幽遊白書と
HUNTER×HUNTER

 

 

 ここでは、幽遊白書とHUNTER×HUNTERを比較し、共通点などを探ってみたい。

 まず、ストーリー。これの類似点は意外と多い。

 ハンター試験は幻海弟子入り試験になぞらえることが可能だし、天空闘技場は言うまでもなく暗黒武術大会に(天空闘技場での戦いはここまでハードではなかったが)。幻影旅団は「異質な人間の集団」ということで仙水達に、キメラアント編は異種族との関わりという点で魔界編と共通するものがある。また、ゲーム内容は全く異なるものの、「ゲームの中に入る」という点で、グリードアイランドは天沼の能力を彷彿とさせる。

 いずれも同じ作品のことながら、エピソードごとにまるで違う作品のように雰囲気が変わり、設定も豊富。内容の豊かさに、ただただ圧倒されるばかりである。

 次に、キャラクター。

ゴン=フリークスと浦飯幽助

共通点

主人公。単純一途で、感情に流されやすい。

相違点

ゴンは「無垢」という言葉が当てはまるが、幽助にその言葉は当てはまらない。

戦闘スタイル

以前は釣り竿を使っていたゴンだが、念を覚えてからは、基本的には肉弾戦。幽助もそれは同じだが、最も威力の高い必殺技が、ゴンは「グー」で「直接殴る」のに対し、幽助は「霊丸」という遠距離攻撃という点で異なっている。

主人公。容姿は平均的。感情に流されやすく、怒るほど念(霊力)が増大するという、大変わかりやすいタイプ。
ただ、やはり年齢のせいか、ゴンの方が幼い。幽助は喧嘩っ早い

キルア=ゾルディックと飛影

共通点

クール、冷血、殺し屋のイメージ(飛影は盗賊だが、殺し屋のイメージがある)、実力派

相違点

飛影は口数が少ないわりに、よく敵を挑発するが、キルアはそれほどでもない。表情の変化に乏しい飛影と違って、キルアは様々な顔を見せる。また、飛影は身長が低いが、キルアは今のところ年相応。

戦闘スタイル

両者とも素早い動きで、一撃必殺。
ただし、武器は異なり、素手・電撃・ヨーヨー使いのキルアに対し、飛影は邪眼、剣、邪王炎殺拳(炎)の使い手。

 主要キャラ四人の中で、最も強いのではないかと思わせる実力を持っている。容姿も美形の部類に入り、スマートな印象を与える。また、比較的人を斬るのに抵抗がないという点でも共通している。

なお、幽遊白書公式ガイドの、飛影に関する作者コメントには、「憎まれ口を叩く、素直じゃない子供。戦いはなるべく簡潔に、スパッと勝つ」と記されており、これはまさしくキルアにも共通している。

クラピカと蔵馬

共通点

博識、冷静、類い稀な美形、理性的、穏やか

相違点

蔵馬はどんな時でも冷静さを保つが、クラピカは、激昂し怒りに我を忘れることもしばしば。
また、クラピカは真面目であまり冗談の通じないタイプだが、蔵馬はわりと悪戯好きなところがある。

戦闘スタイル

まず相手の出方を見て、比較的慎重にことを運ぶ点が共通している。代表的な使用武器も、クラピカが鎖(その前は二刀流だったが)で蔵馬が薔薇の鞭と、似た形状。

 四人中、常に冷静で(クラピカの方は、クモが絡むとこの辺りが少々怪しくなるが)、状況分析を怠らず、的確な判断を下す。どちらも冷徹さと優しさを兼ね備えるという、複雑な内面の持ち主。ただそのせいか、クラピカには一種の危うさがある。蔵馬からは年の功か、あまりそのような感じはしないのだが、クラピカは常に追い詰められているような印象を受けてしまう。
 また、主に感情の高ぶりが引き金となり、蔵馬は妖狐に、クラピカは緋の目に「変身」する点も共通している。変身後、圧倒的な力を誇るところも。

 なお、幽遊白書公式ガイドの、蔵馬に関する作者コメントは、「普段は礼儀正しく、でも怒ると怖いという「ですね系」の典型キャラ」とのことで、これまた見事にクラピカにも当てはまる。

レオリオと桑原和馬

共通点

四人の中で一番背が高いが、三枚目で美形ではない。ムードメーカー、情に篤い、直情型、努力家

相違点

桑原は主人公の一番の親友(?)で、共に過ごした時間も長いが、HUNTER×HUNTERでその位置にあるのはキルアであって、レオリオではない。

 また、レオリオは社会の「裏」をよく知っていて交渉にも長けているが、桑原は簡単に敵の術中にはまってしまうタイプである。ややひねくれているのもレオリオの方。

戦闘スタイル

実力は四人の中で一番心許ないが、ボロボロになりながらも根性で戦う。ダメージは主人公より大きいかもしれない。今のところ、レオリオはまだそれほど厳しい状況に置かれたことはないが、そのような状況になった場合、桑原と同じように戦うことが予想される。レオリオの使用武器は、(念を使わない場合でだが)短剣。桑原は霊剣。

 大らかで面倒見がよく、決して余裕を失わないため、目立った活躍はしていないものの、精神安定剤として欠かせぬ人物。特にハンター×ハンターでは、四人の中で年長者ということもあり、その役割は大きくなっている。戦闘力は今ひとつだが、桑原は霊感、レオリオは値切りという、戦闘外で役に立つスキルを身につけており、どちらかというと戦闘外で活躍するタイプ。

 幽遊白書公式ガイドの、桑原に関する作者コメントは「ムードメーカーなので、勝敗は二の次で。刀を使うのは、幽助の霊丸と対比させてのこと」で、勝敗があまり重視されていないところなのは、レオリオと共通するものを感じる。

ビスケと幻海

共通点

主人公の師匠で、老人の部類に入る。スパルタ方式の特訓で主人公達の実力を高める。特殊能力により、若い時の姿を維持できる。

相違点

幻海は主人公の精神面においても強い影響を及ぼしたが、ビスケのそれは殆ど「念の伝授」にとどまっており、精神面への影響は小さい。

また、幻海はゲーム好きで裏表のない性格だが、ビスケにはそのような趣味はなく、猫をかぶる癖がある。

戦闘スタイル

ビスケは心源流、幻海は霊光波動拳を極めており、肉弾戦はかなりのレベル。弱点は「攻撃が軽い」ことだが、これをビスケは本来の姿に戻る事、幻海は老練な技で補っている。
様々な技を誇る幻海と違い、ビスケの能力は戦闘外のことに使われている。

 主人公の師匠だけあって、一筋縄ではいかない性格だが、ビスケはさらにそれに磨きがかかっている。

クロロ=ルシルフルと仙水忍

共通点

髪型・黒服などの外見、リーダー、独り言が多い、天才と狂気の狭間にいる

相違点

仙水には精神的脆さを感じるが、クロロには揺らぎがないように感じられる。

戦闘スタイル

クロロの能力はスキルハンター。戦いの際には小刀を使うことも。一方仙水は蹴り技主体の一見シンプルな戦い方。ただ、どちらにも共通するのは、圧倒的な強さを持つということ。

 敵集団のリーダーで、圧倒的な実力とカリスマを誇る。善悪に独自の、しかし強いこだわりを持っているふうなのが特徴。
 仙水は世界終末までの待ち時間に映画を見るなどの「静かな狂気」を感じさせたが、クロロにも似たものを感じる。

 

 流石に作者が同じだけあって、共通点は多い。主要キャラの役割を見ていると、特にそう感じる。

 ただ、HUNTER×HUNTERのキャラには揺らぎがなく「既に確立された」という雰囲気が強いため、主要キャラでさえ、どこか「駒」という印象が拭えない。
 
HUNTER×HUNTERでは、戦いの駆け引きや世界観などの描写に重点が置かれているように思う。そこでのキャラクターは全て駒。主要キャラでさえ死を免れぬかもしれぬという緊張感が、よりシビアな雰囲気を作り出している。

 全体的に見て、幽遊白書に比べ、HUNTER×HUNTERからは淡泊な印象を受ける。
 キャラクターを見ても、幽遊白書では個々のキャラの熱い描写が読者の胸を打つが、ハンター×ハンターでは、同じようにキャラの内面を描写しつつも、どこか淡泊。
 これは、主人公の性格によるところも大きいかもしれない。感情に流されやすいところは同じだが、幽助に比べ、ゴンはやや掴みづらいところがある。怒りや悲しみといった感情を持ちはするものの、それにとらわれることはなく、重さを感じさせない。それらは別なところを流れていく。このあたりは、幻影旅団とも通じるものがある。ゼパイルの言うゴンの「危うさ」というのもそういうことだろう。
 普通、読者は基本的に主人公の目を通して物事を見ることになるが、その際、当然経由される主人公の感情にこちらも影響を受けることになる。ところがゴンは非常に淡泊な印象であり、読者に与える影響は限りなく小さい。従って読者は、自分の目でのみ物語を見、捉えていくことになる。これが「ハンター×ハンター」という作品の特異な点であると思う。

 

 最後に、幽遊白書の技の数々が、念能力ではどのように解釈されるのかも考えてみたい。

霊丸

幽助

幻海

放出系

一日4発(3発)という制限も、威力を上げているのかもしれない。

霊光鏡反照

幻海

変化系?

相手のオーラをいったん自分のものに変化させる、ということを考えると変化系。幻海は色々な技を持っている。

邪王炎殺拳

飛影

変化系

妖気(オーラ)を魔界の炎に、という点から変化系。

炎殺黒龍波

飛影

変化系+放出系

幽遊白書のゲームなどすると、この技が放出系だと強く感じる。

邪眼

飛影

操作系か強化系

「操ることができる」という性能は操作系だが、「千里眼」の機能は「目の働きを強めている」と解釈できるため、強化系とも考えられる。

薔薇の鞭

蔵馬

強化系か変化系

植物の生長を促進させていると考えれば強化系となり、植物のオーラを変化させることによりその形状を変形させていると考えれば、変化系だと考えられる。

風華円舞陣

蔵馬

放出系+強化系

強化した無数の花弁を放出している、と捉えることができる。自分を中心とした一定範囲という制限があるものの、威力は低い。

霊剣

桑原

変化系

具現化系にも見えるが、剣として実体をともなっていない。また、オーラの形状を変えているだけだと考えれば、形状変化の修行をする変化系だと思われる。

次元刀

桑原

具現化系+変化系

「次元を切り裂く」という特殊効果のある剣を(半分)具現化した、と解釈できる。

爆弾(仮)

放出系+具現化系

当初は触れた所を爆発させる能力(ゲンスルーのリトルフラワーと同じ)だと思わせていたが、実は、「隠」で見えにくくした爆弾を仕掛けていた。これを無数に放出して敵を苦しめる「支配者クラス」。

筋肉操作

戸愚呂

強化系

筋肉を「強化」する。大変シンプルでわかりやすい。

禁句(タブー)

海藤

特質系

テリトリー内での暴力は無効、タブーを発したら魂を取られる。…防御を考えるなら殆ど無敵だが、攻撃には使いにくい。

シャドウ

城戸

操作系

影を踏む(触れる)事で相手の動きを封じる能力。「動きを封じる」のも操作に入るだろう。

コピー

柳沢

特質系か変化系

オーラを対象者のものに変質させることで可能なら変化系、そうでないのなら特質系。

スナイパー

刃霧

放出系

ターゲットに念模様を施し、それに向かって避けられない弾を放つという点で、オロソ兄妹・ダーツの能力と似ている(オロソ兄妹の方がハードだが)。
遠くまでオーラを飛ばしても簡単に威力が落ちないあたりが放出系。

水兵(シーマン)

御手洗

操作系+変化系

自らの血と水を材料に「水兵」を作り出す。血の量が多いほど巨大な「水兵」が作れる。変化系で「血+水」の性質を変化させ、操作系能力でこれを操る…といったところだろうか。

ゲームマスター

天沼

特質系

ゲーム内では暴力無効。海藤の「禁句」の能力と似ている。

ドクター

神谷

具現化系+放出系

病原体の虫を一斉放出する能力などがこれにあたる。手刀は強化系だろうか。

グルメ

巻原

特質系か強化系

食べたものの能力を自分のものにできる。クロロの「盗賊の極意(念を盗む)」と、食べるほどにオーラを吸収し強くなるとうキメラアントの王の能力をあわせたようなものと考えられる。

盗聴(タッピング)

室田

特質系か強化系

特質系と考えるのが自然だろうが、「耳」を強化していると考えられなくもない。

 

 前半に出てくるのは、強化系・変化系・放出系に分類される能力(技)が殆どだが、仙水編のあたりから、特質系や具現化系に分類される技が多く出てきて幅が広がった。単純な体術や霊気(妖気)量などだけでは勝負がわからなくなり、戦いの駆け引きの面白さが格段に増したと思う。

 

 

 

2007.3.1

 

 

 

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