スレイヤーズ関連書籍

 

『スレイヤーズ』の秘密

剣と魔法の世界研究会/

評価:E―(泥・毒)

 最初に忠告しておく。スレイヤーズファンならば、この本は読まない方が精神衛生のためだ。

 まず、研究本としてあるまじき「根本的な誤り」が多すぎる。文中で展開される様々な推論は、いずれも未熟で突っ込み所満載。「その推論過程にはちょっと無理があるんじゃないか?」「それよりもこう考えた方が説得力があるんじゃないか?」「そこにそういう論法を持ち込むのはお門違いだろう!」「その点については、既に作中で述べられていただろう!」と言いたくなるような事柄が次から次へとわいて出てきて、しまいには頭痛がすることうけあいである。他にも、「リナの髪は赤いから云々」「冥王は弱い!」などと、普通に原作を読んでいれば、絶対にしないであろうミスを犯していたりする。ここまで根本的な認識の誤りが生じるとは……著者は実は原作をまともに読んでいないのではないか?アニメをちらっと見たことがあるだけ、とか……そうでもなければ、ここまで致命的な勘違いをするはずがない。

 これだけでも読者を失望(もしくは不快、激怒)させるのには十分だが、さらに悪いことに、著者は主人公のリナ=インバースがよほど嫌いらしく、彼女がいかに性悪で精神を病んでいるか、ということを証明したくてたまらないように見える。実際、「リナ=インバース狂気の謎」と題して、一つの章をまるごとそれの証明のために割いている。ファンとして、これが面白かろうはずがないではないか。…そんなに嫌いなら、読まなければいいじゃ…あ、だからまともに読んでないのか……だったらなぜ、こんな本を書いて、あまつさえ出版までしているのだ!?

 ……とまあ、不快にさせられること請け合いの、こんな最低な本ではあるが、それでもいい所が全くないわけではない。いくつかの代表的な呪文をとりあげて、その名前がどこからとられているのか、どういう意味を持っているのか、というのを簡単に解説したところがあり、そこだけはそこそこ楽しめる。もっとも、呪文の内容に関しては、相変わらず間違いのオンパレードではあるのだが……。

#本当に、なんでこんな本出版したんだろう……?

出版/データハウス

19961030日初版発行

 

 

『スレイヤーズ』の超秘密

ファンタジーノベルズ研究会/

評価:A+(玉・ダイヤ)

 大変素晴らしい本である。数多ある研究本の中でも、これは間違いなくそのトップクラスに位置するもの。これほど良質の研究本には、まず滅多にお目にかかれるものではない。「スレイヤーズ」に関し、このような優れた研究本が出版されたことに、ファンとして、このうえない喜びを感じるものである。

 前回の研究本があまりにもひどかったので、これを買うのには躊躇したのだが、著者が違うということで、結局購入した。帯に、「新著者だからできた解明の数々!!」などと大きく書かれているのがなんだか妙におかしい。……ことさらこのような書き方をするところを見ると、よほど前作に苦情や抗議が殺到したのだろうか?

 今回は、本当に、文句のつけようがない。前半の「スレイヤーズ」内部の考察にしても、作品をきちんと深くまで読み込んであるのが伺えるし、推論の展開は理知的でユニーク(12巻の時点で「白い巨人の正体」を考察し、見事に当てたのはスゴイ!)。ファンの間で取りざたされる様々な仮説も取り入れてあり、満足のいく出来。また、文体も軽快で親しみやすく、なんとなく「こうじゃないかな〜」と思っていたことが、この語り口で述べられているのを見ると、何倍にも楽しめるのだ。もっとも、前作のフォローに少しページを費やした上に、ネタが被るのを避けたためかどうか、あまり意表をついた設問が見受けられなかったのが、少し残念といえば残念か。

 そして、特にこの本を他を圧して優れたものにしているのが、後半の「ちょっとだけ『スレイヤーズ』学!」。この章に関し、著者は始めに

「ここでの目的はただ一つ。今や国産ファンタジーの定番、セミクラシックと言ってもいいぐらいの人気長寿シリーズ『スレイヤーズ』の魅力、その秘密に「ちょっとだけ」マジメで変則的なアプローチで迫ること。純粋に『スレイヤーズ』のみ扱って内側から解説するのではなく、他の優れたエンターテイメント作品と比較することで外側から別の光をあてて、その魅力をよりクリアーに浮かびあがらせることだ。」

「ミステリー小説、クトゥルー神話、ロボットアニメ―――などとつきあわせ、『スレイヤーズ』の奥深さを確認すること。」

と述べている。

 スレイヤーズ=ミステリーということについては、私もなんとなく思っていたことだったので、こうしてきちんと形にされて嬉しかったし、その具体的な説明に「おおっ!」といたく感心もした。その他の点についても、その着眼点や奥深い考察に、思わず唸ってしまうものばかり。脱帽。

 普通の本屋では見つけるのはやや難しいかもしれないが、超大型書店やアニメイトでは、今でも時々見かけるので、入手不可能ではないだろう。探すだけの価値は十分すぎるほどにある、おすすめの逸品である。

出版/データハウス

1997627日初版発行

 

 

『スレイヤーズ』おりぢなる

神坂 一/

評価:A

 映画「RETURN」「ぐれえと」「ごうじゃす」の脚本が収録されており、ちゃんと各々についての解説(=あとがき)もある。もちろんL様も無理矢理登場。実を言うと、私はこの本を見るまで、これらの映画の脚本が神坂一とは知らなかった(気付かなかった)……。

 最初にカラーページで各作品の内容や前売り券などが紹介されているのも嬉しい。リナとナーガの声優さんからも一言ずつあるなど、シナリオ以外にも色々収録されているところがGOOD。まあ、欲を言えば、解説(あとがき)がもう少し長ければ(いつぞやの超巨大版あとがきみたいな)、とも思わないでもないが(いや、これは決してL様に取り入ろうとしているわけでは…)。まあ、なんにせよ、作者が直接手がけたものというだけで、十分手に入れるだけの価値はあると思う。(でも、発売して1,2ヶ月が経過して以後、本屋で見かけたことがないなー……)

出版/富士見書房

平成11410日初版発行

 

 

えんさいくろぺでぃあスレイヤーズ

ドラゴンマガジン編集部・編

評価:A

 本編12巻、すぺしゃる12巻、でりしゃす2巻までのデータを網羅したデータ集で、色々と大いに役に立つ。具体的な描写がなかった呪文の効果や世界地図、裏設定(これに関して、神坂一氏へのインタビューあり)なども載っており、これを読んで初めて知ることができる情報も結構多い。是非とも手に入れたい一冊。

出版/富士見書房

1998930日初版発行

 

 

ドラゴンコミックススレイヤーズ

原作・神坂一

作画・あらいずみるい

評価:A

 すぺしゃる…というよりはアニメのノリなコミック短編が5つ(うち一つは前後編に別れているが)収められている。あと、最初に4コママンガがいくつか載っていて、これも嬉しい。いずれも主役はリナ&ガウリイの二人だけで、これがなかなか新鮮。すぺしゃるにも、番外編として、こういうの登場してくれないものだろうか。それに、これらの話、アニメでも見たかったな……。

出版/角川書店

199571日初版発行

 

 

SLAYERS DX

ドラゴンマガジン編集部・編

評価:A

 なんと言っても、殆どのページがカラーで、美しいイラストが拝めるのが嬉しい。これまで白黒でしか見たことがなかったキャラも皆カラー。ページをめくるたびにリナ達のどアップがカラーで次々と現れるのには、やはり目を奪われる。

 また、本編(第一部のみ)がおとぎ話調で紹介されていたりするのも面白いし、ナーガ=グレイシア説など、見逃せない記事もある。最後に神坂一とあらいずみるいの対談も。ここで新たに発覚した事実もあり……やはりナーガ=グレイシアなのか!?と思わせる部分もある。

 もっとも、値段のわりに情報が少ないような気がして、それが少々残念ではあるのだが……。

出版/富士見書房

19951010日初版発行

 

 

 

 

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