魔道士
魔道士の本来の目的は、「何か」の探求。どこかの塔や地下にでも閉じこもり、ひたすらねちねちと魔道の文献研究に明け暮れる、というのが、本来魔道士協会に属する者のつとめ。
魔道士というのは、一旦研究に没入すると、どうにも視野が狭くなる。世間では大きな事件が起ころうと、他人がどんな研究をしていようとお構いなし。世間で起きる様々な事件に、魔道士協会の対応が、どうしても遅れがちになるのには、そうしたことが大きな要因であると思われる。
魔道士というのは、大別して二種類に分けられる。すなわち、研究タイプと実践タイプ。
<実践タイプ>
リナ=インバースのように、攻撃等の呪文に魅せられた人間は、それの実践、実験のために、流れのなんでも屋のような生活を送る、というケースが多い。
<研究タイプ>
ひとつところに引きこもり、文献あさりと地道な実験の積み重ねに日々を送る、というパターンがほとんど。故に、協会の固定メンバーの主力はこのタイプ。魔道の研究に日々没頭し、世間でのことを『俗事』のひとことで片付けている場合も多い。リナ曰く、研究バカ。
【様々な魔道士】
<宮廷魔道士>
宮廷魔道士というと、すごい攻撃魔法とかが使えるのではないか、というイメージが世間一般ではあるようだが、実のところはさにあらず。宮廷魔道士というのは、見聞の広さを見込まれて、知恵袋、ご意見係として雇われている者が圧倒的に多い。実際に使える魔法といえば、「明り」か「治癒」くらい―というのもザラにいる。むろん、攻撃魔法の能力を見込まれて宮廷魔道士になった者もいるが。
<呪術師>
魔道士の中でも、呪術と呼ばれる、遅効性の儀式魔法を研究している者たちの呼称。効果の発動が遅く、様々な道具やら何やらが必要とされ、準備や儀式が地味なことから、暗いイメージがついてまわっているようだ。しかし派手さはないぶん、大規模な影響、または長期にわたる干渉を、この呪術は可能にする。
魔道士全体の中で、呪術師の人口というのは決して高くない。一般の人からは白い目を向けられがちな肩書きゆえ、自分は呪術師でござい、と公言するような奴もいない。
知識と力のある呪術師は、他の呪術師がかけた呪術を打ち消す方法を持っていることも多い。
【魔道士の家】
自分の研究を盗まれないよう、塔や洞窟などに引きこもり、ねちねち研究に励む魔道士、というのはそう珍しい存在でもないのだが、大抵このような場合、近くの村や町などでは、あらぬ噂が立ったりするものである。
人里離れた場所で研究を続けている魔道士、というのも数多くいる。
魔道士の家に隠し部屋があるのは、決して珍しいことではない。魔道士は大抵、何かの研究をしているが、他人の研究を盗んで自分のものにしてしまおう、などというたわけた魔道士も、一時は結構いた。そのため、そういったことを防ぐために、魔道士達は自分の家に隠し部屋を造り、その中でねちねちと研究にふける、などという不健康極まる構図ができあがってしまったわけである。
キメラ研究者の家には、その研究設備が置いてあることが多い。キメラづくりというのは、その性質上、どうしても広い空間が要るのだが、他の研究者もいる魔道士協会の施設内で、好き放題にスペースが取れるわけもない。それに、協会に研究施設を置いていると、同分野を研究している魔道士に、技術や理論を盗まれる、ということもままある。それで結果として、キメラ研究をしていて、なおかつ財力に多少なりとも余裕のある人間は、自宅のどこかーもっぱら邪魔にならない地下などに、それ専用の研究施設を設けているのが普通である。
魔道という分野では、薬草のたぐいも大きな位置を占め、様々な分野で必要になる。だが、それが必要になるたびに、どこに生えているかもはっきりしない薬草を探して、野山をうろつき回るのでは、不便なこときわまりない。だから、栽培できる薬草は、自宅で栽培するーということをやっている魔道士は、結構多い。採れて、余ったもののうち、保存の効くものは、魔法の道具やで売れば副収入にもなり、一石二鳥である。
【はぐれ魔道士】
魔道士が、金目当ての犯罪に走る、というケースは実は結構多い。特にありがちなのが、秘密主義で、ひとりこっそり研究しているタイプの魔道士。むろん研究分野にもよるが、たいていそういったモノには、かなりの資金が必要となる。強力なスポンサーがいるとか、自分自身がかなりの資産家でもない限り、当然起こる資金難。ある程度名前の通った魔道士ならばともかく、たいして実績のない魔道士が、個人で秘密裏にやっている研究などに、魔道士協会が援助してくれるはずもない。となれば手早く資金を得るには、スポンサー探しか犯罪行為に走るのみ。
物騒なモノを研究して資金を得ている魔道士も、掃いて捨てるほどいる。
表沙汰になることは少ないものの、魔道の研究を巡って、裏で様々な事件が起こる、などということは、実際の話、決して珍しいことではない。
食い扶持に困った流れの魔道士が、裏家業へとハマってゆくのは、わりとありがちなケースである。
【魔道士の弱点】
魔道士が、普通の戦士達に比べて有利な点は、むろん呪文の使用、というところにほかならないのだが、気配を殺して忍び寄り、後ろからいきなり口を塞がれては、どんな呪文が使えようがもはや関係ない。そうなればあとは、肉弾戦に頼るしかないのだが、世のたいがいの魔道士は、日頃呪文に頼っているせいで、そちらの方はからっきしだったりする。
魔道士は、体力がない者が多い。
【その他】
魔道士のうちにも色々とランキングがあり、「見習い」から「魔道士」に昇格するには、いくつものレポートをこなす必要がある。導師がそれを認めてはじめて、一人前の魔道士になるのだ。それから後は、何らかの成果を上げるごとに、ランクがどんどん上がっていく。ランクが上がれば協会内部での扱いと、そして、閲覧できる本の種類が違ってくる。
典型的な魔道士見習いのスタイルは、呪術紋入りの膝まで届くグレイのマント。
普通魔道士は、自分のやっている研究には徹底した秘密主義を貫く。ゆえに当然、他人の研究を目の当たりにする、などという機会は滅多にない。
初心者への魔道講義というのは、実はかなり難しい。いきなり受講者が「炎の矢」くらい使えるようになる、といったふうな教え方もできるが、もしその中に、面白半分の不心得な奴がいればおおごとである。かといって倫理面にだけ走ったら、一体何の講義なんだかわからないし、抽象的な話をすれば、ベテランには含蓄深い話でも、初心者にしてみれば、ただわけがわからず退屈なだけ。意外と大変なのである。
大きな街などでも、魔道士に対して偏見は存在している。閉鎖的な村ともなれば、それが強いのも仕方のない話。
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