キラという存在【総評】

夜神月魅上&火口

 

 

<目的>

【月】

 犯罪者のいない優しい人間だけの理想の新世界をつくり、
そこの神として長く君臨する

【火口】

 自己の利益(出世や金)[悪人を裁くのはカモフラージュ]

【魅上】

 悪の削除&キラの指示に従いその期待に応える

 

<動機>

【月】

退屈、正義感、使命感

【火口】

欲望

【魅上】

正義感、悪を憎む心、キラへの忠誠心

 

<手段>

【月】

【火口】

【魅上】

 

<思想>

【月】

「世の中腐ってる。腐ってる奴は死んだ方がいい。」

 自分がやっていることが(一般的な)悪だということはわかっているが、自分が犠牲になってでも世の中を変える。それがキラの選んだ真の正義。
 正義も悪も結果が全て。キラが捕まればキラは悪。キラが世界を支配すればキラは正義。


「い いや
やめちゃ駄目だ…精神や命を犠牲にしてでも、
誰かがやらなくてはいけないんだ!このままじゃいけないんだ。

 たとえばこのノートを誰かに渡してできる奴がいるか?
そんな凄い奴いるわけない…

 そうとも…僕にならできる……いや…僕にしかできないんだ。
 やろう!デスノートで世の中を変えてやる」

「僕が認めた真面目で心の優しい人間だけの世界をつくる」

「そして僕は新世界の神となる」

「これから世界はどんどん加速しキラに傾いていく。必ずキラが正義になる」

「僕はキラ。そして新世界の神だ。
 今の世界ではキラが法であり、キラが秩序を守っている。
これは事実。もはやキラは正義。世界の人間の希望」

「まだ世の中は腐っている。腐った人間が多すぎる。
 …ならばなくさなければならない。

 人間は幸せになる事を追求し、幸せになる権利がある。
 しかし一部の腐った者の為に、不意に、いとも簡単にそれが途絶える。

 …事故じゃない。腐った人間が生きている事による必然。

 僕がノートを手にした時、いやその前から…
世の中は堕ちる所まで堕ち、人間は腐る所まで腐っていた。

 突き詰めれば人が幸せになるのに害のある者かない者か…
生きるに値する者かしない者か…

 悪は悪しか生まない。
 意地の悪い人間が悪事を行い、世にはびこるならば、弱い人間は
それを倣い自分も腐っていき、いつかはそれが正しいと自分を正当化する。

 悪は…腐った者は…なくすしかない。

 始めから救いのないような悪には死しかないだろう。
 しかし腐った人間=死ではない。

 よって、こういう世の中を創ってきた悪の根源からメスを入れていく。

 悪い人間は裁かれる……人に害を与える人間も裁かれる。
 それだけで人間の意識は変わってくる。人として正しい生き方に気づき始める。

 幸せになる権利。それは皆に平等にある。いや、なくてはならない。
 それは他の人間を攻撃したり陥れたり、ましてや殺す事で得るものではない。
 互いの幸せの邪魔をする事なく互いの権利を尊重し、
個々の幸せを求めていくのが人間同士のあるべき掟。

 世の中が変わってくれば人間も変わってくる…優しくなれる…。

 それでも変わらず悪事をはたらく者は人間失格。

 本来人間は地球上で一番優れた生物として進化をしていかなければならない。
 …だが、退化していたんだ……。

 腐った世の中…政治…司法…教育…世の中を正していける者がいたか?
 しかし誰かがやらなければならない。

 ノートを手にした時思った。僕がやるしかない。いや…僕にしかできない。
 人を殺すのが犯罪なんて事はわかっている。
 しかしもう、それでしか正せない。いつかそれは認められ、正義の行いとなる。

 僕がキラとしてやるしかない。これは僕に与えられた使命。
 自分はこの腐った世の中を革め真の平和・理想の世界を創生するため選ばれた人間。

 このノートで…他の者にできたか?ここまでやれたか?
 この先できるか?ノートひとつで世界を…人間を正しい方向へ導けるか?

 私利私欲の為にしか使えない、自分の為にしか使えない、
馬鹿な器の小さな人間しかいないじゃないか。

 僕は自分の利益など一度も考えた事はない。
 弱者に自分の思想を植えつけ金儲けをしている悪党とは全く違う。
そういう悪党こそ世の中の敵なんだ。

 そうさ。僕にしかできない…新世界を創れるのは……その頂点に
立ち、常に正しく導けるのは、僕しかいない…」

「おまえにだってわかっているはずだ。
 人間には明らかに死んだ方がいい人間がいる。
 害虫は殺せるのに、何故害のある人間を殺すのを悪とする」

「お前が今目の前にしているのはキラだが、新世界の神だ」

【火口】

 社会的地位を手にした上での金にこそ最も価値がある

【魅上】

「削除」

 世の中は全て正義と悪に二分できる。

 被害者を救うには加害者は削除されるしかない。悪は削除されればいい。
 悪いことをすれば報いがある。天罰は下らなくてはならない。よって、天罰の下らない者がいれば誰かがその悪に天罰を下さなくてはならない。悪を裁くことこそが正義。

 悪を裁くキラは神。自分はその神に認められキラの法として選ばれた人間。そのことに大きな誇りを持つ。

 

<基本方針>

【月】


 罪を受けて当然な悪人を心臓麻痺で殺していき、世の中に正義の裁きを下す者がいるということを知らしめる。
 また、悪人が心臓麻痺で死んでいく裏で、道徳のない人間、人に迷惑をかける人間を病死や事故死で少しずつ消していく。

 キラだけではなく周りの人間に自分の悪事を見られそれをキラに告げられる事を怖れ、皆が人に対する姿勢・行いを正し始める。衝動的な犯罪や殺人はなくなりはしないが、計画犯罪や人を苦しめ死に追いやる様な事をする人間はいなくなる。
 誰も悪いことができなくなり、確実に世界は良い方向に進んでいく。

 理想の世界…キラが全ての者に認められ神となる。

[備考]

 ある程度支持者が増えたら、目的のためいかに民衆の力を利用するかが重要になってくる。

 ―キラの支持(こえ)を世間に。

 テレビを使い、キラの思想・教えを聞かせる。それでキラを支持する者は更に増え、キラの思い通りに人は動く。


「世界中がキラを認め8割…いや7割の人間がキラを支持すれば」

[出目川を通しキラが最初に人々に呼びかけたメッセージ]
「世界の殆どがキラを追わないと宣言し、宣言しない国も
口を閉ざしている今、世界の法・秩序はキラであります。

 世間ではまだキラは正しいとか正しくないとか
そんな議論を戦わせている者もいる様ではありますが……
 そういった議論はどんどんして頂いて構わない…いやするべきだ。
 もしそれでキラを否定する結論が世論の大半を占めればキラは自ら消滅いたします。

 しかし、キラが認められている現在、キラを追う事、キラを
捕まえようとする事は許し難い行為であり、犯罪であるとすら言えます。
 警察、一般市民、犯罪者、それが誰であろうと見つけたら
さくら
TVに告発して下さい。

 さくらTVはキラに守られています。私やこの報道を止めようとする行為も同罪なのです。

 キラを支持する皆さん、力を合わせ、世の中の隅々まで目を光らせて下さい。

 また犯罪者を見つけたら、すぐにこのさくらTV、出目川に伝えて
下さい。私は正義のために自分の持つ技術と人材、同胞と共に調べ上げます。
 そして最終的にキラ…神が裏を取った上で、確実に犯罪者を裁きます」
[高田の意見表明(=月の考え?)]

「義務教育の段階でキラの存在、キラの考えを正しいものとしてしっかりと子供達に教えていく事が大切だと私は考えー」


【火口】


【魅上】

「神の召すままに」
キラの胸中を察しキラの期待に応えること。

「考える必要はない…神は絶対…私は神の召すままに…」

 

<能力>

【月】

 容姿、頭脳、運動神経などあらゆる面で完璧。
 発想も行動も大胆不敵の一言に尽きる。
 手先は器用で口もうまく、演技力も抜群。証拠隠滅能力も完璧。
 また、単に頭の回転が速いというにとどまらず、人間社会への洞察や、自分を客観視することにも長けており、何事にもそつがない。

 性格は潔癖でプライドが高く、幼稚で負けず嫌い。
 並はずれたカリスマを有しており、そのたたずまいは人をひきつけずにはおれない。


【火口】

 一人では動けない「馬鹿で腰抜け」。
 人を馬鹿にし、上手く使う事もできない。性格は卑劣で最低。


【魅上】

 頭の良さはかなりのもので、運も持っている。
 キラの考えを理解して忠実に動ける、月にとって「使える」人間。キラの指示なしに裁きをする度量も。
 しかし性格は病的なまでに神経質で、バランス感覚に欠ける。
 その崇拝心、使命感、自己における完璧を求める気持ちは過剰なほどで、特にキラへの忠誠心は狂信者の域に達している。

 

<裁きの基準>

【月】

 殺意のなかった者、誤って人を殺してしまった者、情状酌量の
余地のある者に対しては極力裁きを下していない。

 例えば誤って車で人をはね、死なせてしまった者。かなり悪質な違反でもしていない限り、事故を起こした者を裁いていない。
 それどころか、殺人を犯した者に対して殺すだけの理由があった、殺された人間の方が悪だとキラ自身が判断すれば裁かない。


【火口】

 殺人を犯し報道された者を片っ端から裁いており、人間らしい感情が感じられない。


【魅上】

 罪を許さない。ただそれだけ。
 悪意なしに犯罪を犯してしまった者へも裁きを行い、理想でしか有り得ない世界を無理矢理創ろうと現実に行動している。

[高田を通しての意見表明:魅上]

「キラはどんな小さな犯罪も許しません。
 キラはそれが今の法で犯罪と認められていなくとも、
卑劣かつ愚かに人を傷つける人間を許しません。
 今後裁かれる対象は、今生きる全ての人間とします」

「過去に私を通し皆様にお伝えした、そしてこれからお伝えする
キラの言葉は、全て世界の法となります」

「その存在が害であると判断した者のみならず、能力ある人間が
その能力を社会貢献に生かさず無駄に生きる事を許しません」

「キラは前科であろうと、その罪によってはその人間を許しません」

 

<ノートの使い方>

【月】

 1Pあたり 縦38行、横5人→190 
 あらゆる言語(漢字、英字、ハングル文字、アラビア文字等)の名前の犯罪者を偏りなく裁いている。

 最初の一週間で、警察が認知しているだけで52人殺害しており、
Lとの対決の過程で、一時間に一人ずつ、一日24人殺してみせたことも。
 よくノートを切り取ったり、特殊な殺し方をしたりと様々な使い方をしている。

【火口】

 1行につき3〜4人。(規則性がない)

 最初に月が手にしたノート。書かれている通りの使い方しかしておらず、切り取って使うなど思いもよらない。

【魅上】

 Pあたり 縦42行、横6人→252

 一日1Pぎっしり(252)、信じられない程のペースで裁きを行っている。
 実際に裁きの対象になっているのは殆ど日本人。日本の検事だからだろうか。

 使っているのは、最初にミサが手にしていたノート。


注:火口は月のノートを使っていたが、見たところ、縦
24行ある。
  月が使っていた時は、縦
38行だったはず。
  ページのなくならないデスノートのこと、使用者に合わせて行数が変化するのかもしれない。

 

<隠し場所>

【月】

 自室の机の引き出し(二重底)。
正規の手続きで開けないと、ガソリンに引火して燃える仕掛け

【火口】

 自宅に電波を遮断した地下室を造り、そこに隠した。

【魅上】

 銀行の貸金庫

 

<対策(月)>

【保身】

A:デスノートを隠す(page.4 電流)
B:部屋に誰かが入ってないか調べる(page.5&page.16-17)
C: 監視カメラ対策とアリバイ作り

D: デスノート放棄、嘘ルールの創設

【新世界創世】

E: リンド・L・テイラー殺害

F: ミサ利用

L抹殺】

G: 刑務所内の人間を一時間おきに始末し、捜査本部の内部分裂を狙う

H: FBI捜査官及び南空ナオミ殺害

I: わざとミサを窮地に追いやりレムを動かす

 

<キラの功罪>

―キラが現れ6年。

 

 ここではキラという存在、そして真のキラである「夜神月」についてより深く考察するために、魅上や火口についても取り上げた。他のキラと比較することで、より「夜神月」の特殊性が際だつと考えたからだ。
 なお、ミサを比較対象としていないのは、彼女が恋愛感情でのみ動き、自分の意思で動いているとは言えない部分があるからである。この点は魅上も同様だが、魅上であれば、月がいなくとも、同じようなノートの使い方をしたと考えられる。また、月は誰にも恋愛感情を抱いていないので、恋愛感情でのみ動くミサは、比較対象としてあまり適当ではない。故に、ここではミサを取り上げていない。

 「夜神月」を考察するのに適した「キラ」は、魅上と火口の二人。
 特に魅上は、一見月との共通点も多いため、その違いが際だつ。

 では、一人ずつ見てみよう。

 まず火口だが、これは典型的な小悪党として描かれている。
 以前月は、大人がデスノートを持ったら自分の欲のためー出世や金のために使うと推理してみせたが、この火口はまさにそれ。
 ノートを持たなければ、火口も「やや道徳に欠ける人間」ですんでいただろうが、ノートを持ったことで、小悪党へと「進化」した。

 このような「凡人」を見ると、月や魅上の「新世界創世」という目標がより際だつ。実際、レムも火口を見たことで、月への評価を高めた。これも月の狙いだったのだとすれば、実に怖ろしい。

 次に魅上だが、彼は、一言で言えば、キラ教の狂信者である。
 キラを崇拝し、キラに忠実に従う。

 魅上の悪を憎む心は月以上で、「人間かくあるべき」という理想が非常に強く、それに沿わないものは全て削除されるべきだという考えを持っている。理想に沿わない人間がいることを認められないのだ。
 「削除」という考えに囚われすぎては何も生み出せはしないのに、魅上はそれに気付いていない。
 だから魅上は、これまでずっとその考え・行動が報われずに鬱屈した思いを抱えて過ごしてきた。

 しかし「キラ」が現れたことで全てが変わった。

 彼は「認められるために」動いている。自分の正当性を証明してくれる誰かに。それが「キラ」だったのだ。
 だからこそ、自分を認めてもらえなくなると、神(キラ)をも否定したのだろう。

 魅上は神が欲しかった。誰よりもその気持ちは強かったが、自分が神になりたいとは思っていなかった。
 もちろん、「キラ」が存在せず、魅上が最初にノートを拾ったとしても、犯罪者裁きは行われただろう。しかしそれはおそらく、たまたま魅上の目にとまった者だけ。積極的に犯罪者裁きを行い新世界を創ろうとまでは思うまい。

 メロ風に言うならば、魅上は決して「一番」にはなれない。なりたいとも思わない。
 魅上はキラの「代理人」であって「キラ」ではない。
 もしも月の消息が途絶えたとしても、彼は唯一無二の「キラ」ではなく、あくまでも「キラの代理人」として振舞おうとするだろう。
 それがキラ信者、魅上という男である。

 だが、月は違う。

 月は神を欲してはいない。自分が神になることを欲したのだ。

 この気概、この自己への絶対の自信こそが、月と魅上との決定的な違いである。

 自信は余裕を生み、余裕は視野を広げる。

 月は悪を憎むが、それに囚われることはない。

 月は人間がどういう生き物なのかよく理解しており、理想通りに振る舞える人間が少ないこともまた知っている。「キラ」なき後の世界を見たら魅上はきっと失望するだろうが、月は別段不思議には思うまい。人間がそういう生き物だと知っているから。
 人は良くも悪くも変わるもの。だからこそ「キラ」が導く必要があるのだと。

 ありのままの「人間」を認め、受け入れるだけの度量が月にはある。

 月は良くも悪くも「人間」をよく理解しており、バランス感覚に長け、世渡り上手。一方魅上は「理想」こそ高けれど「人間」を理解してはおらず、バランス感覚に欠ける。当然、世渡りも下手。

 世界を統治するのに、この「バランス感覚」は大変重要なものだ。

 例えば、火口がキラとなるまで、キラは政界や企業の汚職事件には手を伸ばしていなかったが、それは月がそこに手を出すことの影響力をよく心得ていたからだろう。汚職事件は、殺人事件などに比べれば罪は軽い部類に属するし、そこに手を伸ばすのはまだ時期尚早。それはキラの考えが世の中に浸透してから慎重に行うべきこと。戦争がなくなったのも、後に月がここらへんをうまくやったせいもあると思う。

 月は正義感とバランス感覚を兼ね備えた稀有な人物だった。魅上と比較すると、それがよくわかる。

 月と魅上は、その目的も、似ているようで違う。

 月の目標がが新世界の創世であるのに対し、魅上は悪の削除それ自体が目的。

 常に月は魅上の前を行き、魅上はその後を追う。

 誰も歩かなかったところに、月は道を創る。

 創るものと、従うもの。それが月と魅上との決定的な違い。

「誰かについていくということは、彼にはできなかった。
 誰もが彼について来るのだから」(「銀河英雄伝説」より)

という言葉が月にもよく当てはまる。

 月は人々の先頭を行く。全てにおいて、独創的だ。

 それは能力にも表れている。

 大胆不敵な発想と行動力。積極的に攻める一方で特に保身には気を遣い、攻守のバランスに優れている。

 手先は器用で口もうまく、演技力も抜群。

 特に人の性格・能力を把握し、それに基づき動いたり動かしたりするのが得意中の得意。自分の策には絶対の自信を持っており、どんなにリスクが高くともそれを実行する度胸がある。
 実際、記憶喪失中の別人ともいえる自分の行動にキラ(自分)復活を託し、レムが自己の計画通り動くことにキラ生命をかけた。そして自己の勝利を微塵も疑わなかった。

 大衆の心理を読むことにも長け、「キラ」が世間に認められるよう、十分に考慮して事に当たってもいる。

 「人」を統治しようと志すだけあって、誰よりも「人」を理解しており、洞察力もずば抜けている。

 他、魅上にも共通する性格(能力)としては、神経質で完璧主義であるという点が挙げられる。

 毎日シャーペンの芯と紙をドアにはさみ、ドアノブに細工をするという作業を、出入りのたびに繰り返し、部屋は清潔。証拠隠滅能力は完璧。魅上は言うまでもないが、これだけのことを軽くやってのける月もかなりのものだ。こういう性格でないと、犯罪者は務まらないのかもしれない。

 このように、「キラ」として最高の資質を備えているのが「夜神月」という人間なのだ。

 しかし、あらゆる面でずば抜けた才能を持つがゆえに、プライドが非常に高く、計画が失敗したり、他者から低い評価を受けたりすると逆上する。
 月は、他人は全て支配の対象か敵とみなしているから、そのようなー自分より格下の者に「完璧」を損なわれるのが我慢ならないのだろう。
 自分に逆らうものも「悪」の定義に含めているところに、その傲岸不遜さがみてとれる。

 月は常に冷静で、肉親の危篤・死でも動じることはない。

 そんな月が逆上するのは、計画を崩されたり予想外の行動を取られたりした時。つまり、敗北感を味わわされた時だ。

 Lの言っていた通り「幼稚で負けず嫌い」なのだろう。

 それは月にとって唯一の弱点。普段は自信に溢れ、余裕に満ちた態度だが、ひとたび亀裂が入ると弱い部分がある。守備力は高いがHPは低いというような。
 常に何パターンも想定して動いているが、想定外のことが起きた場合、最初の計画にこだわってしまう傾向も。

 しかし、基本的には感情を軽視し、鉄の理性で動いている。

 感情を軽視しているから、感情で動く人間(特に女性)も軽視する。

 女性は簡単に口説けるとも思っており、事実その通りになっている。恋愛感情を理解できなくても利用することはできるから、月は積極的に女性を利用している。

 だが、そんな月も、Lや、第二部で捜査本部を殺すのを躊躇していたきらいがある。無意識に情がうつっていたのだろうか。

 滅多に感情を動かされることのない月だが、感情がないわけではない。

 月にとって、他人は皆自分より遙か格下の存在にしかすぎないが、自分が目をとめるだけの価値のある相手だと判断した場合には、それなりの対応をとっている。

 キラは、自分を手こずらせた人物(南空ナオミ、L、ニア)を始末する際、相手に自分の正体を悟らせ決定的な敗北感を味わわせたいという誘惑を抑えきれない。ニアと対峙した時など、それで墓穴を掘ったようなものだ。
 なお、レイ=ペンバーはこの中に含まれないが、これは彼が月にとって重要人物でなかったから。月にとって、彼はただの駒にすぎなかった。

 ナオミはともかく、ニアなど重要人物のうち、月が是非自分の手を下したいと思っていたのはLだけだ。
 ニアの名を書くのは、別に月自身でなくともよかった。月が欲しかったのは、「ニアの死」という結果だけ。魅上に手を下させることを躊躇った様子もない。

 だがLの時は違った。L殺害を他者の手に委ねることに戸惑いを覚え、自分の手で殺せると思った時は歓喜の表情を浮かべていた。

 Lは、月が自分と同格と認めた唯一の存在。

 Lは、月にとって特別な存在だった。

 そのLが消えた時、月にとって、他者は本当に支配の対象でしかなくなってしまった。
 
Lは、月にとって、神(の視点)と人(の視点)をつなぐ存在であったのかもしれない。

 Lが死んだ時、神と人、理性と感情のバランスが崩れてしまった。

 月は「キラ」となるのに最高の資質を持っていたが、その一部をLと一緒に葬ってしまったのではないか。そんな気がする。

 

 

 

2007.5.14

 

 

 

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