戦闘シーンの変遷

 

 

 DQシリーズも7作も続くと、その中で戦闘シーンもいろいろと変わってくる。現在の戦闘コマンドは大体3と4を原型とし、4でAIが導入されてから、作戦も含めて細かい部分が色々と変わってきた。そして、映像・効果音・画面表示などは、SFCとなった5から大きな変化を遂げた。あるものは、誰にでもすぐわかるようはっきりと。あるものは、注意されなければ気付かれないほどひっそりとーだが確実に変わった。それらについて、少し述べてみたいと思う。

 

 

画面表示

最初に出会うことになるFC版のDQ1では、戦闘コマンドは画面右上にあった。

そして、互いの行動が終了すると、必ず最後に「コマンド?」の一語がついた。

「××があらわれた!コマンド?」

「○○は△ポイントのダメージをうけた!コマンド?」

 といった具合に。

「うう……逃げたいんだけど逃げられない……」というような時は、無駄にBボタンを連打して、

「コマンド?コマンド?コマンド?コマンド?……」

と無数に並ぶ文字列を見つめて唸っていたような気がする。

もっとも、これはDQ1だけだが……1だけといえば、死んだときに

「あなたはしにました」と表記されるのもそうだ。

その時、憎らしい魔法使いの両目がフードの奥で不気味に光るのを見ていたような

気がするのだが、あれは気のせいだったのだろうか。

 今にしてみると、戦闘の臨場感を最も感じることができたのは、DQ1に代表されるFC版のドラクエシリーズではなかっただろうかと時々思う。

 DQ1ではダメージを受けるたびに画面が揺れ、大ダメージの時はそれがさらに

激しい。総じてFC版では、攻撃したときと攻撃を受けた時では、その音がはっきり

と異なり、大ダメージを受けた時はその音も大きく、また画面がぐらりと揺れる

のが見てとれた。それも、ダメージ表記の後、一呼吸おいてから音と揺れがくる

ので、こちらも「うぐぁっ!?」と叫んでしまうような感じだった。

 しかし、SFCになってからは、ダメージを与えた時とダメージを受けた時の音

の違いが小さくなり、画面が揺れることも殆どなくなってしまった。

そのせいで、あの危機感はかなり失われてしまったのかと思うと、非常に残念である。

 それに、SFC版になって失われたのはこれだけではない。

 FC版では誰か一人でも死ぬと、数字はおろか、表示枠まで真っ赤となる

「画面真っ赤」と言われる状態が存在した。

 画面真っ赤―絶体絶命の大ピンチ。全滅の一歩手前。そこまでいっていなくとも、

そのような気分にさせてしまう恐ろしいもの。

 この状態に陥ると、プレイヤーは非常に追いつめられた気分になり、なんとかそこから抜け出そうと必要以上に焦って墓穴を掘ってしまう事もしばしば。ありがたくもないレクイエムがセットでついてくる可能性も高い。

 しかし、5以降は、死んだメンバーの数値の色だけが変化するようになり(色も黄色に変更)、この状態は見られなくなった。おかげで誰が危ないのか一目でわかるようになり、またインパクトも軽減されたため比較的冷静に対処できるようになった。

 だが、私としては、あの極度においつめられた興奮状態や最高度の緊張感が味わえなくなってしまったのは少々寂しい気がする。 

 他にも変わってしまったことは色々ある。例えば、戦闘中の行動表記。

 その一例として、味方がとるとなんだか得した気分になり嬉しいが、敵にとられると無性に腹が立つ行動―「身をかわす」を挙げてみよう。

 以前は、味方については「すばやくみをかわした」で、敵については「なんとかみをかわした」と表記が別になっており、プレイヤーの優越感をくすぐったものだが、後者の使い方が日本語としてやや難ありということを気にした……のかどうかは知らないが、5からは両者とも「ひらりとみをかわした」に統一された。7では、例外的に、メタル系の敵に岩石おとしなどを使用した際に「すばやく身をかわした」と表記されたりもするが、基本的には「ひらり」で統一。

 私としては、少々違和感があっても、「わざわざ表記を別にした」というところに「細かい心配り」を感じて、DQらしくて好きだったのだが。

 また、以前は、例えばラリホーなどを使用した場合、眠ったのが敵なら

「××をねむらせた」で、味方なら「○○はねむってしまった」と表記された。

だが、今ではどちらも共通して「ねむってしまった」である。敵の場合、やや

不自然なものを感じたりするのだが……。日本語にこだわるなら、なぜこの表

記まで変えてしまったのか。やはり残念である。

 

 

映像・効果音

 

 映像も、SFC版になってから、大きく変わった。まず、背景がついた。

それまでは黒一色だったのに……といっても、DQ1では既に一応背景がついてはいたのだが。

 DQ5では、背景の雲が流れていくのに驚かされた。空は暗く、かなりの速度で流れていく雲……これから何か悪いことが起こるぞ、と言わんばかりではないか!そんなわけで、5のこの背景は結構気に入っていたのだが、6に入って動かなくなってしまったのでちょとがっかりした。まあ、DQ6は全体的に明るい雰囲気なので、普通の青い空の方が似合うんだろうな、とは思うが。

 そして、DQ6からの大きな特徴!敵が動くぞ!!

 このモンスター(味方の場合でも)のアクション、というのは、最初のうちはいいものの、慣れてくると段々ジャマになってしまうものである。長すぎると、そのうちイライラさせられるだけのものになってしまうが、かといって短すぎてもつまらない。その点DQは実に巧妙なタイミングで、モンスターアクションにイライラさせられたことは全くと言っていいほどにない。そして、モンスターの様々な行動を見るのは楽しい。実に素晴らしい出来だと言えよう。

 呪文の効果も見所だ。特にイオナズンの、粒子が中央に集まっていくところが。だがら、実はイオナズンの映像は5が一番好きだったりする。7もいいのだが、爆発する所が少しイメージと違うような気がするので。メラゾーマはDQ6の映像が気に入っている。7のは、不自然な隕石が飛び込んでいくかのようで、実はあまり好きではない。

 そして、私にとって、もっとも呪文のイメージをころころ変える呪文といえば……それはザキ系。

 私がDQ4で初めて目にした時は、ピンク色の光と共に、「ピコピコピッ」というような一種コミカルな音を残して「息の根を止める」呪文だった。その後、

 ブワッというような音と共に、まさに「消滅」するようなイメージ。

 「ヒュルォォォン」というような音と共に、煙となって消えゆくイメージ。

 ……と、次々とその姿を変えていった。

 私としては、恐ろしい呪文なのに、それに反して「ピコピコピッ」というコミカルな音をたてる…というFC版の4のザキが好きである。最初に目にしたから、というのもあるかもしれないが、なんといってもそのギャップがなんともいえず好きなのだ。

 ところで、効果音といえば、戦闘シーンではないが、重要アイテムを見つけた時の音も、4のものが好きである。こちらの方が、なんだか楽しい気分になれるのだ。

 効果音も、細かいところで色々変わっている。

 

 

AIと作戦

 4から、AIと馬車が導入されたーその際、「個人の行動」とは別に、「全体の行動」を選択するコマンドが追加されるようになった。

 それまで、基本的に取れる個人の行動は

「たたかう じゅもん ぼうぎょ どうぐ」

の四つ。しかし、3では先頭の人物は

「たたかう じゅもん どうぐ にげる」

となり、「ぼうぎょ」を使用することができなかった。

 しかし、4からは、個人の行動に入る前に

「たたかう いれかえ さくせん にげる」

という選択がなされるようになり、先頭の人物が不利になることはなくなった。

 「いれかえ」も4では1ターンを消費したが、5からはそういうこともなくなり、「そうがえ」もできるようになるなど色々便利になった。

 作戦も、色々変わった。具体的には、以下のようである。

 

現在

みんながんばれ

バッチリがんばれ(7)

ガンガンいこうぜ

いのちだいじに

じゅもんつかうな

じゅもんせつやく

おれにまかせろ(6)

いろいろやろうぜ

めいれいさせろ(5)

 

 「バッチリがんばれ」は名称が変わっただけで、内容は同じ。なぜ変えたのかはよくわからないが……。

 また、「おれにまかせろ」よりは「じゅもんせつやく」の方が実用的なので、これは変えない方がよかったのではないか、とも思えるが、実際は「じゅもんせつやく」を指定していても、仲間達はちっとも節約してくれないので、それならいっそ……ということでこうなったのかもしれない。6ではほとんど使わなかったが、7では仲間達の行動を見て、その後の会話を楽しむために、しばしば使用した。

……しかし、それならそれで、「いろいろやろうぜ」の方がよかったかもしれない。

 AI戦闘かマニュアル戦闘か選択できるようにするために、「めいれいさせろ」は不可欠だったが、遊び心ということなら、「おれにまかせろ」よりも「いろいろやろうぜ」の方がふさわしいと思う。それを思うと、少々残念だ。

 また、AI自体も、4とそれ以降とではだいぶ違うものになっているように思う。4のAIは、本当に予想外の行動を取ってくれて、面白かった。その代表は、「ザキ魔クリフト」だが、他にも色々と楽しませてくれた。「楽しい」などと呑気なことを言ってられない事態に陥ったこともしばしばあるが、それでも私は4のAIが好きだった。リメイク版でも、「ザキ魔クリフト」だけは残しておいたというのは、この人間味あふれる?AIに愛着があったからこそーと思うが。何回も戦闘を重ねれば、ちゃんと学習していくというのも嬉しかったし、自分の指示下にない仲間が勇者に回復呪文をかけてくれるのは、この上ない喜びだった。

 しかし、そんなAIも、5からはあまり奇抜な行動は見られなくなり、6からは、もうすっかりお利口さんになってしまって「これはオートバトルか?」という感じで、あまり楽しめなかった。大体なぜ、それまで戦ったことのないモンスターの弱点を知っているのか。その行動から、プレイヤーが学ぶーということも結構あったものの、やはり何か物足りない。転職で個性が出にくくなったことと相まって、みんな同じ行動パターンを取る機械、というイメージが前面に出てきてしまい、あまり愛情をそそげないのだ。

 5からはAI戦闘かマニュアル戦闘かを選択できるようになったことでもあるし、重要な局面ではプレイヤーがちゃんと手綱をとることができるのだから、普段のAI戦闘では、多少羽目をはずしてくれてもいいのではないかと思う。

 

 どうも、とりとめのない単なる雑感になってしまったが、こうしてみると、思った以上に色々と変わっている。嬉しい方向に変わったのもあれば、そうでないのもあるが、今後もこうしたドラクエの変化を見守っていきたいと思う。

 

 

 

2003.10.25

 

 

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