泥棒勇者

 

 DQ世界においては、他人の家で、勝手にタンスやツボを漁っても、家人にとがめられることはない。

 これは、なぜだろうか?

 ロト三部作に関しては、「ドラクエの秘密」(1993年刊、高円寺ファミコン考察学会著)において、「世界中の人間は、勇者が世界を救うために戦っているのを知っていて、暗黙の了解がなされているため」というような考察がなされているが、DQ4からは、これではちょっと説明できない。

 そこで、この点について、少し考察してみたい。

 まず、DQ4から。

 第一章では、王宮戦士ライアンは怪事件の捜査中―ということをみんな知っているだろうから、「捜査協力」ということで、取っていっても何も言わなかったのかもしれない。

 第二章では、案外ブライあたりが水戸黄門の印籠(笑)を振りかざして、黙認させていたりとか。神官クリフトが、家人に祝福を与えたり説法をしたりして、その礼に黙認してもらっている、という可能性も大いにある。

三章では、商人・トルネコが言葉巧みに説き伏せたのかも……またしても、「ぬけめない」トルネコ説浮上である。

 四章では、大スター・マーニャが踊りを披露して家捜しを黙認してもらったか、ミネアが「運気をあげるおまじない」と称して言葉巧みに説き伏せたか……後者だったら、結構怖い。また、「姉妹に同情して」とか「キングレオ王への反発心から」という可能性もある。

 そして五章。村の中では、勇者として黙認されているだろうが、外では勇者は死んだことになっているため、「勇者が世界を救おうとしているのをなんとなく察して……」ということはないだろう。

 勇者の祖父?らしきおじいさんは、親切に「持っていけ」と言ってくれたし、ブランカは……地獄の帝王退治を支援して(煽って?)いる国なので、「勇者を目指す者」の家捜しが黙認されているのかもしれない。エンドール以降は、基本的に4章までの理由のどれかがあてはまる、ということでいいだろう。

 バトランドなどで、兵士の目の前で宝箱をとっていってもとがめられないのは不思議だが、実は「鍵のかかった扉やバリアを越えて堂々とこの宝箱にたどり着けた者は勇者だから、とがめてはならない」といった伝説が伝わっていたりするのかもしれない。勇者のことを知った王様が、そのようにふれを出していた、という可能性もある。

 ガーデンブルグで、ブロンズの十字架ならとがめられるのに、他の木の実などを取ってもおとがめなし、というのも解せない。おそらく、住人は「大したものでないから持っていってもかまわない」と思っていたのではないかと考えられるのだが。

 これはDQ4以外のシリーズについても言えることだが……大体、たんすやツボの中に入っているものといえば、薬草、低額のG、ちいさなメダル……といったところである。住人は、「これぐらいなら別にいいか」と思って見過ごしているのかもしれない。疲れた顔をした旅人が気の毒になって、「いいよいいよ、それぐらいなら……」と、親切心を起こしてしまうのかも。

 命の木の実のような、貴重なアイテムが入っていることもあるが、ひょっとすると住人は、単に「変わった実を見つけたからとっておいた」というだけで、それが何なのか、わからないのかもしれない。だから、「いいよいいよ、そんなガラクタ、持っていっても」ということになっている可能性は高い。

 装飾品や武器防具などが入っている場合も、その特殊効果を知らぬまま、「もらったけど趣味に合わない」「歳とって似合わなくなった」「買ったけど結局使わなかった」などの理由で、ガラクタ扱いされてたりするのだろう。

 捨てるのももったいないし、気がとがめる……思ってたところに主人公達が現れたので、喜んで黙認してくれたのかもしれない。主人公にとっては、大変ありがたいことである。

 そんなわけで、DQ4については以上のような理由で大体説明がつく。他のシリーズもこの仮説で成り立つと思うのだが、せっかくだから、個別に見た場合の可能性についても、もう少し探ってみたい。

 そこで、今度はDQ5について。少年時代は、「子供だから…」ということで笑って黙認してくれていたのだろうが、問題は青年時代に入ってからである。子供ができてからは、彼らに家捜しをさせていたのかもしれないが、それまではどうしていたのか。エルヘブンの民の血、モンスター使いの素質によって、住人にも好感を持たれ、とがめられずにいるのだろうか。それとも、実は仲間にしたモンスター達が、こっそり主人公の後をついてきていて、住人は、主人公の後ろに佇む無数のモンスターに恐れをなして、何も言えないのだろうか。主人公は、たぶんそれに気づいていないとは思うが、気づいてやっているとしたら、かなりタチが悪い。ちなみに私なら、やっぱり、喜んで気づかないフリをする。

 次に、DQ6。上の世界では、まあ、夢だから……ということでなんとでもなるが、問題は下の世界。DQ5のように、仲間モンスターを怖がっている、という可能性もないではないが、それにしては、話しかけても住人に怯えた様子は見られない。やはりここは、先程述べた「大したものではないから持っていってもかまわない」という仮説に落ち着くしかないのではないだろうか。

 DQ7では、「子供だから黙認されている」と「大した物ではないので黙認されている」が半々だろう。

 ……と、まあ、このような結論が出たわけだが、仮説の中には、勇者にあるまじき行為をしているものも。細かいことを気にしていたら、大人物にはなれない!!……のか?

 DQ世界を旅する楽しみは、人々との会話の次に、この「家捜し」があるのではないかと時々思う。それで濡れ衣を着せられたり、ツボックに遭遇して全滅しようとも、これはやめることができないだろう。これぞ、ドラクエの醍醐味である。

 

 2003.10.11

 

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