ドラゴンクエストコンサート
【20周年 1〜8セレクション】

 

 

 昨年に続き、今年もこのDQコンサートに赴くことができた。

 しかも、全シリーズの曲を、である。

 せっかくなので、その模様を記しておきたいと思う。

 今回の私の座席は、横の前列。右に空席一つ、左に三つ。
 つまり、その列には私の他誰もいない。…何故だ。
 他の席は皆埋まっているのに。よりによって前列だけ空いてるなんて。しかも、変な空き方である。
 そういえば、二階(?)正面の席も、前列だけ空いていて、妙な感じだった。席は前から埋まっていくものと思っていたが、実は逆だったのだろうか。
 ちなみにこの位置からは、舞台袖の様子まで見えるので、すぎやまこういち氏が椅子にこしかけていたり、水を飲んだりなどしている所がよく見えた。

 プログラムには、前回と同じく、それぞれの曲に対するコメントがあり、楽しめた。表紙はDQ8。今回はセレクションなのだから、他のシリーズの絵も入れてほしかった。

 さて、ではそろそろ演奏の内容に移ろう。

 まずは、「序曲(DQ1)」
 私は最初、4以降のものだとばかり思いこんでいたので、ロトシリーズのものだったのが意外だった。後でプログラムをよく見ると、ちゃんと(1)と書いてあった。去年は
DQ8の序曲を聴いたので、二種類聞けてよかった。ただ、生で聞いた時は、やはりDQ4以降のものの方が、迫力があるようにも感じた。

 そして、ここで、すぎやまこういちのお話
 観客が多いとテンションが上がるという話や、オーケストラも年々レベルアップしていて毎年楽しみだという話をされた。

 で、その次、事実上の第一曲は、「王宮のトランペット(DQ5)」
 これはまあ、予想通り。

 今回の白眉は、次の、「遙かなる旅路〜広野を行く〜果てしなき世界(DQ2)」
 「遙かなる旅路」は、もともと
DQシリーズの中でも特に好きな曲だが、生で聞くと、その魅力も一段と増す。楽器の響きが、心を震わせる。「広野を行く」も、直に聞くと、主旋律が、なんとも澄んだ美しい音色。正直、ここまで美しい曲だとは思わなかった。「果てしなき世界」も期待通りで、本当に、この3曲は、素晴らしかった。

 感動の余韻を残したまま、再びすぎやまこういちのお話

 どうやってこの曲目を選んだのかという話で、これは、以前東京のコンサートでアンケートを実施し、聴きたい曲を5曲選んでもらい、その結果を東京都と名古屋にうまくふりわけた結果だそうだ。すぎやま氏の演奏したい曲と、このアンケート結果も、うまく重なっているらしい。
 なるほど、確かにどれもいい曲ばかり。…だが、それは同時に、もう片方のコンサートの曲目を見て、ため息をつくことにもなる。さすがに両方聞くのは無理があるが…仕方がない。

 次なる曲は、「ペガサス〜精霊の冠(DQ6)」
 重厚な曲が、オーケストラによく合っている。「
DQ6」自体の印象が薄いためか、今まで気づかなかったが、いい曲で、満足できた。

 そして、「勇者の故郷〜馬車のマーチ(DQ4)」
 これも好きな曲なのだが…残念ながら、期待には届かず。
「勇者の故郷」では、かなり目立つミスが。ミスがあったのはこの曲だけではないが、好きな曲で、しかもあんなに目立つところでミスがあると、残念である。

 ここで気を取り直して、またもすぎやまこういちのお話が。

 唐突に、「皆さん、のだめカンタービレってご存じですか?」と、客席に向かって声をかけるすぎやま氏。意外に多く…半数近く(?)の手が上がる。次に、楽団の皆さんに向かって同じ事を問いかけるすぎやま氏。と、今度は殆ど全員の手が上がる。会場から笑みがこぼれる。
 私はこの作品を読んでいないが、一応名前だけは知っている。しかし、ここまで普及していようとは…。
 すぎやま氏の話によると、「のだめカンタービレ」の作者は名古屋出身で、この楽団が最初に「のだめカンタービレ」のコンサートを行ったのだとか。その時も今と同じぐらいの大盛況で、こうしたものからオーケストラ入門の機会がますます広がるといい、というような話をされた。

 さて、次は「スフィンクス〜大神殿(DQ7)」
 やはり生だと奥行きが感じられていい。

 そして、これまた期待の「栄光への戦い(戦闘〜邪悪なるもの〜悪の化身)DQ4)」
 さすがに迫力がある。「戦闘」は、木琴の音がよく響くし、「邪悪なるもの〜悪の化身」は低音部がかっこいい。
CDではここまで響かない。本当に、来た甲斐があった。

 プログラムでは、次の「冒険の旅」まで演奏するようになっていたが、変更されて、ここで20分の休憩

 記念のCDを買いにいくことにする。
 開演前にちらっと覗いた時は、なんと盗賊のカギなども売っていた。まるで本物のような造りにひかれたが、1900円はちょっと高い…。それに、悲しいかな、地味である。味がある、ともいえるが。最後の鍵ならともかく…と思っていたら、最後の鍵を手にしている人を見かけた。どうやら、売り切れたらしい。最後の鍵なら…ちょっとほしかったかも。
 ちなみに、休憩の時には、盗賊の鍵も全て売り切れていた。早い。
 さて、そして今回、混雑の中苦労して買ったのは、「金管五重奏によるドラゴンクエスト」。弦楽四重奏の方にも惹かれたが、そちらは値段がやや高く、また曲にも片寄りがみられたので、こちらにした。吹奏楽集とも迷ったのだが、結局、シリーズのバリエーションが豊富という点が決め手に。
 今回も、
CDを買うとおまけをもらえた。前と同じく、横の箱から取るのだが、例によってあまりいいものは…せめてドラクエなり音楽なりと関係があるものならいいのに。全く関係のないものばかりなのだから。しかし、こういう箱だと、それでも何かいいものはないかと探してしまうのが悲しい性。で、ふと見てみると、何か紺色の布のような塊が。どうやら袋のようだ。袋ならば、様々な用途に使うことができる。そこで、そちらをよく見てみると…なんと、「HOWL'S MOVING CASTLE」と書いてあるではないか。アルファベットだったので、それまで頭の中では単なる模様として認識してしまっていたらしい。これが今まで残っていたのも、そんな理由があるのではないか。とにかく、これはなかなかの掘り出し物だ。最後の鍵は手に入らなかったが、結構幸運だったといえるだろう。

 そして、休憩が終わり、ここでまず、すぎやまこういちのお話

 聴衆の中にはドラクエの曲を熟知している人がいて、演奏中に指揮をしている人がいるようだが、演奏者が間違えてそちらの指揮を見てしまうと困るので、指揮はしないで下さい、とのことだった。…そんな人がいたのだろうか?なかなか度胸のある人である。私の席からは客席がよく見えるのだが、あまり注意を払っていなかったため、全く気づかなかった。
 また、今名古屋では「ど真ん中祭り」というのをやっている、という話(全然知らなかった…)も。地理的にも日本の真ん中で、他の面でも真ん中、ということで、テンションが高いのだとか。
 そして、これから「戦火を交えて」まで一気に演奏するので、
DQ8のテンションシステムの如く、テンションをためにためて、そこで一気に拍手をして下さい、とのことだった。前半に小休止が多かった反動か。しかし、一気に8曲とは……。

そして始まる怒濤の8曲。最初の「冒険の旅(DQ3)」は楽しみにしていた曲の一つ。冒頭から、唱和する楽器の音に、心の奥まで揺さぶられる。

「哀しみの日々(DQ7)」も好きな曲。特にここでは、CDでは埋もれてしまいがちな小さな音―澄んだ音がよく響いて、綺麗だった。

「大聖堂のある町(DQ8)」は、やはり堂々たる迫力が素晴らしい。

一方「洞窟に魔物の影が〜死の塔〜暗黒の世界〜洞窟に魔物の影が(DQ5)」のような、細かい音が多い曲も、やはり生だと違いが大きい。ただ、ダンジョンの曲では、1,3,4が特に好きなので、できればそちらの方も聞きたかった。

「エレジー〜不思議のほこら(DQ4)」も好きな曲。エレジーは予想通りに、不思議のほこらは予想以上に。生での素晴らしさを堪能できた。

「海図を広げて(DQ4)」では、後ろの細かい音がよく聞こえるので、海が眩しくきらめく感じがよく伝わってきた。やはり生はいい。

「空飛ぶベッド(DQ6)」は、これまでちょっと地味な曲だと思っていたが、今回で印象が変わった。木琴の音がとても綺麗なのだ。ああいう細かい音が響き渡ると、だいぶ印象が違ってくる。CDの時よりも、爽快感が大幅に上昇。

「戦火を交えて〜不死身の敵に挑む(DQ5)」は、さすがに迫力があった。好きな戦闘の曲が二つも聴けて嬉しい限り。これで後は、DQ3の戦闘の曲さえ聴ければもっとよかったのだが。

 そしてここで、すぎやまこういちのお話

 今回の曲目を選ぶアンケートで見事第一位に輝いたのは、次の「そして伝説へ」だったのだそうだ(第二位は何だったのだろう?)。これは、東京でも演奏されたらしい。

 その「そして伝説へ(DQ3)」は、やはり生で聞くと、また別の感慨が……聞けて良かった。

 その後にはアンコール。私の席からだと、すぎやま氏が完全に奥に引っ込んだわけではないことがわかるので、可能性はかなり高いと踏んだ。
 曲は
「馬車を曳いて(DQ8プロローグ)」「結婚ワルツ(DQ5)」

 ううむ、確かに「馬車を曳いて」は、生で聞いた時の魅力が大きく増す曲の一つだが…どうせDQ8から演奏してもらえるなら、「広い世界へ」をもう一度聞きたかった。アンコールとしてやるには長すぎるのだろうが。特に、今回は二曲もアンコールがあったのだし、仕方ないか…。

 すぎやま氏は、「まずDQ8のプロローグ『馬車を曳いて』を」と言い、その後、「あ、『まず』って言っちゃ、まずいのか」と口にした。しかし、もう遅い。これで、皆もう一曲あることがわかってしまった。
 演奏の後、すぎやま氏は、「ここで、いつもなら私はさも終わったような顔をして、奥に引っ込むんですが、さっき「まず」って言っちゃったからなあ……」と、このままアンコール続行を宣言。ここで唐突に「この中で、一ヶ月以内に結婚する人っていますか?」と、客席に向かって呼びかける。
 2階の真ん中あたりの席の女性が、控え目に手を上げるのが見えた。が、すぎやま氏は気づかなかった様子。そこに「ここにいるぞ!」と大声で知らせる人がいて、拍手が巻き起こった(しかし、「ここにいるぞ!」という言い方だと、何だか犯人当てのようにも聞こえてしまう……)。その後、楽団に向かい、同じ事を問うすぎやま氏。すると、なんと一組の男女が立ち上がった!まさかこんな偶然があろうとは。おそらくこれで、アンコールの曲が決定されたのではないだろうか。
 というわけで、最初の質問で誰もが見当をつけたアンコール曲、
「結婚ワルツ」DQ5は、リメイク版のおかげで、わりと記憶に新しく、EDの情景がありありと浮かんでくる。ただ、座席の位置か、それともいったんそちらに意識がいってしまったせいか、トライアングルの音だけが分離して、やけに大きく聞こえてきた。そうなるとますますそちらに気を取られ、主旋律の方が……。気にするまいと思っても、いったん気にしだすと自分の意志ではどうにもならないのが、悲しい性。

 しかし、全体的には、やはりこれだけの曲を生で聴けた喜びは大きい。終了後も、なりやまない拍手。電気がついてもなお、拍手は続いた。楽団が皆退出した後も続く拍手に、袖からすぎやま氏が顔を出して手を振ってくれるのが見えた。

 その後下に下りると、結構な行列ができており、その側で、並ぶ時は通路を外れて、と呼びかけている人がいる。そこで、何の行列か聞いてみたのだが、かえってきたのは、「よくはわかりませんが、すぎやまさんが出ていらっしゃるということなので…」という返事。
 みんな、何があるのかもわからず並んでいるのか。そして、会場の人でさえ何があるかわからないのか。わからないまま行列の整理をしていたのか……。これで何もなかったら、とても悲しいのではないか。
 まあ、20周年なのだし、「何かある」のは確かなようだ。今回は時間もあるし、何があるのか興味もあるので、とりあえず並んでみることにした。
 待つ事しばし。いきなり側の扉(それまでそこに扉があることすら意識していなかった)から、数人の人影が出てきた。見てみると、なんと、すぎやまこういちではないか。一瞬、その場が静まりかえる。その沈黙の後、今度は一転、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。……傍から見ると、結構面白い光景かもしれない。

 そして、行列はすいすい動き出す。会場の人の話によると、どうやらすぎやまこういちが握手してくれるらしい。ただし、時間がないのでサイン、写真撮影などはだめ、とのこと。そこで「勝手に撮られるぶんには構いませんが」とつけ加えていたのがやけにおかしかった。実際、すぎやまこういちが現れた時から、携帯電話を構える人多数。この光景も、傍から見ると結構面白い。
 そうこうするうちに、あっという間に私の番まわってきた。意外に力強い手だった。てっきり握手というのは軽く握るものだとばかり思っていたので、ちょっと驚いた。

 コンサートホールの中は非現実的な空間で、どこか夢のような感覚がするが、コンサートホールを出た後も握手の感触が残っているのが不思議な気分だった。

 

 

 

2006.8.24

 

 

 

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