ナーガ、無罪の謎
ナーガには、色々と謎が多い。存在自体が怪奇現象との噂も高く、ナーガに関しては、何が起きても「ナーガだからねえ…」で笑ってすませて驚かないのが通というものだ。……とはいえ、それでもやはり、気になるものは気になる。例えば、これから論じようとしている「ナーガ、無罪の謎」がそうだ。
ナーガは初登場時、かのリナ=インバースを倒すため、彼女の泊まっていた宿に火をつけて、リナの荷物もろとも灰にしていた。その際火をつけたはいいが、自分も屋根から降りられなくなり、大ヤケドを負った……というのは強く印象に残っている。…もっとも、今から思えば、この程度でナーガが大ダメージを受ける、というのは信じがたいのだが……まあ、旅の過程で人間離れしていったのだと思えばこれはわかる。
問題は、ナーガがなぜ役人につかまらずにすんでいるのか、ということである。間抜けな結末のせいで、つい忘れがちだが、あれも一応立派な放火、しかも、公衆の面前で、堂々と自白している。加えて、あのやたら目立つ容姿。……普通なら、まず間違いなく役人にとっ捕まっているところである。
だが、ナーガは、まだケガも治っていない、包帯グルグル巻きの状態のまま、リナの前に再び現れている。あちらで放火の罪がどのくらいのものかはわからないが、いくらなんでも、そんな短期間で自由になれるほど軽いものではなかろう、と思うのだが……。
そこで、ここでは、「なぜナーガはあんなに早く自由の身になれたのか」ということについて、考えてみたい。
理由を大別すると、
の二つに大きく分かれるだろう。
では、まず、無罪放免説から見てみよう。
1.実は、事前に宿屋は買い取ってあり、客もリナ一人だった。
つまり、ナーガに似合わず、周到に準備していた、という説である。宿にいた主人や客と思われる人達も、全てナーガに雇われた人達で、リナが出かけた後は、皆退避済み。これで、被害を受けたのはリナ一人。そのリナも役人に訴えなかったので、ナーガは無罪放免。ひょっとすると、役人への手回しなどもしていたかもしれない。ただ、自分でつけた火に巻かれるような人物がやる事には、到底思えないのだが……。
2.慰謝料を払い、示談になった。
捕まった時に、関係者に相場よりも多くの慰謝料を支払い、示談にしてもらった、という説である。いくら慰謝料を払っても、それだけで無罪放免にはならないのではないか、とも思えるが、リシャールの町では、タチアナ
VSマーティンのファッション対決が激化して、日常的に爆発物を仕掛け合うようになっても、それなりに長い間、慰謝料を払うことで役人に訴えられるようなことはなかった。だから、一回きりのことでもあるし、少し多めに慰謝料を払ってナーガが無罪放免になったとしても、不思議はない。ひょっとすると、ナーガが貧乏なのは、この時の支払いのせいもあるのかもしれない。これは、それなりに説得力を持つようにも思える。
では、次に、ナーガ特別釈放説を見てみよう。
3.ナーガ=グレイシアだと役人が気付いた
噂の通り、ナーガはセイルーンの王女グレイシアで、それに気付いた役人は、事が大きくなるのを恐れて(か面倒に思ってか)不問にした、という説である。なぜ役人がそんなことに気付いたのか、という疑問は残るが、あり得ない話ではないと思う。もっとも、仮定に仮定を重ねているため、やや弱いが……。
4.ナーガが偶然役人の弱みを握った
偶然役人の秘密を手に入れ、困った役人から裏取引を持ちかけられて、本人にはなんだかよくわからないままに釈放された、とする説である。例えば、宿の焼け跡から、まだ無事なリナの荷物がいくつか発見され、それを役人がネコババしたとか……。しかし、いくらなんでもそれにナーガが気付く、という偶然…あまりにもできすぎているような。ナーガだし、あり得ないとは言わないが、可能性は低いだろう。
5.役人がナーガの妙なカリスマに魅了された
ナーガの、あのよくわからないカリスマに、役人(のお偉いさん)もしくは宿屋の主人が魅了されてしまい、訴えようとはしなかった、という説である。一部の者にあがめ奉られるあの正体不明のカリスマ…あれが通用したならば、ナーガが捕まらないのも道理。普通にはないことだし、いつも通用するとは限らないが…まあ、ナーガだから、ということで……。
6.精神鑑定で不起訴処分
あちらにそういう制度があるのかどうか、わからないが……なにしろ、あんな常識はずれの格好で、高笑いなどして、おまけに自分で放った火に巻かれている人物(?)。もしもそういう制度があるなら、精神鑑定をするまでもなく責任能力なし、と判断されて、不起訴処分となる、という可能性も決して低くはない。そのような制度がなくとも、役人が関わり合いになるのを避けて釈放した、という可能性もある。その場合、このような正体不明の生き物(笑)を野放しにしておいていいのか役人が疑問に思わなかったか、という問題があるが、「自分たちの町さえ無事ならいい。これは旅の者だし、町に留めて呪われるより、いっそ、野に放した方が」と考える人もいただろうし、別の施設に押しつけたものの、そこでは高笑いのうるささに早々にナーガをつまみ出した、ということも考えられる。これはひとえに、あちらの制度と役人の責任感にかかっているが……どうなのだろう。
7.高笑いで役人達の脳ミソがマヒし、釈放された
取り調べ中も止まらないナーガの高笑いに、ジョセフィーヌさんと対面したようなダメージを受けた役人達は、マヒした脳ミソでナーガを無罪とし、釈放した、という説である。そして、「もう二度とあんな目に遭うのはごめんだ」と思った役人達は、事件をもみ消した……。ナーガの高笑いには、そこまで破壊力はなかったような気のするが、それは、聞き手が、これまた人間離れしているリナ=インバースだからで、普通の人が聞いたら、そのぐらいのダメージは受けるのではないか。ナーガだし、あり得ない話ではないと思うのだが…。
8.ナーガが「保護者の名前はリナ=インバース」と言った
ナーガの「保護者はリナ=インバース」発言を聞いた役人達は、本来ならリナに会って話を聞くべきところ、「ドラまたリナ」に恐れをなして、事件をなかったことにしてしまった、という説である。普通なら、「嘘だろう」と決めつけることもできるのだろうが、ナーガは格好・行動がアレなので、あまり関わりたくない……と思って深く追求しなかったのかもしれない。ちょっと役人が情けないような気もするが、役人というのは超常現象に弱いのだろう。破壊神にもされるようなリナ=インバースと、あのナーガが相手だから、同情の余地はないでもない。それでも、この説の信憑性がやや低いことには変わりないが……。
こうして見た感じだと、2,3,7あたりの説の可能性が高いような気がするが、なにしろ相手はナーガ、常識はずれの「スレイヤーズ」の中でも、飛び抜けてそれが目立つ存在である。一見可能性が低いと思われる説でも、決しては否定はできない。いつの日か、ナーガに関する謎が、多少なりとも解明される日が来るといいなあ、とは思うのだが……。
2004.1.15