L
【page.11~page.18】〜捜査範囲限定・監視カメラ設置〜
【行動】
捜査範囲限定
“新捜査本部を設置した
Lは、FBI殺害事件前後の状況から、捜査対象を「FBIが最初の5日間に調べていたもの」に限定。さらに、ファイル取得順の上位にいるレイ=ペンバーに関し、その婚約者まで行方不明になっていることから、彼に注目。ペンバーが最初の5日間に調べていた2つの家―北村家と夜神家に捜査範囲を限定する。”(page.11:一~page.15:電話)
<小道具>
[
FBI12人(4チーム)][都内各所にある監視カメラ]
[警察庁凶悪犯連続殺人特別捜査本部]
<推理>
<ポイント>
<
if>【警察関係者以外の者への情報漏洩】
Lは、これまでの件で、キラを「捜査本部の情報を得ることができた関係者とその家族」に絞っているが、それ以外の者である可能性も高いのではないだろうか。
例えば、警察関係者でなくとも、ハッキングに長けていれば捜査本部の情報を入手することは可能であった。現に、その後
L自身が「旧捜査本部のコンピュータセキュリティも甘かったようだ」と発言している。また、「関係者とその家族」でなくとも交友関係等に問題がある可能性もあるし、「近所の人間が刑事の家に盗聴器を仕掛けていた」という可能性も考えられなくはない。
無論、そこまで考えると捜査対象が広がりすぎてしまうため、まずは「関係者とその家族」に絞ったのだろうが、彼らを調べていた
FBI12人が消されたことで、交友関係の線は消されてしまい、容疑がその範囲にほぼ限定されたのだろう。だが、本人が尾行されていなくとも、
FBIの存在に気づくことはあるのではないだろうか。例えば、尾行されている関係者と一緒に歩いていた友人(実はキラ)が尾行に気づいたとかー早い話が、バスジャックの時月と一緒にいたユリも
FBI捜査官が日本にいることを知っていたわけである。また、先程述べたように、キラがハッキングによって捜査本部の情報を知りーそれに加えてFBIの情報も得ていた、という可能性も考えられるのである。特に、「キラは警察内部の情報に通じている」というのは、むしろキラの方から積極的に
Lに提示された情報である。キラが警察と無関係のハッキングの達人などだった場合、捜査をミスリードするためにあえて情報を流したとも考えられないか。Lもそのことを考えていなかったわけではないだろう。現に、L自身も、「レイ=ペンバーが最初の5日に調べていた者」の中にキラがいる可能性は5%としている。
他に疑わしい者がいないため、その範囲で徹底的に調査するわけだがーそこに彼らのアリバイの成立を認めても、まだ月に固執し続けている。これは異様な勘で月に注目したからで、結果的には正解なのだが、振り出しに戻って捜査範囲を広げたり捜査手法を変えたりすることを知らない、というふうにも見えてしまう。捜査本部の人数が少ないことも関係しているのだろうが、自分の勘に絶大の自信を抱いているからこその行動だろう。
しかし、わずかな点に気を向けるあまり、他の可能性に注意が向かなくなるというのは、探偵として大きな欠点になり得る。今までそうならなかったのは、
Lの勘が異常だったからとしか言いようがないが、このままではいつか大きなミスを犯すことになるかもしれない。【キラ判定】
Lは、新捜査本部のメンバーにキラがいないかどうかを確認するためのテストを行う。一般には報道されていないキラしか知り得ない事実を喋らせようと試みたり、推理力を調べたりーというのが「テスト」の内容だが、Lは彼らのあまりの推理力の低さにトリックを仕掛ける気すら起こらず、「この中にキラはいない」と判断した。だが、これはいささか早計ではなかっただろうか。
これまでのことから、
Lはキラをかなり高く評価しており、キラは高い知能を有していると考えている。だから知能が(あくまでLから見て)低ければキラではない、ということになるのだろうが、キラがわざと知能が低いように振る舞う可能性については考えなかったのだろうか。「キラはある程度の推理力をアピールしないと本部から外される可能性があると考えてその知能の高さを示す」だろう、と思ったのだろうか(事実、後に接触した月はそうしている)。だが、月と違って、彼らは新捜査本部が深刻な人手不足にあることを知っているためわざわざ推理力をアピールする必要はない。それに、新捜査本部に松田がいることを考えれば、とりあえず彼以上の推理力を示しておけば安泰だといえる。
Lも、こうしたことには気づいているだろう。―実のところ、
Lにとっては、この時点でここにキラがいるかどうか断定できなくてもよかったのかもしれない。キラは殺人に顔と名前が必要なので、少なくとも自分が殺されることはない。また、新捜査本部のメンバーとなった者達は、もともと互いの名を知っているだろうから、今さらどうなるものでもない。
この「テスト」でトリックに引っかかればしめたものだし、そうならずとも、もしキラがいれば、
Lの異常な勘にひっかかるだろうとの自信があったのではないか。無論、勘だけではその人物をキラとして逮捕することはできないが、今後長時間行動を共にしていくわけだから、キラの可能性がある者を監視下におくことにはなる。夜神月を捜査本部に引き入れた時と同じ状況が発生するわけである。
つまり、この「テスト」は防御のための行為ではなく、あくまで「攻撃」のためのものだと思われる。
【
FBIの人数】キラは、日本に潜入した
FBI捜査官が予想よりも少なかったことから、「もしLがFBIを自分が殺すと仮定して少人数で調べさせていたとしたら」という可能性についても考えているが、実際のところはどうなのだろうか。なぜ日本に潜入したFBI捜査官は、たった12人しかいなかったのだろうか。果たしてそれは、Lの意思だったのだろうか。おそらく、
Lの意思ではなかっただろう。確かにFBI捜査官殺害事件によって、捜査範囲をさらに絞り込むことができたわけだが、捜査官の死を想定しているのなら、少なくとも捜査官全員に録音機(もしくは盗聴器)を携帯させるぐらいのことはするだろう。事件が発覚したときのLの悔しそうな表情から見ても、これは明らかにLの想定外の出来事だったはずである。では、なぜ
Lの使ったFBI捜査官はたった十二名だったのだろうか。―これもおそらくは、Lの意思ではないだろう。キラ事件で犠牲になるのは専ら犯罪者ばかりとあって、FBI長官はもともとあまりキラ逮捕に関してあまり乗り気ではなかったようだし、今回Lに協力したのも主に体面を慮ってのことだと思われる。つまり、キラが考えているよりもさらに
Lと「世界各国の警察」の連帯は浅く、せいぜいその程度の人数しか動かす力は持ち合わせていなかった、ということだろう。
発想 |
緻密 |
迅速 |
度胸 |
難易度 |
リスク |
効果 |
7 |
8 |
5 |
5 |
7 |
4 |
9 |
Lはプロファイルが得意らしく、わずかな情報からキラの性格を見抜いている。また、勘が鋭く目を付ける場所も何故か全て的を射ている。……が、一旦そこに目をつけるとそれ以外の可能性については目に入らなくなる傾向があり、数多ある冤罪事件の例によく見られるような、取り返しのつかないミスを犯す危険が常にある。
これまでの行動は全てキラの後手にまわってしまっていた感があり、それほど迅速とは言えないが、警察の
Lへの不審が決定的になる前に対処するなど、それが致命傷となるまでには至っていないし、決断後の実行は早い。また、ホテルのテーブルに平然とマジックでものを書いたりするあたり、度胸もなかなか据わっていると言えるだろう(笑)。Lの推理には勘に頼る部分も大きいが、それがすべて的確に要所を押さえてあり、着実に「正解」へと近付いている。
【行動】
監視カメラ設置
“「レイ=ペンバーが最初の5日間に調べていた者」が捜査線上に浮上。だが、実際にその中にキラがいる可能性はわずか5%。しかし、他に疑わしいと思える者がいない。そこで
Lは、該当する二家族―北上次長宅と夜神局長宅に監視カメラを設置することを決定。両家にあますところなく監視カメラと盗聴器が仕掛けられ、水も漏らさぬ監視体制が敷かれたが、両家族とも普段通りの生活を送り続け、特に怪しい行動をとった者は発見できなかった。結局、監視カメラ・盗聴器は撤去せざるを得ず、捜査は振り出しに戻ったかに思われたが、Lは、夜神月の持つ完璧さ、その醸し出す雰囲気に「何か」を感じ、秘かに彼がキラではないかと考えはじめる。”(
page.16:逆立〜page.18:視線)
【小道具】
[盗聴器、監視カメラ]
[2つ以上のモニタールーム]
“夜神局長、L→夜神家の監視
‘残りのメンバーはローテーションで以下の行動’
一名→警察庁
一名→レイ=ペンバーの山手線関連のビデオに北村家、夜神家の者が映ってないかチェック
二名→北村家の監視”
<ポイント>
<目的>
キラを探す
<メリット>
<デメリット>
<
if>【違法捜査発覚】
Lは、キラ捜査のために監視カメラを用いたわけだが、これは日本では違法な捜査。もしことが発覚していたら、どうなっていただろうか。
Lを除く捜査員達は、もしこのような違法捜査が発覚したら、自分たちも犯罪者になり警察庁はクビ、この捜査本部も破滅するだろうと言い、当初この案に強く反対していた。
結局は夜神局長自身の承諾と、「絶対にばれないようにとりつける」との
Lの説得によりこの作戦は実施されたわけだがー実際にはばれるのを覚悟でつけているとしか思えない数と付け方。短期間で見極めるつもりだったため、ばれる危険性はそれなりの確率に抑えられてはいたようだが(実際、月本人以外には誰にもばれていない)……しかし、Lが捜査員達に断言したほどの安全性が保証されていたとは思えない。Lには、ばれてもなんとかなるという自信があったのではないか。今回のケースでは、両方とも家に警察関係者がいるため、家族の誰かが監視カメラを発見した場合、それは通常のルートで警察に届けられるのではなく、一家の警察関係者―夜神局長あるいは北上次長―に直接届けられることになるだろう。つまり、この二人が家族の苦情を警察庁には届けずに握りつぶし、家族に対しては適当に誤魔化しておけば問題はないーつまり、この二人さえ説得できれば安全、ということである。
夜神局長に関しては、事前に了解をとりつけてあるので大丈夫だが…問題は北上次長である。捜査員達と違って、それほど
Lを信用しているわけでもないだろうし、自宅に監視カメラ等が仕掛けられているとわかれば、ますますLへの不信感・反発心が増していくことになるだろう。ことが公になれば警察の世間体に傷がつくため、この件はおそらく握りつぶされ、L達が逮捕されるということにはならないだろうが、夜神局長達警察庁のメンバーに「Lとの連携を禁止」との命が下るかもしれない。そうなればLにとってもかなり痛いはずである。もっとも、ワタリはこのようなことに慣れているらしいので、監視カメラの存在はばれても誰が仕掛けたかまでわかるようにはしていないだろう。今後、
Lの手段を選ばないやり方についていけなくなった捜査員が離脱して、この件を北上次長に報告する、という可能性もなくはないがーそれ以外の線からばれる可能性は0に等しく、そう考えればリスクは意外と小さいのかもしれない。監視カメラ設置の犯人がばれる可能性は低く、たとえばれてもおそらく逮捕されることはない。その一方で、監視カメラを仕掛けたことによって得られるものは大きい。リスク・リターンをはかりにかけた結果、一般的な道徳観念を歯牙にかけない
Lがこの作戦をとったのもうなずけるのだ。
発想 |
緻密 |
迅速 |
度胸 |
難易度 |
リスク |
効果 |
6 |
9 |
9 |
7 |
8 |
7 |
7 |
とにかくあれだけの数の監視カメラを仕掛け、水も漏らさぬ監視体制をつくりあげたのは見事である。それも、作戦決定からわずか3日以内に。それは
L自身の力ではないが、それだけの力を持った人員(ワタリ)を抱えているのは大きな武器になりうる。結局、この作戦で特に新たな判断材料などは得られなかったが、
L自身は、その勘に引っかかるものを発見し、さらに捜査対象を絞り込むことになった。そして、結果的にそれは正解なのである……。
2004.10.5