ドラゴンクエストコンサート
昨年に続き、今年もこの
DQコンサートに赴くことができた。しかも、全シリーズの曲を、である。
せっかくなので、その模様を記しておきたいと思う。
今回の私の座席は、横の前列。右に空席一つ、左に三つ。
つまり、その列には私の他誰もいない。…何故だ。
他の席は皆埋まっているのに。よりによって前列だけ空いてるなんて。しかも、変な空き方である。
そういえば、二階(?)正面の席も、前列だけ空いていて、妙な感じだった。席は前から埋まっていくものと思っていたが、実は逆だったのだろうか。
ちなみにこの位置からは、舞台袖の様子まで見えるので、すぎやまこういち氏が椅子にこしかけていたり、水を飲んだりなどしている所がよく見えた。
プログラムには、前回と同じく、それぞれの曲に対するコメントがあり、楽しめた。表紙は
DQ8。今回はセレクションなのだから、他のシリーズの絵も入れてほしかった。さて、ではそろそろ演奏の内容に移ろう。
まずは、
「序曲(DQ1)」。そして、ここで、
すぎやまこういちのお話。で、その次、事実上の第一曲は、
「王宮のトランペット(DQ5)」。今回の白眉は、次の、
「遙かなる旅路〜広野を行く〜果てしなき世界(DQ2)」。感動の余韻を残したまま、再び
すぎやまこういちのお話。 どうやってこの曲目を選んだのかという話で、これは、以前東京のコンサートでアンケートを実施し、聴きたい曲を5曲選んでもらい、その結果を東京都と名古屋にうまくふりわけた結果だそうだ。すぎやま氏の演奏したい曲と、このアンケート結果も、うまく重なっているらしい。
なるほど、確かにどれもいい曲ばかり。…だが、それは同時に、もう片方のコンサートの曲目を見て、ため息をつくことにもなる。さすがに両方聞くのは無理があるが…仕方がない。
次なる曲は、
「ペガサス〜精霊の冠(DQ6)」。そして、
「勇者の故郷〜馬車のマーチ(DQ4)」。ここで気を取り直して、またも
すぎやまこういちのお話が。 唐突に、「皆さん、のだめカンタービレってご存じですか?」と、客席に向かって声をかけるすぎやま氏。意外に多く…半数近く(?)の手が上がる。次に、楽団の皆さんに向かって同じ事を問いかけるすぎやま氏。と、今度は殆ど全員の手が上がる。会場から笑みがこぼれる。
私はこの作品を読んでいないが、一応名前だけは知っている。しかし、ここまで普及していようとは…。
すぎやま氏の話によると、「のだめカンタービレ」の作者は名古屋出身で、この楽団が最初に「のだめカンタービレ」のコンサートを行ったのだとか。その時も今と同じぐらいの大盛況で、こうしたものからオーケストラ入門の機会がますます広がるといい、というような話をされた。
さて、次は
「スフィンクス〜大神殿(DQ7)」。そして、これまた期待の
「栄光への戦い(戦闘〜邪悪なるもの〜悪の化身)(DQ4)」。プログラムでは、次の「冒険の旅」まで演奏するようになっていたが、変更されて、ここで20分の
休憩。記念の
CDを買いにいくことにする。そして、休憩が終わり、ここでまず、
すぎやまこういちのお話。 聴衆の中にはドラクエの曲を熟知している人がいて、演奏中に指揮をしている人がいるようだが、演奏者が間違えてそちらの指揮を見てしまうと困るので、指揮はしないで下さい、とのことだった。…そんな人がいたのだろうか?なかなか度胸のある人である。私の席からは客席がよく見えるのだが、あまり注意を払っていなかったため、全く気づかなかった。
また、今名古屋では「ど真ん中祭り」というのをやっている、という話(全然知らなかった…)も。地理的にも日本の真ん中で、他の面でも真ん中、ということで、テンションが高いのだとか。
そして、これから「戦火を交えて」まで一気に演奏するので、
そして始まる怒濤の8曲。最初の
「冒険の旅(DQ3)」は楽しみにしていた曲の一つ。冒頭から、唱和する楽器の音に、心の奥まで揺さぶられる。「哀しみの日々(
DQ7)」も好きな曲。特にここでは、CDでは埋もれてしまいがちな小さな音―澄んだ音がよく響いて、綺麗だった。「大聖堂のある町(
DQ8)」は、やはり堂々たる迫力が素晴らしい。一方
「洞窟に魔物の影が〜死の塔〜暗黒の世界〜洞窟に魔物の影が(DQ5)」のような、細かい音が多い曲も、やはり生だと違いが大きい。ただ、ダンジョンの曲では、1,3,4が特に好きなので、できればそちらの方も聞きたかった。「エレジー〜不思議のほこら(
DQ4)」も好きな曲。エレジーは予想通りに、不思議のほこらは予想以上に。生での素晴らしさを堪能できた。「海図を広げて(
DQ4)」では、後ろの細かい音がよく聞こえるので、海が眩しくきらめく感じがよく伝わってきた。やはり生はいい。「空飛ぶベッド(
DQ6)」は、これまでちょっと地味な曲だと思っていたが、今回で印象が変わった。木琴の音がとても綺麗なのだ。ああいう細かい音が響き渡ると、だいぶ印象が違ってくる。CDの時よりも、爽快感が大幅に上昇。「戦火を交えて〜不死身の敵に挑む(
DQ5)」は、さすがに迫力があった。好きな戦闘の曲が二つも聴けて嬉しい限り。これで後は、DQ3の戦闘の曲さえ聴ければもっとよかったのだが。そしてここで、
すぎやまこういちのお話。今回の曲目を選ぶアンケートで見事第一位に輝いたのは、次の「そして伝説へ」だったのだそうだ(第二位は何だったのだろう?)。これは、東京でも演奏されたらしい。
その
「そして伝説へ(DQ3)」は、やはり生で聞くと、また別の感慨が……聞けて良かった。その後には
アンコール。私の席からだと、すぎやま氏が完全に奥に引っ込んだわけではないことがわかるので、可能性はかなり高いと踏んだ。ううむ、確かに「馬車を曳いて」は、生で聞いた時の魅力が大きく増す曲の一つだが…どうせ
DQ8から演奏してもらえるなら、「広い世界へ」をもう一度聞きたかった。アンコールとしてやるには長すぎるのだろうが。特に、今回は二曲もアンコールがあったのだし、仕方ないか…。すぎやま氏は、「まず、
DQ8のプロローグ『馬車を曳いて』を」と言い、その後、「あ、『まず』って言っちゃ、まずいのか」と口にした。しかし、もう遅い。これで、皆もう一曲あることがわかってしまった。しかし、全体的には、やはりこれだけの曲を生で聴けた喜びは大きい。終了後も、なりやまない拍手。電気がついてもなお、拍手は続いた。楽団が皆退出した後も続く拍手に、袖からすぎやま氏が顔を出して手を振ってくれるのが見えた。
その後下に下りると、結構な行列ができており、その側で、並ぶ時は通路を外れて、と呼びかけている人がいる。そこで、何の行列か聞いてみたのだが、かえってきたのは、「よくはわかりませんが、すぎやまさんが出ていらっしゃるということなので…」という返事。
みんな、何があるのかもわからず並んでいるのか。そして、会場の人でさえ何があるかわからないのか。わからないまま行列の整理をしていたのか……。これで何もなかったら、とても悲しいのではないか。
まあ、20周年なのだし、「何かある」のは確かなようだ。今回は時間もあるし、何があるのか興味もあるので、とりあえず並んでみることにした。
待つ事しばし。いきなり側の扉(それまでそこに扉があることすら意識していなかった)から、数人の人影が出てきた。見てみると、なんと、すぎやまこういちではないか。一瞬、その場が静まりかえる。その沈黙の後、今度は一転、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。……傍から見ると、結構面白い光景かもしれない。
そして、行列はすいすい動き出す。会場の人の話によると、どうやらすぎやまこういちが握手してくれるらしい。ただし、時間がないのでサイン、写真撮影などはだめ、とのこと。そこで「勝手に撮られるぶんには構いませんが」とつけ加えていたのがやけにおかしかった。実際、すぎやまこういちが現れた時から、携帯電話を構える人多数。この光景も、傍から見ると結構面白い。
そうこうするうちに、あっという間に私の番まわってきた。意外に力強い手だった。てっきり握手というのは軽く握るものだとばかり思っていたので、ちょっと驚いた。
コンサートホールの中は非現実的な空間で、どこか夢のような感覚がするが、コンサートホールを出た後も握手の感触が残っているのが不思議な気分だった。
2006.8.24