さらわれたローラ姫

 

 一体なぜ、ローラ姫は竜王にさらわれたのだろう?私としては、一歩城を出たらローラ姫のことなど綺麗に忘れ去っていたし、別にわざわざさらう必要はなかったのでは…と思ってしまう。確かにローラ姫を助け出さないと「王女の愛」がもらえないのでその先ツライものがあるが…ならばなぜ、竜王はさらった姫を生かしておいたのか、という疑問が残る。

 といっても、悪役が姫をさらうのは、いわば「お約束」であり、今更特に気に懸ける必要はないのかもしれないが……それでもやはり、気になることは気になるので、少し検討してみたいと思う。

 一般に、悪役がヒロインをさらって、しかも生かしておくのは、

の3つの理由のうちどれかに当てはまる場合が殆どだろう。

それぞれの場合について、見ていきたいと思う。

 まず、竜王がローラ姫との結婚を望んでいる、という説。

 城攻めをした時に偶然目にとまり、気に入って連れて帰ったが、なかなか結婚を承諾しないので、洞窟に閉じこめた…ということになるのだが、それならば、竜王の城に閉じこめられていると考える方が自然である。しかも見張りはドラゴン一匹。とてもローラ姫を大事にしているようには見えないが、もしかすると、竜王の城では、目を離した隙に手下の魔物達が姫を襲うことを危惧して、信頼できる一人の部下に姫を任せて洞窟に預けた…ということなのかもしれない。ピサロと同じように。

 また、結婚するつもりはなかったのだが、どことなく「まだ見ぬ母」の面影を感じて思わず連れて行ってしまった、という可能性もある。連れ去った後、「やはり姫は自分の母とは違う」などと思ったのだが、殺す気にもなれず、かといってラダトームに返す気にもなれなかったので、とりあえず僻地の洞窟に閉じこめておいた…という可能性である。これなら警備がザルなのも理解できる。

 あと、人間同士の場合なら、姫をさらって無理矢理結婚することで、相手方の財産や権力を手に入れ、そのことに対する周囲の異論を封じる、というパターンも多いのだが、今回はなにしろ種族が違うので、このようなことはないだろう。

 次に、竜王は人質としてローラ姫をさらったという説。

 主人公―この場合はロトの子孫―をおびきだすためのエサとして、というのがよくあるパターンだが、竜王は姫をどこにさらったとも言い残したわけではなさそうだし、第一、それならば姫は竜王城にいるはずである。沼地の洞窟に罠が張ってあったというのならまだしも、ドラゴン一匹では話にならない。というわけでこれはボツ。

 いざという時のための切り札―だと考えるにしても、姫が竜王と離れた所にいたのでは使えない。だからやはりこれもボツ。

 最後に三つ目、竜王は生け贄にするために姫をさらったのだという説。

 作中に全く描写はないものの、実は竜王は破壊神シドーを信仰していて、それを呼び出すための生け贄として姫をさらった…というのも考えられない話ではないと思う。姫は比較的大事に扱われていたようだし、岩山の洞窟にうつしたのも、「大切な生け贄」に危害が加えられないようにするためか、そこが儀式の場所としてふさわしかったからか。とりあえずの説明はつく。

 また、生け贄とはちょっと違うが、ラダトームの人々を絶望させるために姫を自分の手先にしようと企てていた、というのも考えられる。こうなれば彼らはなかなか手を出せないだろうから「強力な部下」も増えたことになり一石二鳥である。姫が改造(?)に耐えられる年齢に達するまで待ち、その後でどうにかする予定だったとか。そういうことも考えられてしまう。

 例によって、どれもありそうな……。

 ちなみに、小説では、「ロトの血をひくものが誕生し、その者が王女の愛を得るとき、竜王を倒すほどの力を持つ」という占いで、竜王は姫をさらい殺そうとするが、姫も勇者も本物かどうかわからなかったので、確かめないまますぐに殺しては安心は得られない…ということになっているようだ。

 悪役が墓穴を掘る典型的なパターンである。もっとも、そのおかげで最初は弱かった勇者が活躍する余地があるというものだが。

 

 

2003.10.15

 

 

 

 

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