ホムンクルスの封印
アニメでは、ホムンクルスが封印される場面が何度か出てくるが、これについて少々疑問に思ったことがある。
ホムンクルスを封印するには、まず定められた錬成陣に、対象の弱点(=元の肉体の一部)を設置する。そこに目的のホムンクルスを誘い込み、陣を発動させれば完了、というわけである。
誘い込まれたホムンクルスは、体内の紅い石を次々に吐き出した後、錬成陣が崩れないかぎり、活動停止状態になるーようである。
さて、ここで問題になるのが、グリードである。
グリードは、長い間第五研究所に封印されていた。
その封印が解かれた後、今度はダンテ邸で封印されそうになっている。その際は、体内に紅い石一つを残し、陣から出ることができたため、その場で封印されることは免れた。まあ、その後エドに倒されるわけだが……。
注目すべきは、ダンテ邸で錬成陣に触れた時、「体内の紅い石を、一つを残し、全て吐き出した」という点である。これは、ラストが封印される時も同様だった。
紅い石はホムンクルスの命の源だから、封印の際、それを吐き出すというのは理解できる。魂のないホムンクルスは、生命維持に紅い石が必要であろうから、一つだけ石が残されたというのも道理だろう。
だが、ならばなぜ、最初に封印された時に、全部(一つは残して)吐き出してしまわなかったのだろうか。グリードの置かれた状況からすると、第五研究所を脱出した後で、紅い石をあれだけ入手できたというのは考えにくい。第五研究所では、まだ石を全部は吐き出していなかったと思われるのだ。
ならば、何故なのか。また、謎と言えば、離反したグリードを殺さずに、封印するにとどめたというのも謎である。
思うにーダンテはグリードを、まだ「使える」かもしれないと思っていたのではないだろうか。そうなれば、貴重な紅い石を吐かせるのは惜しい。プライドもまだ生まれておらず、軍部を今ほど自由に掌握できなかったから、それは今より遙かに貴重だっただろう。
当時はまだ自由に出来る駒―ホムンクルスの数も少なかっただろうし、グリードはダンテが生み出した、という説もある。消すにはあまりに惜しい存在だったのだ、グリードは。グリードもそれを薄々感じ取っていたからこそ、最後に追いつめられた時、ダンテ邸へと赴いたのではなかろうか。
だが、その頃にはダンテの手駒も増え、軍部も既にダンテの掌中にあった。もう、ダンテは以前ほどグリードを必要としなくなっていたのだ。それどころか、自分に従わないグリードは、ただの邪魔者でしかなくなっていた。だから、二度目の封印は、容赦しなかった。
二度の封印の内容が違うのは、こういうことだったのではないだろうか。
もっとも、当時はダンテもまだ未熟で、ホムンクルスを完全に封印する方法を知らなかったというだけのことかもしれないが…。
2005.6.7