その他の小野不由美作品

 

 

 

緑の我が家

 ホラー。一人暮らしだと怖さの増す設計になっている。「ゴースト・ハント」と同じく、「怪奇現象だと思っていたものが実はそうではなくて、あまり気にとめていなかったものが実は怪奇現象だった」というパターンを踏襲している。なかなか面白かったが、一人で夜にはあまり読み返したくない作品である。

 

過ぎる17の春

 桃源郷のようなところで暮らしている二人の親子は、仙人のように見えた。しかし、むろんそんなことはなく、二人とも、どこまでも人間でしかなかったわけである。このあたりの描写には、どこか既視感を感じてしまうのだが…うう、現実はなんとも味気なくてつまらない。だから今回、理想に土足で踏み込まれたような後味の悪さが残る……小野不由美作品は、悲しいまでに現実的である。そのくせ、幽霊だけはちゃんと出てきたりする。

 少々感情移入しづらい箇所もあり、他の作品に比べると今一つという感じがする。つまらないとまでは言えないが、面白いとも言えない。ちなみに、イラストもあまり好みではない。

 

屍鬼 

 登場人物が多く、同姓の人物も結構いるので、名前を覚えるのが大変だが、それはごく些細なことで、とにかく、ぐんぐん引き込まれる。凄まじい吸引力で、目が離せない。
 次々と死人の出る描写がうまくて、静かなる恐怖が。また、死者だけでなく、得体の知れない様子が次々と起こっていく様子も、さらなる恐怖を煽る。
 しかし、主要登場人物にも魔の手が及び、事態がいよいよ本格化すると、逆に恐怖は薄らいでいく。死が続きすぎて驚かなくなったこともあるし、何より、相手の正体がはっきりしたことで、得体のしれないものへの恐怖がなくなったからだろう。
 最後の方は、展開がやや急すぎるような気もしたが、それでも恐怖は衰えず。住民が狂気に支配されていく様に、それまでとは別種の狂気を感じる。

 また、あれだけ大勢の登場人物―殆どは脇役であるにも関わらず、きちんと個性がある。もちろん、敵にも。相手のリーダーにも驚いたし、辰巳のイメージは東亰異聞の彼が思い出される。彼らは、本当にこちらの背筋をゾクゾクさせてくれる。
 とにかく、怖い話だった。そして、面白かった。

#それはそうと、滅亡の一因は、敏夫の隠蔽によるところ大だと思う。

東亰異聞

 ミステリーとホラーの混ざった作品で、時代背景もあり、不思議な雰囲気を持っている。
 ミステリーとしては、犯人の動機がちょっと他に類を見ない。似たようなものもないではないが、ここまで極端なのは見たことがない。これには驚かされた。
 登場人物にも存在感があり、特に「彼」が正体を現すところは圧巻。まるで夜神月(=「デスノート」登場人物)の如しである。
 ちなみに、特に印象に残った場面は「百鬼夜行」。迫力十分で、まるで目の前に迫ってくるかのようだった。

黒祠の島

 閉鎖空間での猟奇殺人、という古典的な設定。主人公は、宗教等に関する知識だけで四面楚歌の中犯人探しをしなければならず、なかなか大変である。ここまではわりとよくある設定だが、最後、ある殺人犯を意図的に見逃し、結果的に村人と同じ態度を示すことになった、というのは珍しいかもしれない。(ホラーならよくあるが)

#あと、ことの真相については、「よく長期連載作品などで、死んだキャラを生き返らせるのによく使われるなあ」という感想を持った。

 

 

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