キラ【page.5~page.7

〜バスジャックを利用〜

 

 

【行動】

  デスノートを利用してわざとバスジャックに巻き込まれる

“リュークのおかげで尾行者の存在に気付いた月は、尾行者の名前を知ることを計画。犯罪者を使ってデスノートの使用可能範囲のテストをした後すぐ、土曜日の朝にガールフレンドを誘ってデートを装い尾行者と共にバスに乗り込む。そのバスは、月があらかじめ犯罪者にバスジャックさせるよう仕組んでおいたもので、その特殊状況を利用して後ろの座席にいる尾行者(レイ=ペンバー)の名前を知る。”

page.5眼球―page.7標的)

 

<テスト内容>

刑務所から脱走しそこから一番近い職員用トイレで午後6時死亡

指定通り実現]

[今日の午後6時にフランスのエッフェル塔前で死ぬ
(記入したのは午後五時半、日本の刑務所にいる人間に対して)

物理的に不可能なため実現せず、6時にただ心臓麻痺
]

[刑務所の壁に(○の中に星を描いたような絵)と描き死亡

指定通り実現
]

[刑務所の壁にLそっくりの似顔絵を描く

実現せず、ただ心臓麻痺
]

[「俺はLが日本警察を疑っている事を知っている」と書く

実現せず、ただ心臓麻痺
]

[刑務所の壁に以下のように書いて死亡

「かんがえ
 ると
 いずれしけいになるか
 てまねきしているあい
 つにころされるだけだ。
 しってい
 る。おれは、キラのそんざいを。
 えものにされる」


指定通り実現
]

 

<小道具>

[メモ1]

「ユリちゃん大丈夫安心して
 犯人の隙をみて僕がピストルを持った手をおさえる
 こういう時の対処法は刑事である父に教わっている
 犯人は小柄で弱々しい 僕の方が力もある」

[メモ2(デスノートの切れ端)]

 「11時27分発
  スペースランド行き
  南自然公園前バス停」

[デスノート]

 「恐田奇一郎 事故死


  2003年12月20日土曜日


  ?園区三丁目公園東口バス停より午前11時31分発
  スペースランド行き南北バスに弾丸6発の入ったピストルを
  持って乗り込み乗客を人質に
  スペースランドの売り上げを奪おうとするが
  この世のものとは思えぬ恐ろしい幻影を見て
  それに向かって全弾を発砲
  銃弾が無くなった事と恐怖から逃走しようと
  バスから飛び降りた所で同日午前11時45分

  事故に遭い死亡。“

<ポイント>

 

<目的>

 尾行者の名前を知る

<メリット>

<デメリット>

if

【バスの座席】

 月の真後ろにレイ=ペンバー(尾行者)が座らなければ、計画は成功しなかった。尾行者であれば、月の視界に入らずしかもその行動を観察できる場所に座るであろうことを見越して、その条件を満たす場所が月の真後ろというただ一つの場所に絞られるよう工夫した。それが実現できるよう、始発のバスに乗ってもいる。

 相手が尾行の素人でない限り、バスの座席については、かなりの高確率で月の思惑通りに実現可能と確信できたと思われる。

【尾行者との接触】

 犯人には気付かれず、かつ真後ろの尾行者に気付いてもらえるようにメモ1を見せなければならない。相手は尾行してくるような人間だから、これに気付かない、ということはないとは思うが、ここで声をかけてくるかどうかはわからない。いざとなったら助力するつもりだが、あえて月と接触はしない、という選択をすることもあり得る。

 もしここでレイ=ペンバーが声をかけてこなかったらどうなっていただろうか。

 ここまで準備を整えた月が、この程度のことを予測していないはずもなく、ましてやこれであきらめるはずもない。

 このような場合、メモを見せたところで、メモの位置はそのままに後ろの相手を振り返り、「そうだ、いざという時はあなたにも協力していただけませんか?」などと問いかければ、相手もそれに応じざるを得ない。なんといっても、相手は「正義」を標榜するLの手駒、ここで協力を拒むような真似はすまい。

 もっとも、この場合、相手に身分証明書を提示させるのはやや難しくなる。自分から協力を要請した手前、「共犯者ではないか?」と身分証明書の提示を要求するのはやや不自然だからだ。しかし、おそらく月のことである。ここは得意の話術で、それを不審に思わせないようにカバーするつもりだったのではないかと思われる。

【尾行者の正体】

 「あの犯人の共犯者ではないという証拠はありますか?」ということで相手に身分証明書を提示させることに成功した月。しかし、このセリフでそうそう都合良く身分証明書が出てくるものだろうか。

 まず、計画実行以前から、月は、「警察の人間を警察が調べるはずがない」ということと、相手がそれなりに尾行ができるということから、相手の正体を探偵か、外国の警察か…とにかくこういう場合に信頼できる職業であると予測していたのだろう。

 そして、「共犯者でない証拠」などというのは普通提示できるものではない。この状況で相手を信頼させるには、その種の職業に対する信頼―つまり、肩書きを利用するしかない。だから「証拠」として身分証明書が出てくる可能性は高いといえる。

 だが、これはあくまでも、レイ=ペンバーが「月の信頼を得なければならない」と考えるという仮定の上に立ったものである。彼が「ここで月に共犯者の疑いをかけられても支障はない」と考える可能性も十分にあった。

 それに、相手が身分証明書を持ち歩いていない可能性だってある。

 それを考えれば、これの成功率はそれほど高くない。五分五分よりはまし…といった程度だろうか。

【ユリ】

 バスジャックに巻き込まれた(FBI捜査官と接触した)と警察に知られるのは好ましくないことだった。幸いにも、事件の後ユリは、警察に関わりたくない、と月を引っぱる勢いでスペースランドにデートしに向かったが、ここでもしユリが「警察が来るのを待とう」とでも言い出していたら、どうするつもりだったのだろうか。

 月は、この後そのままスペースランドに行く(デートをする)つもりはなかったようだから(まさかユリが行きたがるとは思っていなかった模様)、おそらく「怖かっただろう?今日はもう帰ってゆっくり休んだ方がいいよ。送っていくからさ」とでも言って、その場そ早々に退散するつもりだったのだろう。

 ここでユリが「ちゃんと警察の事情聴取を受けないと」と月をたしなめる可能性もあったわけだが、ユリの性格をみると、そういうことを気にするようには見えない。おそらく月は、そういうことも考慮に入れた上で彼女を今回の連れに選んだのだろう。

 しかし、それはそれでいいとして、後にユリの口から月がその日バスジャックにあい、FBI捜査官レイ=ペンバーと接触したことが知れる可能性はないのだろうか。

 これに関して月は、

「『スペースランドに行ったのは 二人だけの秘密…
  何故なら君の思い出も心の中も 
  僕だけの物にしておきたいから…』
 と意味深に言ってある。
 ユリと僕の付き合いは誰も知らないし
 その事を自慢して優越感に浸るほど 馬鹿な女でもない。
 あれでユリは大丈夫だ」

としている。本当にこれで大丈夫なのかどうかは大いに疑問だが、今のところ特に噂になっている様子はないから、非常に不思議なことではあるが、現時点では問題ないのだろう。

 最も確実なのはデスノートを使うことだが、この調子でデスノートを使っていれば、「刑事局長の息子さんのまわりでだけ、やたら人が死んでいきますね」ということになりかねない。だから、この程度のことであれば話術でなんとかする、というのは妥当ではあるのだろうが……。

 しかし、月は複数のガールフレンドと付き合っているようだし、大学に進学してからは会っている様子も見かけない(ひょっとすると、描写されていないだけで、実際は定期的にちゃんと会っているのかも知れないが)。もし複数の女性と付き合っていることがバレたら、ユリがどう出るかはわからない。これまでは、バレないようにうまくやってきたのだろうが、ミサだけは早々自分の思い通りになってくれないので、これが後々意外と大きな傷になるかもしれない。

発想

緻密

迅速

度胸

難易度

リスク

効果

10

10

 とにかく、「バスジャックされる予定のバスに自ら乗る」というのが凄いところ。普通なかなか考えられないだろう。読者に与えた衝撃は大きく、その発想はなかなかのもの。デスノートへの信頼があるからとはいえ、度胸もかなり据わっている。拳銃に撃たれることはなくても、目の前にあれば普通はやはり怖いだろうし、怪我をする可能性もある。そして、尾行者と直接接触することが危険なのは言うまでもない。相手が南空ナオミのように鋭かったら、それで疑われる可能性があった。かように高いリスクを平然と背負っているところが既に、ただ者ではない。

 また、犯人に気付かれずに尾行者とコンタクトをとったり、(それにひょっとすると走行中のバスの中で手袋をはめたままノートに綺麗な文字を書いたり)、FBI捜査官をうまく丸め込み誘導する演技力、話術を駆使したりと、見た目よりも意外と難易度も高い。

 ただ、やはりこれで尾行者の正体を知ることができる可能性はさほど高くはないので、成功率のわりにはリスクの高い計画だったといえよう。

 もっとも、

「今日僕を尾行してた奴が 僕を白だと判断してしまったら

 もう一度調べが回ってくるのは 当分先になるに違いない

 そしてその時は 一人一人をもっと徹底的に調べ上げる…」

「今 尾行されている事を利用するんだ

 次じゃ手遅れになる可能性もある」

と月が言っているように、この機を逃すと尾行者の名前を知るのは難しくなっていただろうから、時間的余裕がなかったのは確かで、そのために多少の穴が生じるのは仕方のないことなのかもしれない。

 むしろ、この短期間でこれだけのことを考えだし実行できた、という点を評価したい。

 

 

 

2004.7.19

 

 

 

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