主題歌とメインテーマ

 

 おおむね映像作品には、それの「顔」とも言うべき曲がある。たいてい主題歌―OPがそれだが、最近は、主題歌が頻繁に変わるものも多く、どれを「顔」の曲とすべきか判断に迷うものもある。ただし、主題歌が何度も変わるからと言って、必ずしも「顔」の曲がわからなくなるわけではない。

 例えば、「ワンピース」は何度も主題歌が変わっているが、どれがワンピースの「顔」かといえば、迷うことなく「最初のOP」がそれだと答えられる。このように、最初のOPがその作品の顔、というパターンは結構多く、主題歌が変わっても次回予告などで使われ続けたり、作中ここぞという場面で流れたりする。また、「シャーマンキング」のように、最初のOPと次のOPの雰囲気が似ているためどちらを「顔」とするか判断に迷う、といった場合も、とりあえず最初のOPが「顔」とされる場合が多いようだ。

 もっとも、最近では、主題歌が既に特別な曲ではなくなっている作品も結構多いように思う。特に印象に残る主題歌がなく、主題歌が定期的に変わるのは当たり前、その作品のためだけに主題歌が作られるのではなく、たまたま人気の曲を主題歌として使う……という傾向を持つ作品を、最近よく見かける。どうかすると、放映期間はそんなに長くないのに何度も主題歌が変わる作品もあり、変わるのが早すぎると感じられるものもある。……ちょっと残念に思う。

 だが、このように主題歌が作品の「顔」になり得ないからといって、必ずしも「顔」の曲がない、というわけではない。例えば「名探偵コナン」や「犬夜叉」は、主題歌が何度も変わっており、どれか一つを「作品の顔」と断定することはできないが、そのかわり、作中よく使われる「メインテーマ」がある。「犬夜叉」ではCDのサブタイトルにはっきり「メインテーマ」と記されているわけではないが、「犬夜叉」とされるものがそれで、アレンジバージョンも非常に多く、次回予告でも使用されている。「犬夜叉といえばこの曲!」である。「名探偵コナン」においても、それは同様。両者とも、確たる「顔」を持っているのである。

 また、「メインテーマ」が「顔」となるのは、主題歌が「顔」になり得ない場合だけではない。「ハンター×ハンター」のように、そう何度も主題歌が変わったわけではなくとも、「メインテーマ」が非常によくその作品を表しているため、そちらが「顔」となっている場合もある(これについては、やや意見の分かれるところかもしれないが)。

 大体どの作品にも一応「メインテーマ」は作られているものだが、主題歌がそう何度も変わっていない場合は、大抵主題歌が「顔」とされる。基本的に、歌の方がインパクトがあるためだろう。毎週必ず聞ける、というのもあるかもしれない。

 ……だが、中には、主題歌を見ても「メインテーマ」を探しても、確たる「顔」が見つからない場合がある。それも、対象が見当たらない場合と多すぎて困る場合の二種類ある。

 主題歌において対象が見当たらないものは、主題歌が作品の雰囲気にあまりそぐわない。きっぱりと「合ってない」と断言できるものから、「合わない…とまでは言わないが、特にこの作品の主題歌でなければならない、というほどの理由も見当たらない」というものまで程度は色々だ。例えば、個人的に見て、「るろうに剣心」の主題歌は明らかに合っていなかったと思うし、「ヒカルの碁」の主題歌は必ずしもその曲でなければならない、ということはなかったような気がする(この場合は、それに加えて、第一期OPと第二期OPの雰囲気が似てるため、どちらを「顔」とするかという問題もある)。このように、やや古風な雰囲気を持つものは、「(現代風の)インパクトのある主題歌」をつけるのが難しいのかもしれない。いっそ、「十二国記」のように、本来なら主題歌となるべきOPと「メインテーマ」を合体させてしまえばよかったのかもしれないが。あと、いずれの主題歌も似たような雰囲気で選択に困る、という場合もある。

 一方、「メインテーマ」において対象がこれといって見つからない作品は珍しくはない。「作品全体を表す曲」を挙げることができないものもあれば、複数あって困るものもある。例えば、「ヒカルの碁」。当初、冒頭(OP前)での佐為の話で使われた曲(色々アレンジ・バージョンを持つ)や、CDCMで流れた「交わる道」など、どれもよくこの作品を表しており、どれか一曲を「顔」にするのは迷う。

 さらに、「主題歌」「メインテーマ」双方に「顔」となり得るものがある場合も判断に困る。「ダイの大冒険」のように。……まあ、こうした場合は大抵、主題歌を優先する傾向があるということでなんとかなるが、一番困るのは、主題歌にも「メインテーマ」にもこれといったものが見当たらない場合である。「スパイラル」とか……。強いて挙げれば、よくクライマックスで流れる曲か、後半よく使用された「孤独の中の神の祝福(:リスト)」がそうだと言えなくもないが、やはり決定打には足りない。このような場合、全体のイメージがなんだか曖昧なものになり掴みにくくなっているような気がするので、やはり映像作品にはそれに対応する「顔」という曲が必要だろうと思う。実際、ある程度以上長く続いている作品、全体的に質が高いと思われる作品には、大体そういった曲があるものである。(中には、複数あって迷う場合もあるが……。)

 そういえば、以前、深夜に外国のドラマが放映されていたのをちょっと見たことがあるが、あちらのドラマには「主題歌」というものがなかったのに驚いた記憶がある。映画のように、番組の後に曲(歌はついていない)が流れ、ひたすら字幕が出るだけなのだ。背景も黒地または一枚絵。……なんだかちょっと寂しい気がする。曲―メインテーマがそれなりのものならそれはそれでいいのだが、非常に印象の薄い曲の場合は……。以前ゴールデンタイムに放映され、妙な所で突然終了してしまった「ダークエンジェル」の続きをレンタルビデオで見た時に思ったのだが、やはり、主題歌があるのとないのとではだいぶ感じが違ってくるのだ。

 最後に、主題歌について一言。毎週主題歌を聴いていると、「毎週これを聞くのが楽しみ」というものと、「そろそろ飽きてきた。いい加減新しくしてほしい」と思うものがある。後者の場合ならかまわないが、そうでない場合に主題歌が変わると、よほどのものでない限り、「前の方がよかった」と思う。まあ、そのうち新しい方にもだんだん愛着がわいてくるのだが。主題歌の場合は、曲・歌詞等の他に、映像もなかなか重要な要素なので、映像だけを変えても、結構新鮮な感じがする。「ワンピース」などのように、最初に「顔」となれる主題歌がある場合は、無理に全部変えずに、映像だけを変えるなどした方がいいのではないかと思う。別に新しい曲に不満があるわけでなくとも、時々無性に最初の曲が懐かしく思えることがあるから……。「メインテーマ」が顔の場合は、構わないのだが。

 主題歌は、決して「変えなければいけないもの」ではないと思う。出来得れば、かえる必要のない、「顔」となれるだけの主題歌を持つ作品に、もっと増えてほしいと思う。

 

 

2004.1.31

 

 

 

 

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