ガウリイのカンと魔族

 

 ガウリイの野生のカンは鋭く、人間に化けた魔族をも見抜いてしまう。あのゼロスも、自分の正体を見抜かれ、かなり驚いていたほどだ。

 しかし、彼のカンは、全ての魔族において通用するのだろうか?

 確かに、少年の姿をしたフィブリゾも一目で魔族だと見抜いたようだし、サーディアンも、その姿を目にする前から人間ではないと気づいていたようだった。

 だが、カンヅェルやシェーラ、覇王などは、どうだったのだろうか?

 カンヅェルの時は、しばらく同じ王宮内で過ごしていたにも関わらず、ガウリイは何も言わなかったし、クロフェル救出の時に、その人間離れした戦い方を見て、ようやく「魔族か!?」と驚いたように叫んでいる。

 演技で驚いたふりをするような男ではないから、これはやはり、その時まで気づかなかったのだろう。ひょっとすると、「あれ?こいつ、何か変だぞ?人間らしくない」ぐらいには感じていたのかもしれないが、その時はまだ魔族との戦闘経験も多くはなく、魔族が人の姿をとることを知らなかったガウリイは、「まあ、でも、どう見ても人間の姿だし。きっと気のせいだろう」と、軽く流してしまったのではないかと思われる。

 しかし、カンヅェルの場合はそれでいいとして、問題はシェーラである。どうも、気づいているようには見えないのだが……しかし、いくらなんでも、高位のゼロスに気づいて格下のシェーラに気づかない、ということがあるだろうか。サーディアンの時にはちゃんと気づいていたガウリイだし、「格下だと気配も弱くてわからない」ということはないと思うのだが。リナも、「高位になるほど気配を隠すのもうまくなる」と言っていることだし。

 ゼロスの時も、気づいているようには見えなかったガウリイである。ラルタークの時も、おそらく気づいてはいたのだろうが……そうは見えなかったし。だから、シェーラの時も覇王の時も、「おそらくリナは気づいてるだろう」と思って、緊迫した状況ではないことだし、のほほんと、リナに言われた通りに動いていた…ということは考えられる。まあ、「見た目が女性だったので、外見にだまされて気づかなかった」とかいうことも考えられるが……。

 そういえば、獣王・海王に会ったとき、ガウリイは、「何者か想像はつく」と言ったリナに、「何者なんだ?」と聞いていたが、これは、魔族ということには気づいていて、名前を尋ねているのか、「知り合いなのか?」という意味で聞いているのか、それとも魔族ということに全く気づいていなかったのか……気になるところである。

 また、ゼロスの場合は、ガウリイのカンを侮っていたこともあり、「姿を人間に保ち、この存在感(圧迫感)さえ抑えておけば大丈夫だろう」と、正体を隠すのにそれほど熱心ではなかったのに対し、

「カンの鋭い人間もいる」という情報を得ていたシェーラ達は、正体を隠すのに気を配っていたためガウリイも気づかなかった、ということも考えられる。おそらくカンヅェルと同レベルであったサーディアンは、はなから自分の正体を隠す気などなかっただろうし。

 はたしてガウリイは、彼らの正体に気づいていたのかいないのか……彼の、とけかけたバターのようなのほほんとした顔と、クラゲのような言動からは、このように考えてみても、さっぱり読みとれないのだ。「それは秘密です」が口癖のゼロスよりも、よほど謎が多い男である。

 

 

2003.9.7

 

 

 

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