親交がある。

竹村 昭子(たけむら・あきこ)

外場に住む。

竹村 源一(たけむら・げんいち)

外場の商店街で金物屋を営む。13年前妻を亡くしている。

 

 

水口

  

田丸 美津江(たまる・みつえ)

水口の下の方に住む老婆。

 

 

その他

  

猪田 又三郎(いのだ・またさぶろう)

既婚。未だ現役で山に入っていたが、野犬にかまれて大怪我したことも。村道の先が持ち山だった。

前原 セツ(まえはら・せつ)

橋本病。狭心症の気がある。林道一帯の山持ち。

安森 みすず(やすもり・みすず)

山入一帯の山持ちだったが、夫が死んだ時に、かなり物納した。

広沢 麻由美(ひろさわ・まゆみ)

下外場の大川家から広沢家(通称小広)に嫁いだ。以前は溝辺町の信用金庫に勤めていたが、結婚してからは、商店街の一番上にあるスーパー「たも」でレジ係をしている。三世代の同居。子供はまだいない。

富幸(とみこう)

荒物屋。

 

 

 

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