デスノート
アニメ各話感想(4)
page31. 移譲 |
ニアが徐々に本性を見せ始めた。 出目川が私欲に走ったため、SPK襲撃計画は失敗。しかし、原作と違ってこの時点ではL(月)の正体が相手に漏れた可能性もないのだから、ここで日本捜査本部を全員抹殺しておけば、デスノートを他人に渡したりミサに所有権を放棄させたりといった危険を冒さなくてすんだのに、なぜそうしなかったのだろうか。 相沢の離反につきあったのは模木で、伊出は静観の模様。「仲良しクラブじゃないんだ」というのは正論で、原作最終話といい、伊出はセリフは少ないが、それが正論であることは多いように思う。以前相沢と捜査したいと言ってはいたが、だからといって簡単に寝返ったりもしないところもいい。(あまり自分からは動かないタイプだという可能性もあるが) そして、ついに魅上が登場!存在感は抜群で、とてもかっこいい。声も、魅上の声はもうこれしかない、と思うほどぴったり!やはり、火口などとは格が違う。 |
page32. 選択 |
今回はまた新しい音楽やクラシック音楽がふんだんに使われており、しかもそれがデスノートに大変よく合っていた。今回だけでなく、他の場面にももっと使ってもよかったのではないだろうか。 生活風景の描写など、魅上の出番が増えた上に、音楽の影響もあって、久しぶりにゾクゾクした。原作でも魅上が出てきた時はゾクゾクしたものだが、アニメではそれが倍増。「削除」の響きも素晴らしい!最後の狂気じみた魅上も。 高田は口調のせいだろうか、原作よりもなんとなく高飛車な印象を受ける。きっと原作でも本当はこういう口調だったのだろう。あと、高田の色にはやや違和感があったのだが、それはすぐに消えた。 月とホテルでの再会。夜景に音楽がついて、随分ロマンチックな感じに。まるで恋愛ドラマのような雰囲気だ。 |
page33. 嘲笑 |
「前回のあらすじ」がこの前と同じくバロック調の音楽になっており、なかなかいい雰囲気だ。 今回は月とニアの口合戦。東京タワーの夜景を背後に対峙する月とニアは、以前都会を見下ろすビルの上から対峙していた月とLを彷彿とさせた。 多数のテレビ画面を同時に注視するニアの目は、まるで人間でないもののよう。その後、ニアと手前の恐竜が同じポーズで立っていたりするのも面白い。 そして、高田とミサの食事風景。そういえばその時期がクリスマスにあたることを思い出した。またしても恋愛ドラマのような雰囲気に。しかしこの一見のどかな雰囲気もこれでおしまいだと思うと、少し寂しい気もする。 |
page34. 虎視 |
前回のあらすじなどが、また元の雰囲気に戻ってしまった。 ホテルを転々として高田との密会を繰り返す月。ふと思ったのだが、こうして毎回ホテルをとったりなどするのに使う捜査資金はどこから出ているのだろう。夜神次長も死んでしまったし、そうたくさんは使えなくなったのではないかと思うのだが。 そして日はたち、大晦日。歌謡祭の華やかな音楽がデスノートとそぐわない…。 ジェバンニは原作同様ニアに捨て駒扱いされていて気の毒だ。ピッキングに贋作と大変有能で、日本捜査本部の誰よりも役に立つだろうに。 |
page35. 殺意 |
決戦の日は近い。原作と同じく、静かに時は過ぎていく…。 交渉でノートを「手に取ることすら遠慮」というニアは嘘つきの本領が発揮されている。 今回は主要人物三名が死亡。その中でも出番の少なかったマットは印象も薄くなり気の毒だった。ところで、この声は…フェリオの声だろうか。軽妙な調子がマットにぴったり。 震えながら月に電話する高田。しかし、月の口から出たのは指示だけ。「できるね」という言葉の裏の「できないなら用済みだ」というニュアンスがひしひしと伝わってきて、泣いている高田が原作よりももっと可哀想になった。道具に月は容赦がない。 そして、高田のもとに向かう月。偶然か、黒服が喪服のように見える。 |
page36. 1.28 |
倉庫に向かう車の中。窓の外はけぶる雨。滴り落ちる水滴が、全ての悪を洗い流す。新世界へ向けて。 嵐の前の静けさ。ゆっくりと緊張が高まる。 対面する SPKと日本捜査本部の面々。ニアは面をとって嫌らしい笑みを浮かべる。これで魅上が来なかったらニアの立場がなくなって面白かったろうに……もっともニアのことだから、たとえそうなっても捜査員達の非難など気にもとめないだろうが。 魅上の「削除」と笑いをこらえる月の声がとにかく凄かった。あの凄味。なのに何故かこちらも笑いたくなるのは何故だろう……。 ところで、デスノートには「いくら書いてもページがなくならない」という法則があるが、それを考えると、たとえニアが本物に細工をしていたとしても、成功していたかどうかは疑問である。細工したページの次にまた新たなページが追加されるのか…あるいは、細工したページもデスノートの効力を持ってしまうという可能性もあり得る。もしもそうだとしたら、月は何もしない方がよかったのではないだろうか。 |
page37. 新世界<終> |
最終回。ああ、とうとうこの時が来てしまった……。 魅上の顔が完全に常軌を逸している。そして、月の裏返った声。狂った哄笑。動揺する月は迫真に迫っていて凄味があったが嬉しくない……こういう月はあまり見たくなかった……原作でもなるべく読み飛ばしていたところだったのに。 「ジェバンニが一晩でやってくれました」というのは何度聞いても無茶苦茶だとは思うが、もしニアが魅上を操っていたとすれば、大まかな細工でいいのだから納得がいく。おまけに今回はいきなり魅上が自殺。確かに有り得ない話ではないが、唐突さは否めず、原作と同じく不審さが残る。 その後勝利宣言をするニアは、珍しく感情的に見えた。 一方月は、高笑いの後自分がキラだと宣言し、演説を始める。そう。第二部は魅上とこの演説のためにのみ存在したと言っても過言ではない。第二部に入ってからは、この場面を楽しみにずっと見続けてきたのだ。 しかし終わり方は綺麗だったので、それでもいいと思えた。 夕陽の沈みゆく世界を、一人走る月。 全てを失い、何を求め、どこを目指しているのかもわからぬままに、ただ必死に走る。走るうち、過去の情景が頭をよぎる。 かつての自分。退屈な日常。無感情な日々。 しかし、今は違う。デスノートが彼の運命を変えた。 月にとってずっと、世界は腐ったものでしかなかった。 しかし死に際し、月はようやく世界を美しいと感じることができたのだと思う。その死に顔は安らかだった。 ―「生きた」からこそそう感じられたのだ。 |
完全決着版 リライト〜幻視する神 |
待ちに待った完全決着版。死神の視点で再編集、ということだったが、リュークの独白は最初と最後にあるのみで、意外と少ない。 さて、そんな大小様々の変更の中、前半最大の変更点は、やはり月と Lの出会いだろう。新作カットの追加といっても、何度も見ているファンにしかわからないような細かい変更が各所にある…という程度だと思っていたのだが、ここまで大胆な変更を加えてくれるとは思わなかった。 #ただ、どうせなら感情面の描写をもう少し増やして欲しかったような…。 入学式とそれに続く大学生活は綺麗にカットされ、月はいきなり Lビルに呼び出されて捜査協力を依頼される、という風になっている。まるで謎の秘密結社のようなLビルの仕掛けが面白かった。ブロックの一つを押すと新たな入口が開くというのは一種のロマン。流石発明家ワタリ。(笑) 握手した後その手を拭うLも実にLらしい。月を間近で「観察」するのも。月は無理矢理平静を装っていたが、ここは苦言の一つも呈した方が自然なのではなかろうか。 あと、この時の月が真っ赤な上着というやたらと派手…もとい洒落た格好をしていたのにも驚かされた。警察官は勿論の事、普通の大学生にも見えない。「ただの真面目な優等生」を装うなら、もっと地味な格好をした方がいいのではないだろうか。 その後、このような大規模な変更があったからには、 Lの殺し方も変わる(月が直接名前を書いたりLと「キラ」の対話があったり)のではないかとちょっと期待していたのだが、流石にそんなことはなく、ほぼ従来の流れ通りに進んでいった。番組前には「月とLの感情描写に重点を置いた」などと言われていたものの、特に感情面で追加された描写もなく、むしろ感情描写は優先的に削られていたような……と、思っていたら。 最後に月が壊れた……! 今回追加された Lの葬儀。あの狂ったような哄笑は、月の中の何かが決定的に壊れたことを示していた。「僕の勝ちだ!」と迫る月。しかしそれに答える者はもはやない。月は本当に、一人きりになってしまった。新世界に、ただ独り。 #ちなみにこの時私は、「たまたま戻ってきた捜査員にこの笑い声が聞きつけられて終幕、などという情けないことにはどうかなりませんように」と祈っていた。(笑) そうして全てを切り捨てた月は、次々に人を裁いていく。 大量の屍を築きながら、無人のビルを歩く月。ナレーションがないせいか、最初アニメで見た時ほどの迫力はない気もしたが、ガラスに映った月が悪魔の笑みを浮かべているのを見てゾクリとした。 月の物語はここで終わり。リュークはデスノートにかつて記した月の名を眺めながら「あの時のお前は神なんかじゃなかった。むしろ…」と、背後を振り返り言葉を切る。この時リュークの視界に、妙に白っぽく輝く十字のようなものが見えたのだが、果たして…? 本当に、ここで終わっていたら、凄くまとまっていて幸せだったろうなあ(魅上が出ないのは残念だが)……と思った。 最初にデスノートのスペシャルと聞いた時は、第二部までの総集編に、原作の最終回を追加したものだと思っていたので、これは嬉しい誤算だった。しかし、せっかく第二部を切って第一部だけにしたのだから、月と Lにもっと焦点を当てて欲しかったような気もする。バスジャックや時計の血文字を削ったぐらいだから、ヨツバ編も思い切ってもっと削り(月がヨツバの存在に気付いてすぐ、簡単な状況説明の後火口追跡に入るとか。この時リュークは人間界にいなかったのだから、リューク視点としてもその方が自然だ)、その分を月(キラ)とLの対話にまわしてほしかった。月はあの大演説を、ニアではなくLの前ですべきだったと今でも思っているから。あと、途中に Lの映画情報があったが、できればこういうのは最初か最後にしてほしかった。せっかくの雰囲気が……!この映画の雰囲気はどうもデスノートらしくないので今ひとつ興味が持てないのだが、それでもせっかくだからどんな話なのか予想してみた。 人間に絶望して、キラの存在に希望を見出すもそれを絶たれた犯人(月と魅上を足して二で割ったような人物)が、世界浄化と銘打って致死性のウイルスをばらまくと Lに挑戦状をつきつける…ような話になるのではないか、と勝手に考える。Lを際だたせるにはやはりそれなりの犯人が必要だろうし、「デスノート」という作品と関連づけるなら、それは月に似た動機、能力の持ち主とするのが相応しかろう。また、世界の危機といった大仰な文句や映像からすると、未知の病原体などがでてくるように見える。これならミサイルと違って個人でもなんとかなりそうで(実際はそうでもないのだろうけど)、Lが色々推理する余地もありそうな気がする。まあ、デスノートだから多分このような予想は当たらないのだろうし、その方がいいのだろうが……月ファンの私としては、どうせなら月の番外編を作ってほしかったというのが本音である。 |
2007.9.3